当社で「かぶミニTM」のサービスが2023年4月17日(月)から開始予定です。これにより国内株でも1株単位での取引が可能となり、株式投資の自由度が大幅に上がります。
一般に単元未満株を取引するメリットは、少額から取引可能であることや、分散投資がしやすくなることなどが挙げられますが、本稿では別の観点でおもしろい利用法、かぶミニTMでDIY(自分好みのものづくり)をする利用例をご紹介します!
手作りの株式バスケットを運用するメリットは?
「株式でものづくり」とは、ここでは「自分好みの株式バスケットをつくる」ことを意味します。市場には投資信託やETF(上場投資信託)など、出来合いの「株式バスケット」として購入できる商品は既にたくさんあります。この株式バスケットを自分で手作りして運用しようというのが、単元未満株を利用するDIYの趣旨です。
とはいえ手間をかけて手作りするなら、満足感以外のメリットも欲しいところ。あえて手作りをするメリットは、やはり手作りだと保有コストがかからないことだと思います。
投資信託やETFには普通、信託報酬という実質的な手数料が設定されています。例えば当社で投資信託の買付手数料は無料(IFA会員のお客さまは除く)、ETFも一部銘柄は取引手数料が無料ですが、売買時に無料でも、毎営業日、運用会社などの利益となる信託報酬が基準価額から差し引かれる形で発生しています。
これはインデックスファンド(=株価指数などに価格が連動するファンド)なら年率0.3%前後、アクティブファンド(=株価指数を超える値動きを目指すファンド)なら年率1~2%であることが多いですが、残高に対して毎営業日発生するため、保有が長期になればなるほどコスト負担が重くなります。
一方で単元未満株を利用して株式バスケットを手作りすると、売却時の手数料や売買時の往復スプレッドは発生しますが、それ以外の保有期間に差し引かれるコストなどはありません。保有が長期になればなるほどお得になります。
以下のグラフは、売買手数料無料の投資信託/ETFを5万円分、5,000円分の単元未満株を10銘柄購入した場合の、総コストの概算です。
この図のように、例えば5万円程度だと、一般に保有コストが大きいアクティブファンドとの比較なら、値動きや途中の追加売買を考えなければ、8カ月ほどで手作りバスケットが割安となり、保有コストの小さいインデックスファンドとの比較でも、2年ほどで手作りバスケットが割安となる計算です。
言い換えれば、自分で有望銘柄や有望業界を選んでアクティブファンドを手作りすると、比較的早くコスト面での元が取れ、機械的に株価指数をコピーするインデックスファンドを手作りしても、長期運用を目指しているなら、いずれコスト面での元は取れるということになります。
実際に株式バスケットを手作りする参考例
これらをふまえ実際に株式バスケットをつくるとき、どんな点に着目すればいいか、参考となる考え方をご紹介します!
※以下で取り上げる個別銘柄はあくまで考え方の参考材料であり、これら銘柄への投資を推奨するものではありません。また、かぶミニTM(単元未満株)として取引できる銘柄は流動性が大きい1,000銘柄程度(2023年夏時点)に限られる点にもご注意ください。
A.指数連動型バスケット(パッシブ運用)
まずは投資信託やETFの連動対象としてもメジャーな、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など株価指数に連動することを目指したパッシブ運用のバスケットをつくることが、最も分かりやすいです。
パッシブ運用とは、株価指数(インデックス)などに価格が連動するよう設計する運用手法で、市場平均を大きくアウトパフォームすることは狙わず、銘柄選択の労力を最小限に、効率良くリターンを得ることを目指すものです。独自性もほとんど必要ないので、比較的簡単な運用手法といえます。
ただ、どの銘柄をどれぐらい保有すると連動率が高まるかは、厳密に計算すると難しい話で、かつせっかく正確な計算をしても、株価の動きと共に定期的に再計算して調整しないとどんどん乖離(かいり)が大きくなるため、個人投資家の方が実践するには負担が大きいです。
そのためここではおおよそ日経平均に近い値動きをするバスケットをつくることを目的とし、指数構成比の上位を占める銘柄のみで取引することを考えます。
例えば2023年3月現在で確認できる2月末時点の日経平均の構成銘柄比上位10銘柄は、以下の通りでした。
日経平均構成比は225の全銘柄での構成比、TOP10構成比は、運用を簡単にするため、この上位10銘柄全体を100%として計算した構成比です。この数字や順位は常に変動しますが、このようにそのときの上位10銘柄の構成比を目安に買付を行うと、おおよそその指数に近い値動きのバスケットになると考えられます。
ただ実際に買付を行う場合、きれいにこの構成比に寄せて買うためには工夫が必要です。というのも、1株単位で取引できるとはいえ、例えばテルモなどは、2023年3月23日時点で1株3,000円台で取引できる一方、東京エレクトロンなどは1株でも5万円近い値がついています。こうした場合は、値がさ株を軸に考えると分かりやすいです。
例えばまず東京エレクトロンを1株買うと考えて、これに合わせて他の銘柄の保有数を調整します。3月23日の終値で考えると、東京エレクトロン1株でおよそ5万円。これがTOP10構成比で15%ほどのため、これとの比較で、他の銘柄のおおよその購入金額を決めていきます。
例えばTOP10構成比が26.90%のファーストリテイリングなら、4万9,110円 × 26.90 / 15.57で、8万5,000円ほどが購入金額の目安となるので、これに合うような株数を買い付けます。ここで細かい調整が利きやすいのが、単元未満株でオリジナルバスケットを作る利点でもあります。
またこれだけでは、指数に連動させるとしてはかなり粗削りな考え方なので、精度を上げたい場合は、買付対象とする順位の幅を広げることになります。極端な話、225銘柄を全て日経平均構成比そのままの比率で買い付ければ、売買コストを無視すると、その構成比が維持されている間は、理論的には日経平均と同じ値動きになります。
とはいえあまり銘柄数を増やすと売買コストがかさむので、TOP3の数銘柄程度で、緩やかに似た値動きをするバスケットとするのもありだと思います。
B.テーマ型バスケット(アクティブ運用)
アクティブ運用とは、自分なりのテーマで個別銘柄の選定をして運用を行い、市場平均などの株価指数よりも高いリターンを追求する運用手法です。
これも運用会社の担当者が組成するときは、余計なノイズを除去し、個別銘柄のリスクとリターンを効率的に組み入れる配分の最適解を求めるなど、複雑な話になります。ただ個人投資家の方が実践する場合は、先ほどの指数連動型のバスケットを軸に、いくつかの銘柄の配分を増やしたり減らしたりして、指数から値動きをずらすという考え方が分かりやすいと思います。
例えば先ほどと同じ、2月末時点での日経平均構成比上位の銘柄を例に考えてみます。
例えばこれから景気後退が進むと考え、日経平均の見通しに弱気なときは、ファンドを通じて市場の影響を大きく受けるソフトバンクグループの配分をゼロにし、市場の動きに対する連動度の低いKDDIの配分を増やす、などの調整をします。
単に特定の銘柄や業種の上昇を期待するだけなら、その銘柄だけを売買するのが直接的なのですが、それだとややハイリスクハイリターンです。一方でさまざまなリスク特性の銘柄を組み合わせてリスク分散をすることで、リスクに対する期待リターンの効率を良くすることができます。
このように指数(インデックス)連動のパッシブ運用を軸に、少しだけ独自性を加えて追加リターンを狙うことを、本格的なアクティブ運用と区別して「エンハンスト・インデックス運用」とも呼びますが、要はパッシブ運用とアクティブ運用の中間の手法であり、本格的なアクティブ運用のようにいちから最適配分を導く必要がない点で、個人投資家の方には実践しやすい手法だと思います。
以上の戦略や銘柄例は、あくまで考え方の参考です。実際はその時どきで変わる構成比を基にしながら、上位銘柄を指数の構成比になるべく近くなるよう調整し、アクティブ運用をしたい場合は、そこから追加的に取りたいリスクを持つ銘柄を多めに保有し、避けたいリスクを持つ銘柄の割合を下げることになります。
調整の頻度を高めれば連動性は維持しやすくなりますが、都度、手数料やスプレッドが発生することにはご注意ください。
また日本経済新聞社が構成銘柄ウエートとして公式に開示しているデータだと、Excel操作に慣れていない方にはデータの加工が少し難しいかもしれません。そうした場合は、市場に出回る指数連動型の投資信託やETFの目論見書などから、実際にプロの運用担当者がどのような割合で銘柄を保有しているのか確認し、それをまねしてみるのも一つの手です。
普通の家具やインテリアを作るDIYでも、株式バスケットのDIYでも、初期費用や手間こそかかれど、長期的にはコストが割安になることは同じです。そして何より、手作りのものには愛着が湧くものです。株式投資はあくまで利益を得るために行うものですが、自分好みのバスケットを考えるワクワク感を楽しむのも、投資の一つの醍醐味(だいごみ)だと思います。