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お金のアドバイザー、七つの悪い癖
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

お金のアドバイザー、七つの悪い癖

2014/5/16
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てください。
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俗に「無くて七癖」と言う。どんな人にも癖というものがあり、癖の無い方の人でもよく見ると七個くらいは癖を持っているものだ、という意味だ。お金に関するアドバイスを職業とする人も人間であるから、癖を持っている。

問題は、この癖が誤りを含んでいたり、悪意とつながっていたりする場合だ。本稿では、全ての悪意までは面倒を見切れないが、お金のアドバイザーが陥りやすい「誤った考え」を七つご紹介しよう。

(1) 資金使途別に運用商品を割り当てるのがいいと思っている

ファイナンシャル・プランナー(FP)の多くはお金の運用の専門家といえる知識を持たないが、これは、彼らがしばしば陥りがちな考え方だ。アドバイスする相手に「あなたの夢は何ですか?」などと将来の資金使途を訊いて、使途に合わせて用意するお金を区分けして運用商品を当てはめるやり方が典型的だ。「お金に色を着けると分かり易い」などという者もいる。老後の生活資金、子供の学費、将来の医療費など、将来の使途別に資金を分けて、運用商品や保険などを当てはめる。

しかし、「お金」というものは、そもそも後から使い道を決めることができる柔軟性が大きな長所の一つだ。端的にいって、金融資産があれば、医療保険や生命保険など、契約者側が大きく不利な商品にお金を費やすことを避けることができる。

また、十分な分散投資を行うには少額であることの多い個人の資金を、さらに将来の使途別に分割するのは非効率的だ。

個人でも会社でも、運用、さらにもっと大きな単位で、「お金」全般は、(1)全体の効率(リスクとリターンの)を最適化しつつ、(2)資金繰りが行き詰まらないように流動性について考える、という手順で合理的に管理出来ることが多い。

実は、「生活者には多様なニーズがあって、それぞれに最適な金融商品がある」という考え方自体が、金融商品を売る側がマーケティングの都合上世間に振りまいているフィクション(作り話)だ。特に、運用に話を限ると、(1)より高い利回りで、(2)より安全に、という二点以外に「ニーズ」などない。

使途別に運用を提案された場合、顧客の側では、アドバイザーが十分な運用知識を持たずに金融機関の販売戦略に乗せられている可能性を疑うべきだし、生命保険や手数料の高い金融商品を売ろうとしているのではないか、と心配すべきだ。

(2) インカム・ゲインをキャピタル・ゲインと区別して重視する

株式の配当、投資信託の分配金のようなインカム・ゲインを狙うことは健全な運用で、これらの値上がり益、即ちキャピタル・ゲインを狙うことは投機的で不健全だと考える人が、お金のアドバイザーの中にも少なくない。

特に、高齢者にインカム・ゲイン中心の運用を勧めるケースが多いし、あるいはNISA(少額投資非課税制度)に関するアドバイスでも「分配金ニーズのある投資家の場合…」などという場合分けを行って、アドバイスを提供する輩もいる。

金融の基本は、インカム・ゲインとキャピタル・ゲインを「合わせて」、税金などの要素も考慮して「実質的な損得」を計算して、意思決定すべきだ、というものであり、この基本に例外はない。

まして、NISAの場合は、同じ収益力の商品A、Bがあり、一方の分配金が大きい場合にこれを選ぶことは、節税のメリットが小さくなるので、制度上明らかに不利だ。「分配金ニーズ」は、損得計算上正しいニーズではないということを顧客に教えるのが誠実なアドバイザーの役目だ。

しかし、インカム・ゲインは「運用で得た、使ってもいい収益のような気がする」といった心理(行動経済学で言う「メンタル・アカウンティング(心の会計)」のバイアス)があったり、キャピタル・ゲインを得るための売却のタイミングが失敗することが精神的に負担だったり(行動経済学的には「後悔回避」のバイアスだ)、といった心理から、インカム・ゲインを重視する人は多いし、金融機関も商品開発や商品の売り方で、顧客の心理的歪みを悪用している。

分配金を強調して顧客にとって損で売り手が得る手数料の大きな金融商品を売る手口は、行動ファイナンスの金融マーケティングに対する応用と考えていいが、経済理論の応用としては、異例なくらい大成功して収益を生んでいる。これは、金融商品の売り手側には喜ばしいことだが、投資家の側にとっては、嘆かわしいことであり、警戒すべきことでもある。

(3) アクティブ・ファンドを他人に勧めてもいいと思っている

投資信託にアクティブ・ファンドとパッシブ・ファンド(多くはインデックス・ファンド)があり、前者は後者よりも、投資家が払う手数料(販売手数料、信託報酬、それにファンド内で掛かる売買手数料)が大きいことは、ご案内の通りだ。

運用業界にとっては、極めて不都合なことに、(1)運用成績で見てアクティブ・ファンドの平均はパッシブ・ファンドに劣っており、(2)アクティブ・ファンドの中で相対的に今後の成績のいいファンドを事前に選び分けることは不可能だ、という二つの頑健な事実がある。後者に関しては、過去の成績と将来の成績には相関関係がほぼないことを捕捉しておこう。過去に良かったファンドが、今後もいいとは「言えない」のだ。

これらの事実から論理的に導かれる帰結は、「アクティブ・ファンドに投資することは経済合理的ではない」ということに他ならない。

しかし、運用の上手いファンドを事前に見抜くことなど出来もしないのに「ファンドの目利きが大事です」と大見得を切ってみたり、「投信は、運用実績くらいは調べてから買いましょう」と論点をずらしてみたりして、アクティブ・ファンドを勧めようとするお金のアドバイザーが後を絶たない。

単なる無知と自己過信なのか、アクティブ・ファンド選びが趣味なのか、それとも自分の存在感を出すためなのか、あるいは、何らかの手数料を稼ぎたいためなのか、何れの理由であるとしても、顧客側から見ると「使えないアドバイザー」だ。

アクティブ・ファンドについては、手数料の大幅な引き下げ(ノー・ロードは当然として、信託報酬の大幅な引き下げ)があるまで、少なくとも他人に勧めることはできないと筆者は考えている。

(4) 投資期間が長くなると、リスクが縮小すると考えている

「100から年齢を引いた数字(%)だけ株式を持ちましょう」といった大雑把で杜撰な簡便法の提案などが典型的だが、「投資期間が長期化すると、リスクは縮小するので、運用期間の長い人は(典型的には若い人)、リスク資産にたくさん投資するのがいい」と考えるアドバイザーが少なくない。

この件に関して「元凶はこれか」、と思うのは、運用啓蒙書の世界的ベストセラーであるバートン・マルキール「ウォール街のランダムウォーカー」(井手正介訳、日本経済新聞社)の第13章の記述だ。第10版の翻訳では400ページ以下の「リスクは投資期間に依存する」という項目で、データ付きで「投資対象を保有し続けられる期間が長ければ長いほど、ポートフォリオに占める株式の割合を高めるべきなのだ」(p402)と述べている。権威あるベストセラーにこう言い切られると、これを信じるアドバイザーがいるのも無理はない。

しかし、マルキール氏のように運用期間の異なるリスクを「年率化されたリターンの標準偏差」で(例えばp401のグラフのように)見る事は適切ではない。運用資産額が取り得る上下の幅を見るべきであり、この幅は当然ながら運用期間が長期化するほど大きくなる。運用期間が長期化すると、運用額に対する期待収益も拡大するから、運用期間と「最適なリスク」の関係は概ね中立と見るのが正しい。

しかし、マルキール氏が幸運なのは、運用期間と最適なリスク水準の関係は中立でも、若い人と高齢者の人的資本及び金融資産保有額が傾向として異なることだ。

たとえば、若い人は、今後稼げる期間が長いから人的資本は大きいが、金融資産は高齢者よりも少ない傾向がある。現在保有する金融資産に占めるリスク資産の割合が大きくても、そのリスクの経済的なインパクトは必ずしも大きくない。マルキール氏は、理由にあってファイナンス(金融論)的に間違えていたが、結果として彼のアドバイスが正しく当てはまる場合が多い、という幸運を得た。

最適なリスク水準の決定に主に影響するのは、会社でも年金基金でも個人でも、財務的なリスクに対する耐性の大小だ。

顧客の側では、アドバイザーが、「運用期間が長期ならハイリスク商品への投資割合を増やせます」と言うならアドバイザーの知識を疑うべきだ。

(5) ドルコスト平均法が有利な投資法だと信じている

時間を分散して何度にも分けて同一のリスク運用商品を購入することが、リスク分散になり、特に、毎回定額で買う「ドルコスト平均法」は、平均買い単価が低下しやすくて有利だと考える信者が多い。

マルキール氏の前掲書にもドルコスト平均法を賞賛する記述があるし、FPの教材などにもドルコスト平均法を有益な投資法として紹介する記述があるようだ。もちろん、運用に詳しくないお金のアドバイザーが書いた入門書には、ドルコスト平均法への賞賛が頻出する。

では、ドルコスト平均法がそんなにいいのかというと、冷静に考えるなら、そうではないことが分かる。

先ず、リスク資産に投資する場合に、一度に買う場合と比較して、分割購入の途中時点では投資額が少ないのだから、リスクが小さいのは当然で、期待リターンも小さくなっているのだから、少しも有利ではない。もともとリスクに見合う以上の期待リターンがあると思うからその資産を買うのだろうから、時間をかけた分割購入は、利益機会を逃す「機会費用」を発生させている。

加えて、売買回数が増えるのだから、手数料と手間が余計に掛かる。

また、定額購入と一定数(株なら同一株数、投信なら同一受益券数)単位の購入のどちらが有利かは、収益率の時系列自己相関がプラスかマイナスかによるが、過去のリターンと将来のリターンの相関は概ね無相関であって、ドルコスト平均法が「有利だ」と言える理論や実証結果はない。

上がって、下がって、また上がる…、というような人が典型的だと思いやすい値動きのケースにあって、保有資産に対するリスクと期待リターンではなく、平均買い単価だけに注目した場合に、ドルコスト平均法が有利に見えて「気が休まる」というのが、ドルコスト平均法の真相なのだ。

気が休まるだけなら罪はないが、先に見たように、機会費用、手数料、手間の問題があるし、ドルコスト平均法が有利だと過信した場合、単一のリスク資産に過剰な投資を積み上げてしまう不都合が生じる。

社員持ち株会のパンフレットには、ドルコスト平均法なので有利だという記述があることが多い。しかし、勤務先の株式への投資自体がリスクの過剰集中であり、運用セオリーに反するものなのだ。ドルコスト平均法でこれを正当化しようとするのは不適切だ。

リスク低減を目的にドルコスト平均法を使うなら、毎回異なる投資対象に投資して、その後も有効な分散投資を構築するのがいいことは自明だ。

他方、ドルコスト平均法が有利であるとしておくことは、金融機関から見ると、顧客の積立投資促進につながって好都合だ。積立投資の顧客は、一度投資するところまで誘導に成功したら、放っておいても継続的に資金を投入してくれる好都合な顧客だ。

定額で自動積立でもしないとお金は貯まらない、という意見には筆者も同意するが、これは、いわゆる「天引き」での積立という手段が貯蓄に向いているということであって、ドルコスト平均法がいいということではない。

ドルコスト平均法についてどう言っているかによって、お金のアドバイザーが合理的に運用を考えられる人なのか否か、或いは、顧客をどう扱おうとしているかが分かる。

(6) NISAやDCでバランス・ファンドへの投資をアドバイスする

NISA(少額投資非課税制度)とDC(確定拠出年金)は共に、通常の投資であれば運用期間中に掛かる運用益に対する課税が非課税になる点が有利な、投資優遇税制の性質を持っている。

NISAあるいはDCで運用している資金だけが金融資産運用だという小口の投資家を除くある程度以上の資産を運用している投資家の場合、これらの制度内での資産運用は、「自分の運用資産の中で、期待リターンの高い資産の運用部分をNISAやDCに“割り当てる"」ことが合理的だと計算出来る。

伝統的な資産区分では、内外の株式がリスクはあるが期待リターンの大きな資産運用のパートということになるだろうから、NISAやDCに、これらの運用を集中することが合理的だ。

これは、簡単な計算で分かる話なのだが、NISAやDCの資金を個別に見て、「途中売却すると非課税枠から外れるので、リバランスがファンド内で出来るバランス・ファンドにしましょう」(NISAの場合)とか、「年金なので安全に」或いは「米国ではライフサイクル・ファンドという選択肢が普及しています」(DCの場合)などと言って、これらの非課税運用口座での運用に、バランス・ファンドを勧める向きがあるのは、嘆かわしいことだ。

彼らの理解の共通の欠落は、個人の「運用資産全体の最適化」という視点が無いことだ。これは、年金運用でいうと、マネージャー・ストラクチャー(運用機関の組み合わせ)の基本が分かっていないということだし、企業金融の理論でいうとモディリアーニ・ミラーの定理が分からない人(経済学部卒業生なら恥ずかしいレベル)、ということになろう。

バランス・ファンドは、中身の調整を運用機関がやってくれるので、一見親切で分かり易いが、投資家は実際にどのようなリスクを取っているのか正確に把握することが難しく、また、同等の運用を単品のファンドの組み合わせで行うよりも手数料率が高く付く。

DCにバランス・ファンドは不向きなのだが、「ライフサイクル・ファンド」という商品がある理由は、米国の運用の世界にも間違いがあることと日本人が海外の商品を真似したがることの他に、金融機関側では、アセットアロケーションの説明が出来ない販売員にとって販売しやすいことが上げられる。

筆者は、かつて、ある都市銀行グループの商品企画に近い仕事をしている人に、「どうしてDCにライフサイクル・ファンドのような筋悪なものを並べるのか」と質問したことがある。対する答えは、「ウチの売り子には、難しい説明が出来ないからですよ」というものだった。DC営業に携わる銀行員を馬鹿にした、加えて、DCの投資教育にやる気のない、残念な返答を聞いたやりとりが忘れられない。

(7) 市場予測と商品評価を混ぜて考える

たとえばドル高・円安を予想しているときに、ドル建ての外貨預金に資金を投じるのはいいことか。素人の多くは、「いいことではないか」と答えそうな気がするが、これは正しくない。

そもそも予想は当たるか当たらないか分からない不確かなものだが、それが理由ではない。仮に、予想通りに円安になったとしても、外貨預金の金利や為替手数料を考えると、同じリスクを取る外貨建てMMFやFXよりも明らかに損だからだ。そして、もちろん、円高になった場合にも、外貨預金の方が損は大きい。つまり、個人向けに提供されている外貨預金というものは、金融商品としての構造比較の段階でダメなものが殆どなのだ(もちろんプロの銀行間で行う外貨預金は別だ)。

金融商品としての優劣と、その時の市場環境に対する判断とは、別個に出来るものであり、「(他の商品と比べた場合に)同じ内容のリスクを取るのに、実質的な手数料が高い金融商品は、市場環境にかかわらずダメ」なのだ。つまり、同一カテゴリー内で相対的な手数料が高い商品に出る幕はないのである。

運用会社や販売会社にとっては身も蓋もない話だが、この区別が分かると、現存する投資信託の9割以上の商品を、市場予測に関係なく、自信をもって却下して、投資の検討対象から外すことが出来る。

これは、お金のアドバイザーが、真に投資家の役に立ちたいなら、論拠と効果が明快で且つ物事がシンプルになる「いい話」のはずなのだが、手数料の高い商品を勧めたいという動機を持っている場合には、そう納得する訳に行かない。

顧客の注意を、商品の実質的な手数料にではなく、マーケットの予想に集中させたり、あるいは、複数の異なるカテゴリーの商品を比較させたりして、「市場環境の話」と「運用商品の優劣の話」を混ぜ合わせて、高い手数料の商品を検討の俎上に乗せようとするのだ。

或いは、運用の「結果」だけを論じて、「期待」の段階での意思決定の優劣比較を回避する手口もある。「私は、こうやって投資で儲けて来た」と言い募ったり、「ならば、どの商品がいいか、将来の結果を見て判断して貰いましょう」と開き直ったりする。投資の結果はばらつくので、結果がいい場合も悪い場合もあるが、意思決定自体の優劣は、期待の段階で判断すべきものだ。この点を誤魔化す、「悪しき結果主義」に付き合ってはいけない。

販売に高い人件費コストが掛かる対面営業型の金融機関では、実際にはこれらのような手口を使わないとビジネスが成立しない側面があるのは事実だ。しかし、お金のアドバイザーを名乗る者が、両者を区別しないで無責任な(あるいは意図的な悪意のある)アドバイスを行う場合があるのは、困ったこと、情けないことである。

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