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役員報酬と投資分析
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

役員報酬と投資分析

2010/7/2
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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日本の経営者は意外に高額報酬だ

「1億円以上は個別開示」という亀井前金融大臣のツルの一声で決まった方針に基づいて、3月期決算企業の役員で、報酬が1億円を超えるケースが個別開示された。東証一部上場で6月30日までに確認できたケースで、1億円以上の報酬を公開したケースは1百社、2百人をそれぞれ少し超えた。

事前の段階では、どこそこの経営者が1億円を超えるか超えないかが話題になっていたが、2億円を超えるケースがざっと数えただけで30件以上ある。

これまで、米国と比較して、日本の経営者の報酬は安いということが強調される場合が多かったように思うが、蓋を開けてみると、それなりの額を貰っているなあ、ということが分かった。「格差」の問題などにことさらに結びつけて考えるべき問題ではないと思うが、過去十年くらいにわたり、従業員への給与支払額がほとんど伸びない中で、経営者や幹部社員に対する報酬水準は着々と上がっている印象だ。

公開された報酬の中身は、ストック・オプションによるものは少なくて、基本報酬が3分の2程度を占めているようだ。つまり、安定的な報酬として貰っている部分が多いので、1億円(約110万ドル)、2億円といっても、欧米の経営者に対して遜色のある金額ではない。基本報酬部分でこれだけ取るというのは、国際的に見ても、なかなかの厚遇だ。

もっとも、オーナー経営者の配当収入や起業に成功した経営者の株式売却益の金額を思うと、今回開示された人々の報酬を大きく上回るケースが少なくない。お金の問題でも、上には上がいるものだ。

ただ、日本では、数を考えると、企業に勤めるサラリーマンが多いわけだから、今回、企業勤めでも出世すればそれなりの高額報酬が貰えることが分かったことは、いいことではないだろうか。多少は夢が持てるのではないか。個人的にはそう思う。

情報開示としては不十分

一方、株主の立場や投資家の立場から考えると、今回の情報開示は、興味深いけれども不十分だと言わざるを得ない。

不足な点が二つある。

先ず、各企業が役員の報酬をどのように決めているのか報酬額の決定基準がはっきりしていないことだ。役員の報酬が、利益に連動するのか、過去の実績や社内の相対評価に応じて決まっていて安定的なのか、ということは、役員個人の判断の傾向に大きな影響力を持つはずだ。

簡単に言うと、利益連動性が高い場合は、報酬が利益に連動するコールオプションのような性格を持つので、この役員はプロジェクトを選択する際に、リスクの大きなプロジェクトを好むはずだ(ボラティリティーが拡大するとオプションの価値が上昇する)。これは、傾向として、企業に社債や融資の形で債権を持っている人には不都合だが、株式の保有者にとっては好都合な傾向だ。

米国の経営者の報酬は、最初は利益に連動して、その後自社株の割り当てやストック・オプションの付与など株式性の報酬が増える形で拡大していったが、これは、全体像として、集団としての株主が経営者を買収することに成功した動きだと解釈できる。

ただし、サブプライム問題の発生から金融危機に至る一連の流れで分かったことは、こうした利益に連動した成功報酬型の報酬のリスク拡大効果がバブルを作る上で重要な役割を果たしたことだ。実際には、金融界の強力なロビー活動で実効性のある規制になっていないようだが、金融マンの報酬が規制すべき対象として注目されたことには、十分な理由がある。

投資家の立場で企業を見る場合、役員の報酬システムが変化した場合に、企業の行動やひいては株式の価値に変化が現れることは十分考えられる。また、報酬のシステムを変える際には、当事者達にとって好都合な変化の可能性が大きくなっていることが予想できる。つまり、役員の報酬システムの変更は重要な投資情報なのだ。

しかし、単純に報酬の額だけを見ていたのでは、こうした変化は分かりにくい。

このように考えると、1億円に満たない役員報酬についても情報が欲しくなる。取締役が株主の付託を受けて経営に当たるのが、今日の株式会社の企業統治の基本だが、この際に、たとえば経営執行のトップの暴走に歯止めを掛けるべき取締役がどのような報酬を貰っているかについては、社外取締役も含めて知っておきたいところだ。

今後充実していくことを期待したいが、今回の情報開示は、内容的にも、範囲の上でもまだまだ不足であり、中途半端だった。

インサイダー(内部者)の株の動きと一緒に分析したい

株式投資の分析にあって、米国では、以前から、インサイダーの株の動きが注目されてきた。「インサイダー」といっても違法なインサイダー取引のことではなく、創業者一族や大株主、あるいは企業の幹部といったその企業の意思決定の「内部者」の株式の動きだ。

大まかに言って、彼らが自分の持ち株を売るということは、個人的な事情でキャッシュが必要な場合ももちろんあるが、傾向として、業績や株価の先行きに対して自信がない場合が多い。逆に、内部者(=インサイダー)の株式保有が増えている場合は、企業の先行きに強気である場合が多い。

つまり、内部者の株式の動きや、役員の報酬システムの変化には、今後の企業の動向に関する内部者からのシグナルが含まれている公算が大きい。

取締役の報酬に関しては、内容的にも範囲の上でも、より一層の開示を求めたいが、こうした情報を単に「誰がいくら貰っているのか?」という下世話な興味ばかりでなく、こうした企業の内部情報を投資の分析にもつなげていくことが期待される。

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