月10万円の積み立てなんか、絶対に無理だ!それでもいい

 2024年からの新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の準備がスタートしています。つみたて投資枠の設定が可能となっており「金額」「購入商品」などの指定が可能となりました。

 早速、SNSや投資ブログ界隈では

「月10万円設定しました!」

「毎月10万円オルカン一択ですよ」

「クレカの上限まで全額積立投資設定します」

 などなど、にぎやかさを増しています。

 どちらかといえば「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)ファースト」のスタンスの私のところにも取材の依頼がちょくちょくやってきます。直近の株価が堅調であることもあいまってか、新しいNISAは話題となっているようです。

 しかし、違和感も覚えます。

「そもそも、毎月10万円の積み立てなんて、普通の個人投資家にできることなのだろうか」

 という違和感です。SNSは現実の表層であって一部分でしかないことは当然のことですが、毎月の家計のやりくりに苦労し、数万円の積み立てをなんとかギリギリ捻出しているような普通の人のことをつい考えてしまいます。

ちょっと待て。別に10万円設定できなくたっていいし、しなくてもいい

 資産に余裕のある方々は、「毎月10万円」をまずは目標に考えていけばいいでしょう。なにせ、つみたて投資枠を優先的に埋めたくてもこちらは年120万円の上限があります。成長投資枠のほうは1,200万円(購入時価格で)を超えることができませんので、成長投資枠だけで1,800万円を使い切ることはできないからです。

 むしろそれ以上を目指してもかまいません。最大で年360万円の入金を目指してもいいでしょう。

 しかし、こうしたトレンドを目にして「私は、新しいNISAは、いいかな。月10万円なんて絶対無理だし」と思わないでください。

 NISAは別に10万円の積み立て設定をしなくてもいいし、なんなら月100円でもいいのです(さすがに資産形成のペースは小さくなるので月1万円くらいはがんばってほしいですが)。

 仮に10万円の積み立てができる人であっても、全額を投資に回す必要はありません。一定割合を安全性の高い資産で確保しておくことも重要だからです。

 例えば「リスク資産ウエートは高くても70%くらいにして、預金のポジションも持っておきたい」と考えるならば、年120万円積み立てられる人であっても、投資84万円:定期預金36万円くらいに振り分けて、積み立てペースを設定すればいいのです。

 そう考えればますます、「月10万円の積立投資」にこだわる必要はなくなってきます。

自分にできる範囲でいい。悩んだら「つみたてNISAの枠」をイメージしてみよう

 新しいNISAは、枠が大きすぎる分、少額の利用者や普通の生活者の視点がこぼれ落ちがちです。しかし、本来的にNISAが目を配っていたのは「少額投資」をする普通の国民です。

 非課税枠というのは「少し使い切れない分」を設定しておくのが理想的なので、新しいNISAの枠は実際に使う額より多く設定していると考えてみてください(例えば、米国の401(k)プランなどは多くの人が上限を使い切れていないが、インフレに従ってどんどん枠を広げています。2023年の上限はなんと2万2,500ドルです。円ではなくて!)。

 そう考えると、実際に使い切るところは上限より低いところでOKとなります。つまり、つみたてNISAの枠である月3.3万円程度、あるいはiDeCoの枠である月1.2~2.3万円(自営業者は厚生年金保険料を納めていない分、枠が大きいのでここでは外す)というのが、普通の会社員の感覚としてはちょうどいいところなのです。

身の丈にあった投資が大切

 雑誌、書籍、ネットのニュース記事、ブログにYouTubeと新しいNISA情報はあふれていますが、一番大切なのは「身の丈」にあった投資をNISAで行うことです。

 NISAの制度としての基本的知識を手にするまでは情報をたくさん採り入れていけばいいでしょうが、「最後にいくら自分は入金するか」は自分で考えることです。

 自分自身の家計を直視し、毎月どれくらいの入金が可能か考えてみてください。無理をする必要はありません。

 また、資産形成に回す金額と、定期預金で積み立てていく金額のバランスもしっかり考えておきましょう。確かに金利はあてになりませんが、ライフプランにおいて現金の確実な積み上げは必要ですし、結果として資産全体のリスクコントロールをする力を定期預金が持ちます。

 そうなると「月3万円程度でいいかな」「iDeCoも月1.2万円やっているし、NISAは1万円くらいかな」のような現実的なイメージができてくるはずです。

 自分自身が「よし、やってみよう」「これなら続けていけるだろう」という金額をみつけるのも、NISAとのつきあいかたにとって大事なことなのです。