この運用方法は機関投資家の運用としてはなかなか具合が良かった。TOPIXに対する推定リスク(年率標準偏差%)の2倍以上のアクティブ・リターンが出ることが多かったし、マルチファクター・モデルのポートフォリオ分析機能を使って分析すると、銘柄選択効果の貢献が大きく出て見栄えが良かった。

信託銀行のファンドトラストの枠組みでこの方法を使った運用をセールスして、3件ほどファンドを受託した。うち2件は実際に運用を開始してまずまず期待通りの結果が出た。もう1件は「マーケットの環境が悪いから、しばらく運用スタートを見合わせましょう」と顧客にアドバイスして株を買わないままキャッシュで返した。その間平均株価は下がったので、結果的に、顧客にとって良かった。マーケット・タイミングそのものに関するアドバイスをするのはファンド・マネジャーにとってリスキーな行為であり、ある意味では過剰な親切だったが、幸い「結果オーライ」だった。

90年代に入って、年金合同口(信託銀行のファンドで複数の顧客の資産をまとめて運用する)の株式運用を担当した。

この時にも、このストック・ピックの方法は使ったのだが、運用金額が大きくなってきたこともあり、マルチファクター・モデルを使ったバリュー投資(割安株投資)を併用した。最初に担当したファンドは300億円くらいの残高のファンドだったが、確か300くらいの銘柄を持っていた覚えがある。もちろん、アクティブ・ファンドであり、勤務先の信託銀行の合同口の中では一番アクティブ・リスクが大きかった。「銘柄数が100を超えるとほとんどインデックス・ファンドだ」というようなことを言う人(素人投資家や学者や時にはプロも)がいるが、嘘である。このファンドも2年担当したが、ベンチマークに負けた年はない。

翌年になって、600億程度の資金を投入する大型のファンド(年金信託合同口)を設計した。今度は、リターン・リバーサル(過去の相対的なりターンが劣る銘柄の将来の相対的なリターンが高い現象)とバリュー効果の組み合わせで運用するものだった。リターン・リバーサルは回転率を考えて2カ月程度(複数の期間を合成した)のリターン・リバーサルになっていたはずで、各銘柄のβ値の効果を調整したリターンのリバーサル効果を計算していたと思う(記憶が曖昧だ)。

基本的に毎月リバランスするのだが、リターン・リバーサル効果とバリュー効果の合成の具合はマーケットの様子や売買コストを見ながら配合を変えていた。

このファンドも対ベンチマークでは上手く行った。私が信託銀行を辞めて、ひきついだ担当者が上手くやってくれて、その後何年か好結果が出て、資金が集まって大きくなったと聞いている。

振り返ってみると、それほど長期間、運用担当者をやっていたわけではないが、色々な戦略を試して、ベンチマークに負けた年がなかったのは、幸運だった。決して、自分のアクティブ運用で嫌な思いをしたことがあったから、今になって「インデックス・ファンドがいい」と言っているわけではない。

もっとも、自分の運用がベンチマークに負けていても全くおかしくなかったと思っているし、また運用したらベンチマークに勝てるだろうと思っている訳でもない。再び運用するチャンスがあれば、ゲームに勝とうとして頑張るだけだ。

(3)アクティブ・ファンドに期待すること

私は、現在ベンチマークとしてインデックス・ファンドに利用されている株価指数がポートフォリオとしてベストであり素晴らしいと思っている訳ではない。

一般論として、ではなく、個別の状況にあってアクティブ運用にも十分な可能性があると考えている。ただ、その可能性を試してみるとしても、アクティブ運用の投資信託が平均的に取る年率1.5%といった信託報酬は明らかに「取りすぎ」であり、ビジネスとしていささか「品がない」と思っている。

インデックスを改良するという運用改善の方法もあるが、アクティブ運用を安価に提供する方が本来は自然ではないだろうか。ファンド・マネジャーにかかる負担も、必ずしもアクティブ運用の方が大きい訳ではない。運用会社内のリサーチを実のところ利用しないファンド・マネジャーも多いし(私もその一人だった)、利用したからといって運用成績が改善するものでもない。インデックス運用の方が、銘柄数が多くなるから、システム的な負荷も大きい。

アクティブ運用のフィー(手数料)がかくも高いのは、一重に運用業界側の商売の都合だ。大衆向けのアクティブ運用の価格破壊を期待したい。