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経済循環と運用を時計で考える(下)
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

経済循環と運用を時計で考える(下)

2011/12/2
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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前回は、景気と資産価格を引き連れてバブルとボトムを行ったり来たりする経済の循環パターンを時計の針の回転に譬えてご説明した。

資産運用を考える場合、この循環に対しては、それぞれの時間帯(=経済循環の段階)でベストな「お金の置き場所」、つまり資産運用対象が存在する。

もちろん、お金を増やすことができる時期とそうでない時期の差はあるのだが、「相対的に何がいいか」という比較は常に可能なので、それぞれの時間帯にあって、第一選択肢と第二選択肢をあげてみた。

表にまとめてみたので、早速見てみて欲しい。

(図) 山崎式バブルとボトムの経済時計

時間帯 第一選択肢 第二選択肢
12時~2時 現金 国債
2時~4時 国債 現金
4時~5時 現金 国債
5時~6時 国債 現金
6時~7時 株式 ハイイールド債
7時~8時 ハイイールド債 株式
8時~11時 株式 不動産
11時~12時 不動産 株式

12時~2時(バブル崩壊初期)

バブル崩壊の初期は、第一選択肢が「現金」、第二選択肢は「国債」とした。

この場合、国債とは、基本的に長期国債を指すが、信用リスクが不安視されるような国の国債ではなく、日本国債、米国債、独国債のような信用度が高くて流動性が大きな国債だ。自国以外の国債を買う場合は、為替ヘッジの必要性を判断して欲しい(通常はヘッジして買う方がいい)。

「現金」と「国債」の選択は迷うところだが、一つにはバブル崩壊の初期は本当にバブルが崩壊しているのかが定か出ないことがあるし、バブルの熱が残っていて、インフレ率が高く金融引き締め中であることが多い。この場合、長期債の金利低下に賭けるのは危険な面がある。

バブル崩壊が本格化して加速度が付く段階(2時に近づく時間帯)では、流動性・換金性が重要だ。運用の世界には「キャッシュ・イズ・キング」という言葉があるが、株式や不動産などは「高値であることが最大の悪材料だ」という状況になるので、現金(ファンドマネジャーの場合は短期性資金)が安心だ。

信用度の高い国債や通貨には「質への逃避」が起こる公算が大きい。流動性が十分確保できる範囲であれば、長期国債に投資して値上がり益を狙うのは十分成立する狙いだ。

2時~4時(不良債権累積期)

バブルが崩壊して資産価格が下落すると、金融機関の債権が劣化する。具体的には、不動産など担保となっている物の価値が下落してローン価値の毀損が起こる。一方、株価や不動産価格の下落は「逆資産効果」をもたらし、実物経済の消費や投資を縮小させる。

この時期の資産運用の王様は長期国債だ。金利が下落し、価格が上昇する。現金から長期国債に上手く切り替えるタイミングを掴むことが出来れば、大きなキャピタルゲインを得ることが出来るだろう。

4時~5時(流動性危機)

不良債権が累積すると、金融機関のバランスシートに対する相互不信が生まれ、金融取引が滞る状態が起こる。たとえば、日本のバブル崩壊の後は日本の銀行が、現在の欧州情勢にあっては欧州の銀行が調達金利の上乗せを求められる事態が発生したが、この時期の主な関心事は流動性になる。また、財政状況によっては国債が売られる懸念が生じる場合があるので、この状態では「現金」を第一選択肢とした。大手金融機関の倒産が起これば、経済がショック状態に陥る場合もあろう。

もちろん、流動性と信用度に問題のない国債も有力な運用資産候補だ。

5時~6時(信用収縮期)

流動性危機を中央銀行の金融緩和で凌いでも、貸手・借手双方のバランスシート、特に金融機関のバランスシートが修復されて、資本が十分に手当てされないと、信用(=与信、貸出)は拡大に向かわない。「貸し渋り」による不況が続く。

流動性に緊急の問題はなく、民間に資金需要が乏しいので、資金は安全資産としての国債に向かいやすい。長期金利は意外な低金利が定着する可能性がある。この時期は「国債」、「現金」の順だろう。

6時~7時(リバウンド期)

景気が後退し、信用が収縮する過程では、資産が過剰に売られやすくなる。たとえば、株価は既に割安になっていても、ファンドの解約請求があればファンドマネージャーは、株価の判断に関係なく株式を売却しなければならない。

ボトムからの回復の第一歩は、金融緩和を背景に、売られすぎた資産価格がリバウンド的に底離れすることから始まる。

この時期、流動性があって反応が早くリバウンドを大きく取りやすいのは「株式」だろう。加えて長期国債の金利低下は一巡しているはずだが、危機から時間的な距離が出来ることで、信用リスクのある債券は倒産リスクが遠のくので、スプレッドに注目されて買われる場合がある。「ハイイールド債」は、信用リスクにより利回りにプレミアムのある債券のことだと解釈して欲しい。

7時~8時(自律回復初期)

前記のような理由で、信用リスクの分だけ利回りにプレミアムが乗った債券は投資妙味がある。リバウンドの初期の足の速さでは株式に一歩譲るが、景気の回復に伴って信用リスクが縮小する時期は、スプレッドが縮小するので、リスクも加味すると「ハイイールド債」に相対的な妙味があるように思う。

リバウンドの後が続いてブームまで至るかどうかは、経済環境と、金融政策(金融緩和の程度と継続性)に依るが、常識的には「株式」も悪くないはずだ。

8時~11時(好況からブームへ)

「景気回復」から「ブーム(好況)」に至る時期なので、「株式」「不動産」といった収益資産がリターンを稼いでくれる時期だ。この種の物への投資はこの時期のためにやっていると考えてもいいくらいだ。

株式がいいか不動産がいいかは微妙だが、流動性・換金性に優れる点で株式を第一選択とした。

11時~12時(ブームからバブルへ)

現在の金融ビジネスの構造を考えると、ブームがバブルに至らずに継続することは難しい。どこまで続くか、いつまで続くかは渦中にあって判断しにくいが、ブームの末期は、広範な信用の拡大が起こるので不動産価格が高騰しやすい。過去にあって、多くの場合、ブームの末期には、信用拡大に後押しされた不動産ブームが起こっており、これが将来の不良債権の種にもなることが多いのだが、バブルの終盤は「不動産」、「株式」としておこう。ただし、特に不動産は流動性が乏しくなった時に売れなくなるので、逃げ時が大事あることは肝に銘じておこう。

不動産も株式も、バブルは末期の値上がりが大きいので、早く「降りる」と寂しい思いをすることがあるが、逃げ遅れて酷い目に遭うこともあるのだが、パターン化が難しい。この段階から参加する投資については、「ご幸運を祈る!」としか言いようがない。

尚、上記のパターンは、経験と論理を加味すると多くの場合こんな感じだろう、という筆者の個人的な判断に過ぎない。そもそも、経済がどの時間帯に居るのか、どこに向かうのか(逆回転が起こりやすいのは、金融緩和の不足で9時を前に失速した2000年代の日本のような場合だ)に関する判断自体が確実に出来るものではないし、どの資産がいいかという判断も些細に見える条件のちがいによっても変化する。本稿で述べたパターンは、あくまでも投資のヒントに過ぎないことを申し添えておく。

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