株価下落リスク避けながら優待を獲得する「つなぎ売り」の仕方

 優待は欲しいが、株価変動のリスクは負いたくない時、活用したらいいのが「つなぎ売り」です。「つなぎ売り」は信用取引の一種で、信用口座を開設しないとできません。以下の方法で、優待取りを行うことができます。

優待取り「つなぎ売り」のイメージ図

出所:筆者作成

【参考1】「つなぎ売り」とは

 株を証券会社から借りてきて売ることを、「信用売り」といいます。自己資産で購入する現物取引で得た株が手元にあっても、それは売らずに、別途借りてきた株を売ることを「つなぎ売り」と言います。株を保有したまま、株が値下がりするリスクをヘッジする効果があります。

 この状態で、権利確定日を迎えると、優待をもらう権利が確定します。権利が確定したら、保有している株を、借りてきた株の返済に充てれば、取引が完結します。保有株を、返済に充てることを「現渡(げんわたし)」と言います。

【参考2】「から売り」とは

 保有している株を、借りてきて売るのが「つなぎ売り」でした。それに対し、保有していない株を借りてきて売ることを「から売り」といいます。から売りした株が、値下がりした後に買い戻せば、利益が得られます。

 例えば、1,000円でから売りした株が、900円に値下がりしてから買い戻せば、1株につき、100円の利益が得られます。ただし、から売りした株が、値上がりしてから買い戻すと、損失が発生します。

◆「つなぎ売り」の仕方:現物買いと信用売りを同じ株数ずつ行い、優待の権利を得たら、現渡で決済する

「つなぎ売り」は、信用取引の一種です。以下の方法で、優待取りに使うことができます。
3月末に100株保有すると、魅力的な株主優待が得られる銘柄を「A社」として、解説します。以下の2ステップで、優待取りが完結します。

<ステップ1>

 A社100株の「買い」と、A社100株の信用取引の「売り」を、両方とも行います。買ってから売っても、売ってから買っても、どちらでも問題ありません。同じ価格で行うのが理想です。

 3月末基準の優待を得るためには、3月29日(権利付き最終売買日)までに、ステップ1を行う必要があります。3月29日までに、ステップ1を行い、3月30日(権利落ち日)までポジションを持つと、3月末基準の優待を得る権利が確定します。

<ステップ2>

 優待の権利を得たら、速やかに(原則3月30日に)、現渡で決済してください。現渡とは、保有するA社株100株を、信用で売建(うりたて)しているA社株100株の返済に充てることです。これで、「優待取り」は完結です。

 ステップ1で、A社100株の「買い」と「信用売り」を同じ価格(例えば1,000円)で行えば、株価が上がっても下がっても、損も得もしません。

 株価が1,000円から900円まで下落すると、買った株に1万円(値下がり100円×100株)の含み損が発生しますが、同時に、信用で売った100株には1万円の含み益が発生します。合わせると、損も得もしません(売買手数料は考慮しないベース)。

 逆に、株価が1,000円から1,100円まで上昇すると、買った株に1万円の含み益が発生しますが、同時に、信用で売った株に1万円の含み損が発生しますので、合わせると、損も得もしません。

「優待は欲しいが、株価下落リスクは負いたくない」時に、有効な方法です。優待の権利を得たら、速やかに、現渡で決済してください。それで、完結です。

つなぎ売りを行うにあたってのご注意