二宮尊徳という人を知っていますか? 二宮金次郎の方がなじみがあるかもしれません。薪を背負って本を読んでいる少年姿の銅像で有名な二宮金次郎のことです。私が通っていた小学校には残念ながらなかったのですが、二宮金次郎像は多くの小学校の校庭に建っていることで有名かと思います。ですが、二宮金次郎が何をした人なのかを知っている人は少ないかもしれません。

 実は二宮尊徳は川の氾濫によって没落した生家を立て直し、その後600余りの武家、藩、農村を立て直したすごい人! 来年1万円札の肖像にもなる渋沢栄一をはじめ安田善次郎、豊田佐吉、松下幸之助といった日本経済の礎を築いた名だたる実業家たちも二宮尊徳の思想に影響を受けたといいます。

 多くの武家、農家を個別具体的に指導し、家計を立て直した二宮尊徳は超敏腕ファイナンシャル・プランナーなのではないかとFPである私は思っています。二宮尊徳が現代にいたら、家計をどう改善していくのか?という視点で二宮尊徳の教えをご紹介します。

二宮金次郎ってどんな人?

 恥ずかしながら私は二宮金次郎という人は歩きながらでも勉強した人ということで、子どもたちに勉強することのすばらしさを教えるために小学校に銅像が建っているんだろうと思っていました。しかし、二宮金次郎の偉大さは勤労少年、勉学少年だったことだけではありません。

 大人になって初めて二宮金次郎の伝記を読んだときに考え方、生き方、仕事ぶりその全てに感動し、線を引きながら読みました。今は二宮尊徳の基本的な考え方である「至誠」「勤労」「分度」「推譲」を座右の銘として我が家の家計を組み立てつつ、FPとしての家計改善や片づけプランナーとしての活動を行っています。

 二宮尊徳こと二宮金次郎は江戸時代後期に現在の小田原市に生まれました。もとは裕福な農家だったのですが、金次郎が5歳の頃、川の氾濫によって家と田畑を失い、極貧生活に転落します。その後14歳で父が亡くなり、金次郎が大黒柱として稼がなくてはならなくなりました。

 金次郎はただがむしゃらに働くのではなく、立派な百姓になるためには知恵が必要であり、知恵を身につけるためには学問をすることだと考えていました。薪を背負いながら本を読む銅像の姿は家族を養うために懸命に働きながら、薪を運ぶ時間を生かし、勉学に励む金次郎の姿です。

 16歳の時には母も亡くなり、残された金次郎は伯父である万兵衛のもとに、弟二人は他の親戚のところに預けられ、一家離散してしまいます。

 金次郎は万兵衛のもとで懸命に働き、夜は学問に励みました。しかし、万兵衛に百姓には「学問は不要だ、明かりのための油がもったいない」と学問を禁止されてしまいます。そこで金次郎は油を自分で作ればよいだろうと思いつき、友人から少しの菜種を借りてそれを育て、明かりのための油を作ることができました。

 また、同じころ、捨てられていた田植えの苗を拾い集めて水たまりに植えたところ、一俵ほどの米を収穫することができました。このとき金次郎は「小さいことでも積み重ねれば大きなものになる」ということに気づきます。これが二宮尊徳の「積小為大」の考え方の原点となりました。

 その後、少しずつ田畑を買い戻していき、見事生家を復興させた金次郎はその手腕を買われ、小田原藩の家老、服部十郎兵衛に服部家の破綻した財政の再建を依頼されます。ここで金次郎が最も強調したことが「分度」です。つまり、物事には超えてはならない限度があり、この限度を守ることが重要であるということです。

 服部家の財政破綻は守らなければならない財政の限度を超えてしまったために起きたものであるということを教えました。そして、限度を守るために服部家に三つのことを約束させます。一つ目は食事は飯と汁だけにすること、二つ目は着物は木綿のものに限ること、三つ目は必要のないことはやらないことです。

 服部家を見事復興させた金次郎はその業績が評価され、百姓出身ながら幕府の家臣となり、その後も桜町領をはじめ600余りの武家、藩、農村を立て直していきました。

二宮尊徳に学ぶ家計術

 二宮尊徳の生涯の中で「積小為大」「勤労」「分度」にまつわるエピソードを中心にご紹介しました。

 学問によって知恵を身につけつつ、効率的に仕事をしていた金次郎の姿勢は家庭において、収入を得られる仕事はもちろん家事にも応用できると思います。二宮尊徳は服部家改革の中で、女中に対して、薪を節約するためには鍋の底をきれいに洗って熱伝導をよくすることだと教えています。

 ただやみくもに仕事をするのではなく、知恵を働かせて効率よく仕事をすること、また付加価値を生む仕事をするということは家庭における家事にもあてはまると思います。

 どうしてもお金を稼ぐ仕事の方をメインに考えてしまい、家事はなるべくやりたくないこと、避けたいことだと思ってしまうかもしれませんが、家事から生み出せる付加価値、家庭の幸福というものは無視できません。そのことに気づいていない人が多いようです。また家事の効率がよくなればお金も節約でき、稼ぐのと同じ効果が得られます。

 そして家計における分度は今も昔も変わりません。

 服部家はまわりによく見せるために借金を重ねながら外見はきらびやかな生活をし、財政破綻寸前になっていました。

 現代においても全く同じで、SNS映えのためにお金を使ったり、まわりと比較してお金を使ったりするのではなく、我が家の超えてはいけない限度を考えなくてはいけません。服部家のように食事、洋服、その他のぜいたく費についてはしっかり分度を決めるべきでしょう。

 小さな節約を軽視し、貯蓄ができない人がいます。例えば、ラテマネーという言葉がありますが、たった300円のお金も毎日使えば月9,000円、1年間で約11万円の浪費です。これを逆に貯蓄できれば、それはまさに積小為大です。

 将来の子どもの学費や老後資金など、今ではなく将来のために貯めなければいけないお金があります。今使ってしまうのではなく、将来のために貯蓄をすると子どもたちは希望の進路に進むことができますし、老後も潤います。お金は何に使うかで生き方が変わります。浪費として消えることもあれば将来に生きる投資になることもあります。

まとめ

 二宮尊徳の考え方は現代の家計を考える上でも、さらに現代社会を生きる上でもとても役立つ考え方であるのではないでしょうか。二宮金次郎は節約をすすめていますが、これは決して貧乏な暮らしをすすめているわけではありません。金次郎の節約は豊かになるための節約です。

 勤勉に働くことで徳を積み、節約によって分度を守り、余剰を生み出せば、どんな貧しい家も必ず復興できるというシンプルな考え方で多くの農村を立て直しました。この他にも現代の家庭や仕事に生かせるエピソードや人生を豊かにする金言もたくさんありますので、今後またご紹介できたらと思います。興味のある人はぜひ伝記を読んでみてくださいね。