まずは「つみたてNISA」が基本

 新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、つみたて投資枠だけでなく、成長投資枠でも積立ができ、さらに、まとまった資金を一括投資することも可能なため、選択できる投資信託の幅が現行制度よりも広くなります。非課税枠の上限は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が240万円です。

 潤沢な手元資金がなくても、資産形成に十年単位の時間をかけられるなら、まずはつみたて投資枠で、投資対象地域が広く分散された「全世界株式」のインデックスファンド(指数連動型投資信託)を積み立てるところから始めると良いでしょう。文字通り、世界の株式市場の値動きに連動するよう商品が設計されているので、1本でも地域分散が実現できます。

 では、成長投資枠も含めて考えた場合、商品についてどのような心構えをした方が良いのでしょうか。

要注意!成長投資枠には初心者向けではない商品も

 よく「NISAは投資初心者向けの制度で、商品も初心者に優しいものが選定されているから安心」という表現をネット上などで見かけます。これは半分正解で、半分間違っています。

 つみたて投資枠の対象商品は、インデックス型を中心に、長期分散投資と相性の良い銘柄がラインアップされています。そもそも購入方法が積立に限定されているので、時間分散も自動的に実現できます。この点は、現行のつみたてNISAと大きく変わりありません。

 対して成長投資枠は、非課税枠が大きく、かつ一括投資も選択できるため、多様な投資家のニーズに応えられるよう、幅広いリスクレベルの投資信託が用意されています。この中には、明確に投資初心者向けではない商品も含まれています。

 投資信託に限らず、私たちが口にするもの、身に付けるもの、何でもそうですが、商品の品質と、商品に対する適性はまた別の話です。その商品がどれだけ良質なものでも、自分に合わなければ、品質の高さが生かされないどころか、むしろマイナスに作用することもあります。成長投資枠については、まずこの点を念頭に置く必要があります。

 現在は、つみたてNISAがすっかり定着したこともあり、「NISA」といえば実質的につみたてNISAを指す傾向があります。その結果が、先述した、「NISAの商品は初心者向けで安心」という表現につながっているものと思われます。しかし、現行制度でも一般NISAは、対象商品の幅が広く、投資初心者向きではない商品も存在するということを忘れてはいけません。

成長投資枠、銘柄選びの前に考えるべきこと

 投資初心者が成長投資枠の利用を検討する際は、商品ありきではなく、まずは成長投資枠をどう使いたいかということをある程度明確にしておきましょう。この際、つみたて投資枠の積立投資をベースにしながら考えるのがポイントです。

 文字通り、資産のさらなる「成長」を目指し、つみたて投資枠に上乗せするイメージなら、つみたて投資枠の対象ファンドではカバーしにくい資産や地域を取り入れることをおすすめします。

 または、こんな考え方もあります。

 新NISAでは、非課税枠の中で商品を売却すると、翌年以降に投資枠が再利用できるようになります。「再利用」の仕組みを生かし、成長投資枠を「使うための資金を置いておく場所」として使うのです。この場合、インフレに勝てる程度の「マイルド」な運用が実現できる商品を選ぶことをおすすめします。

「成長投資」と聞くと、積極的にリスクを取らなくてはいけないような印象を受けますが、必ずしもそういうわけではありません。「どう使いたいか」を優先し、「自由投資枠」のようなイメージで利用することも、成長投資枠の使い方の一つです。

 本連載では今後、成長投資枠で購入可能な投資信託についても掘り下げていきます。