中国経済にとっての真の課題は「脱・不動産」

 本稿の最後に、昨今の不動産危機から、中国経済が近未来において抱える最大の教訓は何か、というテーマを考えてみたいと思います。

 単刀直入に言うと、最大の教訓と問題は、背景や国民性はどうあれ、中国経済が不動産市場に過度に依存し過ぎてきた点にあると私は考えます。個人消費、工業生産、雇用、成長モデルなどを含め、不動産という業界に便乗してもうけ、養い、果実を謳歌(おうか)してきた国内、海外の企業家、投資家たちが、その構造に甘えてきたということです。もちろん、最大の共犯者は中国共産党です。

 この構造にメスを入れない限りは、中国経済の成長は長続きしない。その意味で、債務危機に陥る恒大や碧桂園を「安易に救済しない」という中国政府のスタンスは、短期的な経済、金融、政治リスクは存在するものの、長期的には適切だと私は考えています。

 脱・不動産。

 これこそが、中国経済が進化を遂げるために不可欠な脱皮なのでしょう。一方で、不動産業界に変わるだけのインパクト、スケールを持った業界が他に見られるかというと、現時点ではなかなか難しい。

 中国政府としては、官民を挙げて振興させようとしているEV(電気自動車)、脱炭素、グリーン、デジタル、および少子高齢化時代を逆利用する養老といった分野を複合的に組み合わせ、盛り上げつつ、不動産業界に対するオルタナティブにしたいのでしょうが、それには一定程度の時間とプロセスが必要です。

 少なくとも短期的には不動産市場に依存せざるを得ない。昨今、不動産市場を支えるために行われている一連の規制緩和は、中国政府がそのように考える証左と言えるでしょう。

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