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「インデックス」を評価する視点を巡るあれこれ
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

「インデックス」を評価する視点を巡るあれこれ

2012/1/6
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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インデックス(株価指数)の目的は三つある

個人の運用の世界ではまだまだメジャーな投資手法とは呼びがたいが、インデックス運用を運用の中心にする個人投資家が確実に増えているように思う。アクティブ運用商品の平均的なパフォーマンスがインデックス運用商品のパフォーマンスをほぼ恒常的に下回ることを考えると、彼らを「賢い投資家」と呼んでもいいだろう。

ところで、それでは「賢い投資家になろう」と決意した投資家がいた場合に、彼らは、アセット・アロケーションの問題と共に、どのインデックスに投資したらいいのかという問題に直面する。幸か不幸か世間にはかなりの数のインデックス(株価指数)があるし、これらの指数の何れか又は複数にリターンを連動させることを目的としたインデックス運用商品が存在する。

また、インデックスの目的はインデックス運用のターゲットだけにとどまらない。インデックスには、過去や現在の市場の動きを把握するためであったり、トレーディングの対象であったりといった、資産形成のためのインデックス運用とは異なる目的もある。

現存するインデックスは、これらの目的の何れの観点から評価するかによって評価が変わる。

改めて、インデックスの目的を列挙するなら、以下の三つだ。目的として古いと思われる順に並べてみよう。

市場の動きの把握

株式など当該対象資産の市場価格或いはリターン及びリスクについて、「今日はどうだったか?」、「過去10年間はどうだったか」といった関心に答える。代表的な銘柄の動きがいいのか、投資家が保有する平均的な銘柄(とウェイト)がいいのか等の目的によって把握したい対象が変化する。

インデックス運用のターゲット

インデックス・ファンドを保有するなら、どのインデックスをターゲットにした商品がいいか? 主として運用されるポートフォリオとして、そのインデックスの構成銘柄とウェイトが、適切かどうかが問題になる。

トレーディングの対象

先物やオプションとも絡んで、トレーディングに適している指数かどうかが問題となる。

TOPIXと日経平均では?

日本株の代表的な株価指数であるTOPIX(東証株価指数)と日経平均を上記の三つの観点で比較してみよう。

先ず、株式市場全体の動きを把握するためという目的で考えるとどうか。

筆者は、この目的であれば、TOPIXに軍配を上げる。特に長期的な観点に立つとこちらが優位だ。TOPIXは基本的には時価総額ウェイトの指数なので、市場参加者全体が保有する富の価値に対して代表性が高い。もちろん、どんなポートフォリオで運用するのかにもよるが、アセット・アロケーションの検討を行う場合の過去のリスクとリターンの把握にもTOPIXの方が好都合な場合が多い(注;現実に運用されるポートフォリオは日経平均よりはTOPIXに近いことが多い)。

また、株価水準及びリターンのデータとしての長期的な連続性を考える場合、ウェイトにして50%以上が一気に入れ替わり、市場全体の平均的な変動とは別に10%以上ものズレが発生した2000年4月の日経平均の銘柄入れ替えの影響は大きい。

但し、トレーディングをはじめとして、株価の短期的な変動に関心がある向きが日々ないし一週間程度の変動を把握するには、日経平均の方が目的にかなう場合もあるだろうし、両者の差はそれほど大きなものではない。

株式市場の把握を目的として指数を評価するとしても、それが株式による長期的な運用を目的としたものなのか、短期的なトレーディングを目的としたものなのかによって、評価は多少変化する。

インデックス運用の対象指数としても、筆者はTOPIXの方が優れていると考える。現実に、機関投資家の多くがインデックス運用を行う場合、日経平均ではなくTOPIXをターゲットとして選択することが圧倒的に多い。

一つには日経平均が(時価総額ではなく)株価水準の影響を極端に受けやすく、値嵩(ねがさ)株のウェイトが高いせいで、銘柄数によるリスク分散効果を減殺していることの悪影響がある。

「時価総額ウェイト」であることにポートフォリオ上(あるいは投資理論上)決定的な優位性があるとは思わないが、このウェイト・スキームは、投資家の平均的なポートフォリオに近づくので、インデックス運用によって、アクティブ運用に対するコスト差を安定的に実現しやすい点が優れている。

但し、たとえば、特定の銘柄なり業種なりの時価総額が突出して大きくなった場合に、時価総額ウェイトの指数はポートフォリオとしてのリスク分散にあって弱点を抱える可能性がある。

また、株式投資の一般論として、時価総額が大きな銘柄は急成長が期待しにくい。資金規模の制約を受けにくいアクティブ運用のポートフォリオは、市場平均よりもポートフォリオ全体の企業規模が小さくなることが多いが、これは、ファンドマネージャーにとっては自然に感じられるバイアスだろう。

ターゲット・インデックスとしての評価は、主に、ポートフォリオとしての分散投資の状態によるが、筆者は、時価総額ベース、ないしは現在の世界のインデックスの主流である「浮動株調整済みの時価総額ベース」がベストだとは思っていない。

また、インデックス運用のターゲットとしては、当該指数の銘柄入れ替えやウェイト変更に関連して、先物やオプション取引の対象(同時に裁定取引の対象になる)になっているか、及び、当該指数で運用されているインデックス運用の資金がどれくらいあるかが問題になる。

同じインデックスによるインデックス運用資金があまりに大きかったり、先物やオプションの裁定取引で頻繁にトレードされたりすることは、インデックス運用のターゲット指数としては、メリットであるよりは注意を要するポイントだ。

一般的な解説では、先物やオプションがあることは「ヘッジに便利だ」とされることがあるが、個人投資家が短期的な(たとえば夏休み期間の)ヘッジを必要とすることは殆ど無い。短期的な相場が予想できることは滅多に無いし、短期的なヘッジが必要なリスクを抱えているとすると、それはたいていの場合、もともとのアセット・アロケーションが不適切な場合が多いだろう。

一方、トレーディングの対象となると、日経平均の方がTOPIXよりも優位に立つ。これは、主としてデリバティブ取引との裁定取引には日経平均の方が適しているからだ。TOPIXは銘柄数も多いし、時価総額ウェイトであるため現物の正確な裁定ポートフォリオを作るために必要な資金額も大きいし、手間も掛かる。

また、トレーディングが目的であれば、値嵩株の影響によって日経平均の値動きが軽いことはむしろ長所だし、日経平均が持つ知名度によって、日経平均関連商品のトレーディングで流動性が高いこともプラス材料だ。

運用対象としてのインデックスの選択と可能性

運用商品も含めて単独のインデックスで個人的に最も魅力的に感じるのは、Vanguard社の「バンガード・トータル・ワールド・ストックETFF」(ティッカー・コード「VT」)に採用されている「FTSE Global All Cap Index」だ。グローバルに幅広い分散投資がなされているし、小型株が入っている点もいい。また、ファンドの規模もほどほどであり、裁定取引や銘柄入れ替えに伴う悪影響も当面心配が小さい。

日本の投資家がリスク資産として投資する場合に、このファンドだけだと些か為替リスクが大きいので、たとえばリスク資産部分を「VT 70%+TOPIX 30%」程度にアレンジするといいかも知れないし、何らかの為替ヘッジが可能であれば多少の調整を付加したい。

もちろん、リスク資産部分を「単独の」指数で運用する必要はないので、「MSCI-KOKUSAI 25%+MSCI-EM 25%+TOPIX 50%」といった組み合わせで運用してもいい。

将来に向けて、個人的に興味を持っているのは、人間が構成銘柄やウェイトを変化させる「運用判断付きのインデックス」だ。何らかの運用哲学と運用ルール(特に回転率の上限)の下に、運用にとって望ましいと思われるポートフォリオをインデックス化して、これに対するインデックス・ファンドやETFが生まれると投資家にとって面白い。

日経平均は、日本経済新聞社が主宰する委員会によって構成銘柄を(多少はウェイトも)決めているので、ある意味ではこうした「運用判断付きのインデックス」の先例だ。しかし、日経平均の場合は、先に挙げた(1)と(3)の目的に重点があり、運用ポートフォリオとしての望ましさは今一つなのは、先に説明した通りだ。

ともかく、実質的にアクティブ運用のインデックスやETFが存在しても全くおかしくない。いわゆる「ファンダメンタル・インデックス」と呼ばれるような、売り上げや利益などのデータで指数を構成するインデックスの運用もこの一種だが、必ずしも全てを機械的にルール化する必要はない。

ビジネス的には引き合わないかも知れないが、誰かやってみないか?(もちろん、私自身がやってみることも選択肢の一つだ)

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