FRBが仕掛けて、FRBが終わらせた、4年間の「金狂宴」

 米国主導で始まった金急騰は、3年後の2013年に終わりを告げます。きっかけは、FRB のバーナンキ議長の「量的金融緩和を縮小する」という発言。いわゆる「バーナンキ・ショック」でした。

 米国の金融緩和が終わりを迎え、ドルの供給が抑えられるとの観測が強まり、ドルは一転してドル高方向へ動き始めました。それまでドル安の恩恵を受け、潤沢に資金が注入されていた新興国では、米国への資金引き上げが加速し、経済成長が鈍化。大きく上昇していた金価格も、ドル高進行とともに下落し始めました。

 米国経済の回復のためにFRBが仕掛けた大規模な金融緩和によって金価格は上昇しましたが、そのFRBによって、「金狂宴」の終わりが告げられたのでした。 2009~2013年の金の急騰を「風が吹けば桶屋が儲かる」に当てはめれば、「リーマン・ショックが起こったら金が急騰した」ということになります。  

リーマン・ショックが起こったら、金が急騰した

 金価格の急騰というと、有事が起きたのではないか?と思う方も多いと思います。しかし、前回も今回も、急騰のメインの要因は有事ではありませんでした。つまり、有事以外に金価格を動かす要因が存在するということです。

 前回は中国やインドなどの新興国の消費の拡大でした。そして今回は米国の金融政策でした。もちろん、この間に起きた有事と世間が認識した要因が金価格の上昇の一因になった可能性はあります。

 しかし、ここで改めて認識したいことは、現在の金相場は、以前のような「有事=金価格上昇」という単純な仕組みではない、ということです。 新興国の動向も、米国の金融政策の動向も、今は重要な金価格の変動要因なのです。

 筆者は、特に近年、金相場を取り巻く環境を表す際、「材料の多層化」という言葉を用いています。「有事=金価格上昇」という過去の常識から離れ、金相場に対して幾重にも重なって作用する複数の変動要因を一つ一つ注意深く観察しなければなりません。このことは、今後の金相場を見通す上で非常に重要だと思います。

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