61年ぶりに減少した総人口。解決の糸口はあるか?
中国の国家統計局はこのほど、人口を巡る数値を発表しました。2022年末時点における中国総人口は、前年末比85万人減の14億1175万人でした。「61年ぶりの人口減少」という結果を前に、私自身、想定内とはいえ衝撃を受けました。
昨年の出生人数は956万人、死亡人数は1,041万人でしたが、「ゼロコロナ」策の実質撤廃を受けて、コロナ感染による死亡者数が急増、当局が発表しているだけでも、12月上旬から1月上旬の1カ月で約6万人が亡くなっている現状を考えると、来年のこの時期、「中国2年連続の人口減」というニュースが出回る可能性が高いでしょう。
しかも、人口構造がいびつです。例として、男女比率を見てみると、男性が7億2,206万人、女性が6億8,969万人で、女性100人に対して男性が104.69人いる計算になります。また少子高齢化が進む中国では、2050年に向けて生産年齢人口が2億人減るという試算もあります。
AI(人工知能)、ロボット、デジタル化などが急速に進む中、中国政府も人口減という動向下で生産性を向上させる手だてを打ったり、「一人っ子政策」を撤廃し、3人目までの出産を容認するなど計画生育を緩和させていますが、人口動態が長期トレンドという意味でチャイナリスクになる可能性が、今回の発表で一層浮き彫りとなりました。
医療、社会、労災保険を充実させたり、国と企業が連携して労働力としての女性の権利を制度的に尊重したりといったパッケージ戦略が不可欠であることは言うまでもありません。私個人的には、中国社会において「人が人として尊重される」という意味で、広義における「人権」が保障されることを通じてしか、中国における人口減問題は根本的に解決しないと見ています。懸念される人材流出の問題も、同じ文脈で議論、改善されるべきと考えます。