成るか?来年春闘5%賃上げ
経済面を中心に2022年を振り返ると、「円安」とそれに端を発する「物価高」の印象が強いことに異論はないでしょう。
円安については、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が3月に政策金利の利上げを始め、超低金利政策を続ける日本との金利差が開いたことが要因と考えられます。円が売られ、ドル買いが急速に進みました。
ただ10月21日に151円台後半まで進んだ円安は、12月2日に133円台後半を付け、約1カ月半の短期間で円高方向に反転しました。
この間、パウエルFRB議長が米利上げペースの緩和を示唆する発言をしたものの、FRBによる米利上げがストップしたわけではありません。
このようなことから、急な円安が起きたのは投機的な動きが要因の一つになったと理解することができます。
政府・日本銀行は9月22日にドル売り円買いの為替介入を1998年以来、約24年ぶりに行いました。通貨当局の財務省のコメントは「投機による過度な為替変動は決して見過ごすことはできない」というものでした。
10月も円買い介入をしましたが、介入当時は財務省が実施の有無を明らかにしないことから、「覆面介入」と呼ばれました。
10月末に財務省のホームページで介入額が公表され、単月では過去最大規模のドル売り円買いをしたことが明らかになりました。実際に短期間に円高方向に動いたことからも、介入の効果はあったと考えていいでしょう。
今後も投機的な動きに対しては政府・日銀が断固とした姿勢(介入)を示していること、米利上げ打ち止め観測があることから、投機的な動きが再燃する可能性は低いと考えていいかもしれません。
ドル/円相場は10月21日に付けた、1ドル=151円台後半が「円の直近安値」となった可能性が高いです。
主に円安によって起こった物価高(≒輸入物価上昇)についても、一服したと考えるのが筋でしょう。
もちろん輸入物価の上昇が落ち着いたとしても、一度値上げされたモノの価格が以前より高水準にあることに変わりありません。この先に目立った賃上げがなければ、大きく消費が落ち込むストーリーもあり得ます。
言うまでもなく、ここから注目されるのは「賃上げの程度」でしょう。
労働組合の全国組織「連合」は、2023年の春闘に向けた方針について、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を3%程度、定期昇給分を含めて5%程度の賃上げを経営側に求めることを正式決定しました。5%程度というのは、1995年以来の高い要求水準となります。
連合の芳野友子会長は「労働者は物価高、円安、コロナ禍の三重苦に置かれている。賃金が物価に追いつかない状況が続けば個人消費が落ち込み、深刻な不況を招く恐れがある」と強調しています。
自民党の萩生田光一政調会長も「岸田内閣の政策は、限りなく連合と同じ方向を向いている」と述べ、賃上げを後押ししています。
岸田政権が提唱する「新しい資本主義」の一環として、職業能力を学び直すリスキリングに力を入れる方針を打ち出していることも労働者の収入増加を目指すものです。
これらの動きに産業界からは「物価高を考慮すれば連合の方針は妥当な水準だ」との声が聞かれています。2023年の春闘では今年と同様に「満額回答」という文言を多く目にすることになりそうです。
転職ネイティブ世代も登場!伸びる業界
そうであったとしても足元の物価高を受けた、生活や将来への不安が消失するものではないでしょう。春闘後も以下のような問題が浮き彫りとなることはほぼ確実です。
・賃上げが物価高に追いついていない。
・そもそも賃金が低すぎる。
・全ての企業が賃上げするわけではない。
これらの「問題」も円安と輸入物価の上昇が止まり、賃上げが数年続けて相当達成されれば、落ち着く方向に向かうと思われます。しかし、それまでには応分の時間が必要となります。
その間に広がる動きとして「転職」や「副業」が想定されます。より待遇がいい職場を求める、収入アップを目指しダブルワークを行う、そのような動きです。株式の投資先を判断する材料にもなります。
実はすでに株価が上向いている転職関連銘柄があります。中堅人材紹介企業で幹部級案件などに強みを持つジェイエイシーリクルートメント(2124・プライム)や、クラウド活用の転職サービス「ビズリーチ」で知られるビジョナル(4194・グロース)です。
ジェイエイシーリクルートメント(2124・プライム)
ビジョナル(4194・グロース)
この2銘柄の株価は今年夏~秋の日経平均株価(225種)の下落と逆行する動きをしてきました。円安が急進行し、物価高が本格的に問題視され始めた時期とも重なります。その後も高値圏を維持し続けています。この株価の動きから何が透けて見えるか?
やはり「転職市場の拡大」となるでしょう。「転職ネイティブ世代」という言葉も生まれています。就活時からすでに転職を意識し、新卒で入社した企業から数年で転職をする、新しい世代を指します。
円安+物価高を契機に他世代にも「転職」、「副業」が広がっていくことは、株式市場では既定路線として受け止められているのかもしれません。
転職・副業関連の7銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
2124 | ジェイエイシーリクルートメント | 2,511 | |||
4194 | ビジョナル | 10,130 | |||
6054 | リブセンス | 300 | |||
5127 | グッピーズ | 1,596 | |||
7064 | ハウテレビジョン | 3,520 | |||
3900 | クラウドワークス | 1,537 | |||
6551 | ツナググループ・ホールディングス | 513 | |||
※株価データは2022年12月8日終値ベース。 |
ジェイエイシーリクルートメント(2124・プライム)
幹部級案件などに強みを持つ人材紹介中堅企業です。
・1年日足チャート
ビジョナル(4194・グロース)
クラウド活用の転職サービス「ビズリーチ」が拡大しています。
・1年日足チャート
リブセンス(6054・プライム)
「転職会議」などの求人情報サイトを運営しています。
・1年日足チャート
グッピーズ(5127・グロース)
転職者向け「GUPPY求人」、新卒向け「GUPPY新卒」を展開しています。
・1年日足チャート
ハウテレビジョン(7064・グロース)
外資系企業などを目指す学生向け「外資就活ドットコム」や若手社会人向け「Liiga」など就活サービスを展開しています。
・1年日足チャート
クラウドワークス(3900・グロース)
国内最大級のクラウドソーシング企業で人材マッチングが好調です。
・1年日足チャート
ツナググループ・ホールディングス(6551・スタンダード)
小売業・飲食業のアルバイト採用代行が主力です。