緩和の兆し:中国における「ゼロコロナ」策の今

 11月9日に「党大会後の中国『ゼロコロナ』策はいずこへ」と題したレポートを配信しました。「ゼロコロナ」という看板は下ろさずに方針は貫くけれども、中央政府は地方政府への監視と指導を強化することで、非合理的で科学性に欠ける抑制措置を容認しなくなる。これまで以上に柔軟かつ機動的な政策をとることで、経済活動や国民生活への影響を最小限に抑えるべく動いていくという見込みを示しました。

 2日後の11日、担当当局である国家衛生健康管理委員会が、「新型コロナウイルス感染拡大の予防抑制措置をより一層最適化し、科学的で精密な防疫を着実に実行する通知」を発表。通知の核心的内容・メッセージは、従来の方針を調整しようとする20から成る措置(以下「20か条」)です。「20か条」には、以下のような措置が含まれます。

・濃厚接触者、および中国への入国者に対する隔離措置に関して、従来の「7日間の集中隔離+3日間の自宅健康観察」から「5日間の集中隔離+3日間の自宅隔離」に調整

・これまで「濃厚接触者の濃厚接触者」に対して7日間の自宅隔離を求めていたのを、「濃厚接触者の濃厚接触者」の判定を行わないと調整

・リスク等級に関して、従来低・中・高の3段階に設定していたのを低・高の2段階に調整

・高リスク地域からの来訪者に対する隔離措置に関して、従来の「7日間の集中隔離」から「7日間の自宅隔離」に調整

・中国渡航前のPCR検査に関して、従来、搭乗前2日前に1回、出発24時間以内に1回だったのを、48時間以内の1回の検査で陰性証明を取得すればよいと調整

・安易、身勝手に学校封鎖、学級停止、工場生産停止をしたり、批准を経ずに交通の流れを遮断したり、都市封鎖をしたり、長時間封鎖を解除しなかったりという行為を厳しく禁止

 中央政府として、「ゼロコロナ」という看板を下ろせない中で、それなりに踏み込んだ緩和策を打ち出したという印象を私は抱きました。調整前後の措置も、抽象論ではなく、具体的な数字を示したということで、当局の本気度、裏を返せば、危機感が伝わってきます。

 危機感の対象は主に三つあると見ています。

(1)市民の不満がまん延し、社会不安の形成につながること
(2)経済活動への悪影響が継続し、景気が上向かないこと
(3)国際社会、特に市場関係者が、中国という国家、市場への自信と期待値を一層失うこと

 故に、中国当局としてもできる範囲で思い切った措置を打ち出したということでしょう。