業績が良くない株の株価が上昇する理由とは?

 先日のコラムにて、なぜ業績が良くない株の株価が上昇するのか、という点につき、次の二つの理由をお話ししました。

〇「テーマ株」として業績にかかわらず、「まだまだ上がる」と買いたい投資家が大量に集まってくるため短期間に大きく上昇する。

〇会社四季報や決算短信などを見ただけでは分からない、将来の業績回復、向上を先取りしてプロ投資家が買い始めるため、ぱっと見では業績が良くないように見える銘柄の株価が上昇する。

 このように、業績が良くない株の株価が上昇する場合、「その株を買いたい投資家」が増えることにより株価上昇につながるのが通常です。

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 ただし中には、テーマ株でもなく、将来の業績の向上も期待できないような、ファンダメンタルの面からみてとても株価が上昇するとは思えない銘柄の株価が大きく上昇することがあります。

 今回はこの場合についてお話ししていきたいと思います。

ファンダメンタルの面から見て株価上昇するのはおかしいと思える銘柄の特徴

 筆者自身、兼業投資家として、仕事をしながら株式投資をしていますので、プロ投資家ほど時間をかけて銘柄選びをすることはできません。でも、深掘りすることはないにしろファンダメンタルの面から投資候補となる銘柄を探していますし、時には株価チャートの形が良いものを選んだりすることもあります。

 その際、テーマ株にも該当しないし、将来の業績向上もまず考えられないにもかかわらず、なぜか株価が上がり続けているような銘柄を結構見かけます。

 そうした銘柄の多くには、ある特徴があります。それは「空売りが大量に積みあがっている」ということです。

 空売りが大量に積みあがることが、実は株価上昇につながっているのです。

空売りをする個人投資家VSヘッジファンドの戦いに

 空売りが積みあがっている銘柄の特徴は、ファンダメンタルの面からみて株価が上昇する要素がない、という点です。例えば赤字続きだったり、利益が年々減少傾向にあり、今後の回復も見込みづらい、といった状況です。

 常識的に考えれば、こうした銘柄の株価は下がるはずです。そこで個人投資家は空売りを行って、株価が下げたところで買い戻して利益を得ようとします。

 ところが株価は下がるどころか上がる一方…。「これはおかしい。そのうち株価は下がるはずだ」と個人投資家はさらに空売りを積み増します。

 でも株価はどんどん上昇。空売りの場合は株価が上昇すると含み損となりますので、含み損がどんどん膨らんでいきます。

 そして最後は「もう我慢できない!!」と空売りを買い戻して損切りします。この買い戻しというのは「買い」ですから、自らの買いによりさらに株価が上昇するというなんともやるせない結末になります。

 この、空売りをしている投資家の損切りによる買い戻しによって株価が上昇することを「踏み上げ」と呼びます。

 実は空売りが積みあがっていて、かつ株価が上昇している銘柄というのは、この「踏み上げ」を狙って、あえて買い手に回っている投資家が存在します。その代表例がヘッジファンドと呼ばれる短期筋の外国人投資家です。

 彼らは空売りがたまっている銘柄を見つけると大量に買いを入れ、新たな空売りを誘い込みます。そして最後は空売りをしている個人投資家が我慢できず踏みあげたところで売り逃げる、という流れです。

株価が上がるはずない!と思っても安易な空売りは禁物

 なお、空売りが積みあがる銘柄は、ファンダメンタルの面から株価が上昇する要素が全く思い浮かばないような銘柄だけではありません。

 先日のコラムで述べたような、テーマ株としての要素を持つ銘柄だったり、将来業績が向上するとプロ投資家が買い始めている銘柄も含まれます。

 ファンダメンタル面からの株価上昇の要素がない銘柄であっても、空売りが積みあがることによって株価上昇の圧力が強くかかるわけですから、これにファンダメンタルの要素が加われば、驚くほどの株価上昇につながることもあります。

 ですから、空売りを実行する際には、まずその銘柄の空売りの残高を確認するようにしましょう。特に信用買いの残高より空売りの残高の方が多かったり、株価が上昇傾向にあり、かつ空売りの残高が増え続けているような銘柄は要注意です。その後株価が大きく上昇する可能性が高いので、安易に空売りを仕掛けない方がよいです。

 株式投資に慣れてきた中級者の個人投資家の方は特に、「この株の株価がこんなに上がるなんておかしい!そのうち下がるはずだ」と空売りをしてしまいがちです。でも、ファンダメンタルの面からみれば株価は下がるに違いない、と単純に考えるのではなく、空売り残高を確かめた上で踏み上げが生じそうな場合は空売りを控えるのが無難です。

 もしくは、空売りを実行するにしても少額にとどめ、かつどこまで上がったら空売りを損切りするかも事前に決めておきましょう。

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