「米国」が金融緩和施策を実施

 リーマン・ショック直後、世界のあらゆる市場は壊滅的な打撃を受け、歴史的な下落が起きました。これを重く見た米国は、この危機から回復するため、2008年の終わり頃に金融緩和(ドル安施策)を打ち出します。

 米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は、2008 年11 月~2013 年12 月までの間、3段階にわたり、3 兆5,050 億ドル(約335 兆円)にのぼる大規模な量的緩和策を講じました。

 第1弾は、2008 年11 月~2010 年6 月。FRBは米国債3,000 億ドル、MBS(Mortgage Backed security/貸し出した住宅ローン債権を裏付けとする住宅ローン担保証券) 1 兆2,500 億ドルなど、合計で1 兆7,250 億ドルの債券を購入(市場に資金を供給)。

 第2弾は、2010 年11 月~2011 年6 月。続けて米国債6,000 億ドルを購入。

 第3弾は、2012 年9 月~2013 年12 月。さらに米国債5,400 億ドル、MBS 6,400 億ドルなど、合計で1 兆1,800 億ドルの有価証券を購入しました。

 米国政府とFRBが一緒になって市場に資金(ドル)を供給したことで、ドルの価値が薄まり、ドル安時代が到来しました。当時は、米国に続き、ギリシャの危機を発端とした欧州の信用不安の拡大によって欧州、そして後に日本も大規模な金融緩和に乗り出し、世界では通貨安競争が繰り広げられました。

 当時も現在も、米国の通貨「ドル」は、世界中で貿易や資金移動の際に最も広く使われているメジャーな通貨、「基軸通貨」です。そして金は、どこの国をも発行元とせず、どこの国でも通貨として通用する「無国籍通貨」という側面を持っています。

 つまり、ドルと金、どちらも「世界共通のお金」と言え、どちらかの価値が上がればどちらかが下がる場面があります。リーマン・ショック後の米国の金融緩和の際は、ドルの価値が薄まってドルの信頼感が薄らぎ、その不安感を埋めるように同じ世界共通のお金である金を保有する動きが強まり、国内外の金価格が上昇していったのです。