サウジのシェアへの強いこだわりで原油が下落。なぜ?

【原因1】米国の金融緩和の終了で、105ドルから37%の下落となり、原油相場の動向に大きな関心が集まるようになった2014年11月ごろ、OPEC(石油輸出国機構)が減産を実施し、需給バランスを引き締めることで、価格の下落に歯止めをかけるのではないか?という思惑が広がりました。

 原油生産量が減少すると、需給バランスが引き締まり原油価格は上昇。逆に、生産量が増えると、需給バランスが緩み、原油価格は下落することがあります。

 OPECは年に2度、定時総会を行っており、その年の2度目の総会が11月に開催されました。当然、原油相場が下落していることがテーマの1つとなりましたが、OPECは減産実施を見送りました。「2014年後半の原油価格の下落は、世界経済の健全化に必要不可欠だった」と、OPECが、原油価格の下落を肯定したのです。

 獲得できる外貨の額が多くなるため、原油価格が高い方がメリットが大きいはずの産油国の集団が、なぜ原油価格の下落を肯定したのでしょうか? 「世界経済の健全化に必要不可欠だった」というのは、実は建前で、OPEC、中でも主要国のサウジアラビアにとっては、「米国の原油生産量急増に対抗するため」という理由が本音だと考えられます。

「シェール革命」によって、2010年ごろ、米国でそれまで困難だったシェール層(石油分やガス分を含む岩盤)からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が可能になったことで、世界の原油生産における勢力地図が一変しました。 

 これにより、米国の原油生産量が急増。米国の生産シェアがOPECのリーダーであるサウジのシェアを脅かす水準に達していました(米国がシェアを意識していたかは分かりません)。

 米国に対抗し、サウジが従来のシェアを維持・拡大するためには、この米国の原油生産量の急増によって、米国の生産シェアがOPECのリーダーであるサウジのシェアを脅かす水準に達しました(米国がシェアを意識していたかは分かりません)。

 米国に対抗し、サウジが従来のシェアを維持・拡大するためには、 

【1】サウジが米国を上回る生産を行う

【2】米国の生産量が減る(サウジは少なくとも現状維持)

【3】あるいは【1】【2】の両方が起こる(起こす)こと

が必要でした。2014年11月の総会で減産見送りを決定したことで、サウジは原油生産量を増やし、米国のシェア拡大をけん制することに成功したのです。つまり、上記【3】が実現したのです。 

 2014年11月の総会で決定した減産見送りで、サウジは原油生産量を増やし、米国のシェア拡大をけん制することに成功しました。また、減産見送りは、市場が想定した減産実施が実現しなかったという失望感を生み、その失望感によって原油価格が下落。

 米シェールの生産コストは、当時はいまよりも高く、原油相場の急落により採算コスト割れが起こり、米シェールの生産量が減少しました。  

  減産見送りは、市場が想定した減産実施が実現しなかったという失望感を生み、その失望感によって原油価格が下落。米シェールの生産コストは、当時はいまよりも高く、原油相場の急落により採算コスト割れが起こり、米シェールの生産量が減少しました。 

【原因2】OPECの減産見送りを「風が吹けば桶屋が儲かる」に当てはめると「シェール革命が起こったら原油価格が下落した」ということになります。