「iPhone 15」の仕様変更情報も悪影響は限定的、スマホ市況の回復に期待

現地コード 銘柄名
02018

瑞声科技控股

(AACテクノロジーズ)

株価 情報種類

16.12HKD
(4/13現在)

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 米アップル社が「iPhone 15」へのバーチャルボタン(感圧式ソリッドステートボタン)デザインの採用を見送ったとの情報を受け、香港株式市場では中国のスマホ部品メーカー、瑞声科技が大幅安となったが、BOCIはマーケットの過剰反応を指摘。この件で影響を受ける同社の売上高、純利益は2023年に全体の3%、2%、2024年に5%、3%にとどまるとの試算結果を示した。また今回は延期でも、端末表面に凹凸のないホールレスデザインの採用を目指すアップル社がこの先、技術的な問題を解消し、次の「iPhone 16」で新デザインを実現させるとの見方だ。スマートフォン市況の底入れに伴う利益率の回復見通しや、自動車向けビジネスの急発展の可能性に触れ、同社の現在株価の低バリュエーションを指摘。株価の先行きに対する従来の中立見通しを強気に引き上げた。

 BOCIの試算では、「iPhone 15」がバーチャルボタンを採用した場合の瑞声科技のハプティクス(触覚技術)ビジネスの潜在売り上げ規模は5億元弱で、2023年の予想売上高に占める割合は3%程度。ハプティックエンジンよりも機能が簡素で、平均販売価格も低いとした。BOCIはこの情報が伝わる前から瑞声科技の売上高に占めるアップルの貢献は横ばいに推移すると予想しており、理由は◇世界経済の減速や競争激化で、「iPhone」の2023年の世界販売台数が1桁台の減少となる見込み、◇米ドル安、◇安定的な競争環境。こうした点からも今回の市場の反応は行き過ぎだったとしている。

 一方、BOCIは同社株に投資する二つの理由として、利益率の回復見通しと自動車用ビジネスの潜在力を指摘している。2022年10-12月期には光学部品の低調が足かせとなったが、音響部品、MEMS(微小電子機械システム)、 EMD&PM(電磁電動および精密構造)など、その他部門の粗利益率は底堅く、光学部品を除けば、同期決算は予想以上の内容だった。続く2023年には、アンドロイドスマホの売れ行きとスペックがいずれも上向く中で、前年の業績悪化の主因となった「設備稼働率の悪化と平均販売価格の低迷」から抜け出す見通しという。また、自動車向けビジネスに関しては、BOCIは電気自動車(EV)市場で激化するスペック競争、値下げ競争が、同社には逆に追い風になるとの見方。2023年には自動車用音響部品の受注が3倍増を記録するとみる。

 現在株価は2023年、2024年の予想PER(株価収益率)で17倍、12倍と、過去3年の平均値の20倍を下回る。BOCIは引き続き2024年予想PER15倍をあてはめながらも、「iPhone 15」の仕様変更による影響を加味し、目標株価を下方修正。その上で、現在株価の低バリュエーションやスマホ市況の底入れ観測を理由に、同社株価の先行きに対する従来の中立見通しを強気にアップグレードした。レーティング面の潜在リスク要因としては、価格競争、光学部品業務の回復の遅れ、マクロ経済情勢や地政学リスクによる需要への影響、同業者との訴訟問題などの可能性を挙げている。