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大学生に教える「金融資産運用論」のプログラム(改訂版)
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

大学生に教える「金融資産運用論」のプログラム(改訂版)

2010/10/1
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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筆者は、今年の4月から獨協大学で「金融資産運用論」というタイトルの授業を担当している。資産運用に関する理論と実際の資産運用を説明することが眼目の授業だが、あわせて、個人の資産運用に関する必要知識とその伝え方のサンプルを作ることを第二の目的としている。春学期に一シリーズの授業(14回)を終えて、試験を実施した。また、大学は受講生に対する授業評価のアンケートを実施してくれた。

実際に授業をやってみて、あらためて教師は大変な仕事だと思ったが、これから秋学期が始まる。

春学期の授業内容を振り返り、また、試験答案や学生の授業評価アンケートの内容などを検討した結果、秋学期の「金融資産運用論」の授業予定を修正することにした。

春学期の反省点は、
(1)全体として内容を詰め込みすぎたこと、
(2)難度が高く感じられる項目の並び方であったこと、
(3)投資理論基礎と運用実際が混在して受講者がモチベーションを持ちにくかったこと、
の主に三点だ。

春学期は、投資の基本的な理論を説明する中で個人の資産運用の問題に重点を置く構成を基本としたが、秋学期は、全体として個人の資産運用に必要な知識を説明する中で、投資の理論的な内容にも触れる構成に修正したい。理論の流れを中心にすると、どうしても難しく見える。

将来、自分のお金をどのように扱い運用したらいいのかという目的意識を中心とする方が、受講者はモチベーションを維持しやすいのでないかと期待する。この形では、将来、より深くファイナンスの理論を学んでみたいと思う学生にとって、物足りない面が出てくる心配があるが、この点は授業の中で補っていきたい。

春学期と秋学期とで、伝えるべき内容が大きく変わるとは思っていないが、秋学期の方が易しい内容に思えるように工夫したい。

以下に、秋学期の授業予定をご紹介する。現時点で筆者が考える「投資の基礎」の内容と、これを教える手順のサンプルとして読んでみて欲しい。

運用が仕事でも趣味でもない一般的な個人はこの全てをマスターする必要はないが(★一つの項目をマスターすれば大丈夫)、運用あるいは運用をアドバイスする仕事に就く場合は、全て必須の知識だと思う。

一般人向けの「運用入門」としては、第1回から第4回までで一通りの内容を網羅することを意図している。

2010年 秋学期 「金融資産運用論」 授業予定

(※)タイトルの横に表示した★の数(1~3個)は、その回の授業の難易度を表します。★は「個人のお金の運用に必要な最低限のレベル」、★★は「運用に興味のある人は知っておきたいレベル」、★★★は「ファイナンスの理論にも興味を持つ人が知っておきたいレベル」です。いずれの回も、高校2年生程度の学力を前提として説明します。

また、解説本文の下の括弧内に、その回の授業で取り上げる予定の専門用語やキーワードを記しておきます。

第1回 ガイダンス 「金融資産運用の対象は何か?」  ★

個人にとって「お金」とは何で、どう扱ったらいいか、お金の運用にあたっては何を知っておいたらいいのかを説明し、「金融資産運用論」で何を取り上げるのかを概説します。試験の方法、単位認定の方針などもご説明します。
(生涯所得、人的資本、現代投資理論、行動フィナンス)

第2回 主な金融商品と、貯蓄・投資・投機  ★

株式、債券、不動産、生命保険、投資信託、外国為替、商品投資など、学生が金融資産の運用を考える際の対象物について概説します(前回、これらが分からなくて苦労した受講者がいたようなので)。その後で、貯蓄、投資、投機をどのように考えたらいいのかを説明します。
(普通株式、優先株、債券、国債、社債、格付、預金、貯金、生命保険、定期保険、年金保険、終身保険、医療保険、付加保険料、死亡表、投資信託、受託銀行、外国為替、スポット、フォワード、スワップ、家賃利回り、REIT、ETF、商品先物取引、リスク、デリバティブ、先物、オプション、ゼロサムゲーム、情報の非対称性)

第3回 お金の損得計算の基礎  ★

まず、将来の価値に不確実性がない場合の利回り、将来価値、現在価値の計算方法について解説します。その後で、将来の価値に不確実性がある場合の考え方を説明します。
(将来価値、現在価値、割引現在価値、機会費用、利回り、単利、複利、直利、リスク、標準偏差、リスク・プレミアム)

第4回 個人の資産運用計画の作成  ★

個人が資産運用に取り組む手順は、(1)家計の把握・分析、(2)個人の資産配分、(3)運用商品の選択、(4)取引窓口の選択、(5)運用のモニタリングとメンテナンス、です。特に前半部分に重点を置きながら、個人の資産運用プロセスを概説します。
(バランスシート、損益計算書、ライフプラン、キャッシュフロー表、アセットアロケーション、人的資本、リスク、FP、投資信託、インデックス・ファンド、為替リスク、財政破綻、インフレーション)

第5回 運用の「合理的な」考え方  ★★

主に個人の資産運用にあって、陥りやすい誤りや、一見常識的に見えても正しくない運用上の行為などを紹介し、お金とその運用をどう扱ったら合理的なのかを説明します。
(簿価、時価、ドルコスト平均法、損切り、利食い、目標株価、リバランス、システム運用、ポートフォリオ・インシュアランス、TAA、後悔回避効果、効用関数)

第6回 リスクの扱い方と計算方法  ★★

将来価値の不確実性・リスクをどのように扱うかを説明し、将来のリスクの見積もり方、さらに、複数の資産を組み合わせた場合のリスクの計算方法について説明します。
(不確実、曖昧、リスク、分散、標準偏差、半分散、分散投資、ポートフォリオ、相関係数)

第7回 アセットアロケーション(資産配分)の作成方法  ★★★

前回のリスクの計算方法の説明を受けて、アセットアロケーションの具体的な作成方法について説明します。
(期待リターン、インプライド・リターン、最適化、取引コスト、リバランス)

第8回 モダンポートフォリオ理論  ★★★

投資に関する伝統的な理論について、CAPMを中心に概説します。
(CAPM、β値、資本コスト、分離定理、APT、マルチファクターモデル、アノマリー、オプション、ブラック・ショールズ・モデル、金融工学)

第9回 市場の効率性とアクティブ運用・パッシブ運用  ★★★

投資の理論的な研究で頻繁に取り上げられる「市場の効率性」の概念について、理論と現実の関係、同概念の「正しい理解の仕方」を説明します。
(市場の効率性、アノマリー、Fama-French、アクティブ運用、パッシブ運用)

第10回 行動ファイナンス  ★★★

認知心理学の成果を応用したファイナンス研究のプログラムとして、過去30年くらいの間に研究が進んだ「行動ファイナンス」と呼ばれる分野の考え方の骨組みと主な業績について紹介します。
(行動ファイナンス、神経ファイナンス、裁定、認知心理学、プロスペクト理論、後悔回避効果、オーバー・コンフィデンス、双曲割引、時間非整合、フレーミング効果、ヒューリスティックス、バイアス、MRI、毎月分配型ファンド)

第11回 株式投資の方法  ★★

個人及び機関投資家の株式ポートフォリオの運用について、その分類、代表的な方法、いい方法、ダメな方法を含めて、もいくつかのアイデアと具体的な方法を説明します。
(PER、PBR、バリュー、グロース、アーニング・サプライズ、アノマリー、マーケット・タイミング、チャート分析、時系列分析、ファンダメンタル分析、アナリスト、最適化、シャドウ・インベスティング、イベント・ドリブン)

第12回 個人と機関投資家の運用プロセス  ★★

投資信託、年金基金など機関投資家の資産運用のプロセスや運用評価の方法を概説し、これを個人の資産運用と比較することで、個人の資産運用プロセスに関する復習を行います。
(ベンチマーク、基本ポートフォリオ、運用プロセス、運用哲学、シャープ・レシオ、インフォメーション・レシオ、受託者責任、成功報酬、ヘッジファンド、コンサルタント)

第13回 ビジネスとしての資産運用  ★★

資産運用業のビジネス・モデルについて考えます。「そもそも運用で儲けることができるなら、他人のお金をなぜ運用するのか?」という疑問からスタートして、資産運用業がどのようなサービス業であって、ビジネスとしては何がポイントなのかを考えます。
(マーケティング、ポジショニング、エージェンシー関係、情報の非対称性、オーバー・コンフィデンス、成功報酬、宗教法人)

第14回 バブルと資産運用&予備日  ★

全体の補足解説、質疑応答、試験問題の説明、などに充てます。
余裕があれば、「バブル」について説明したいと思います。

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