※本記事は2012年4月6日に公開したものです。

二つのプレイ・スタイル

 相場の世界には「順張り」と「逆張り」の二つのプレイ・スタイルが存在する。

 近い過去から現在までの間に、相場が上がっている時に買い、下がっている時に売るやり方が「順張り」で、上がっている時に売って、下がっている時に買うのが「逆張り」だ。将来の相場を見通すことができれば、その見通しに対して順張りすればいいのだが、残念ながら、そのように好都合なことができる人はいない(いたら、世界の富の相当部分を一人で握っているはずだ!)。

 順張りを採用するか、逆張りを採用するかは、もちろん市場参加者の自由なので、いつでも自由に変えることができる。

 とはいっても、個人によって好き嫌いがあることが多い。

 だが、経験的にいっても、理屈で考えるとしても、一方のパターンが常に有効であり続けることはない。

 理論的には、順張り・逆張りを気にする必要はないというのが一つの結論だが、自分の得意のパターンが有効だと思う時に相場に参加すればいい、というのがもう一つの結論だ。相場への参加の仕方は一通りでなくてもいい。

 ファイナンス理論の世界の理屈で考えるなら、順張りが有利か、逆張りが有利かについては、結論が出ることはない。

 仮に、一方が有利だという結論が出るとすれば、過去の価格の動きを見るだけで他人よりも有利にゲームをプレイすることができることになってしまう。

 株式のようなリスク資産への投資であれば、理論的にいえるのは、投資家が適切に負ったリスクに対する収益が期待できるということだけだ。

 他方、外国為替のような基本的にゼロサム・ゲームの世界でリスクを取る投機の世界では、順張り・逆張りのどちらにリスクを取っても、リスクテイクへの基本的な報酬はゼロだ。

 株式や債券に投資する場合のような「投資のリスク」と、FX(外国為替証拠金取引)などを含むゼロサム・ゲーム的な外国為替のリスクを取る「投機のリスク」について、両者の違いが十分に理解されていない場合があるが、お金の運用を考える場合に、これらを適切に区別することは重要だ。ただし、順張り・逆張りという観点にあっては、一方が有利だという固定的な結論が出ない点では、投資も投機も同じである。

 しゃくし定規な理論の世界からアドバイスするなら、「順張りか、逆張りかを意識することに意味はない。効率の良いポートフォリオを持って、自分に最適な大きさのリスクを取っていなさい」というのが正しい答えになる。