鍵はアリババの動向と不動産市場

 その意味で注目されるのがやはりアリババの動向です。年明け早々、同社傘下の金融会アント・グループが消費者部門向けに105億元を調達する資金調達計画が当局によって承認され、1月4日、アントに出資するアリババ株は13%上昇、昨年6月以来の大幅高となりました。

 続いて7日、同グループはアリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が実質支配株主でなくなったと発表。これらの動きが、前述の郭樹清・中国人民銀行党書記が指摘する「金融業務の是正」作業と連動しているのは言うまでもありません。アリババ・グループとしての短中期的目標の一つがアントのIPOであり、それに向けて経営再建、コーポレートガバナンスの強化などが急ピッチで進められているのが現状です。

 そして、中国経済の回復を占う上で鍵を握るのが不動産市場です。昨年、同市場は開発投資、販売額・面積を含めマイナス成長をたどりました。ロイター通信によれば、昨年11月の不動産投資は前年同月比19.9%減で、2000年の統計開始以来最大の落ち込みとなりました。

 一方、昨年12月の中央経済工作会議で「不動産業界が新たなモデルに平穏に移行すること」を掲げた中央政府としては、不動産バブルは警戒しつつも、同市場の復調は不可欠という立場をあらわにしています。

 例として、1月5日、中国人民銀行と銀行保険管理監督委員会は、消費者が一軒目の住宅を購入する際の、頭金規制を緩和しました。具体的には、新築の住宅価格が前月比、前年同月比で、3カ月連続下降している都市に対して、段階を踏みつつ、住宅ローンの頭金比率を引き下げる、あるいは取り下げるとしています。

 また、不動産関連企業の資金繰りを困難にしてきた「3つのレッドライン」(2020年、不動産開発会社のレバレッジ抑制を狙いに導入。「一部を除いた資産に対する負債比率70%以下」、「純債務が自己資本を超過してはならない」、「短期負債を上回る現金保有」から成る)を緩和する、あるいは実質撤廃することが政府内部で検討されています。私が掌握する限り、この検討は昨年の早い段階からなされていますが、ここに来て本格化しているようです。

 中国政府として、(a)「ゼロコロナ」の撤廃、(b)財政、金融などマクロコントロール、(c)IT企業や不動産市場への支援、などを通じて、景気を盛り上げ、国内外の市場関係者の中国経済・市場に対する自信と期待値を回復させようと奔走している現状が見受けられます。