企業を調べるほど、人の息吹が感じられるから興味深い
もう1つの「企業を調べれば調べるほど、人の息吹が感じられて興味深い」という点についてみていきましょう。
企業は調べれば調べるほど、人の念い(おもい)が動かしていることが感じられます。中小企業においては、特に社長の影響力が大きく、社長が交代することで会社がガラッと変わったりします。
このため私がまず着目する点は、社長が何を考え、どのように会社を導こうとしているかです。それを調べていった結果、社長の言動に人徳が感じられようものなら、私はその会社を大好きになったりします。
例をあげてみましょう。
ある企業は、中期経営計画の中に売上高や利益の目標といった数字が全く出てきません。
何が書かれているのかというと、全社員が考える集団となるように、現場での業務改善や工夫などの気づきを提案する「ヨクスル」という制度を設けたり、「品質OK?カード」で指摘し合える風土をつくったり、社員同士が「ありがとう」の気持ちを伝えるスマイルカードを展開していたり、全社清掃活動や、読書会、そして人間力研修の話だったり、全体として人間力を高めることが書かれています。
ここまで徹底されると逆にお見事といえるでしょう。「社員一人ひとりが人間力を高めることで、会社が強くなり、お客様から信頼される。社員も誇りを持てる」という信念が、この会社の根底にあることがひしひしと感じられ、私自身、とても共感できます。
また、ある企業の社長(現在は会長)は、前の会社にいた50代のときに上場を目指している会社に口説かれ、悩みはしたけれどもそのご縁で会社を移り、無事に上場も果たし、9年後に社長になります。
関西出身で地元の人たちからの人望も厚く、県人会などの集まりにおいて役員にもなり、「地元を応援したい、盛り上げたい」という地元への貢献の思いから、会社の株主優待に地元の名産品を加えることを考えます。それに対し、他の役員も「それはいいね!」と賛成し、実現。人と人とのつながりの中で生きていることが感じられ、とても感銘を受けます。
調べれば調べるほど、人の息吹が感じられ、会社を支えているのは「人」であることを改めて思います。その人間模様を見ることはとても楽しいですし、興味を持ち、実際に投資をした企業が成長していくのはとてもうれしいことです。
一方で、先日、大企業で起こった検査不正問題。残念ではありますが、何回も不祥事を繰り返しているということは、「人として」の部分が欠けていると言わざるを得ないと思います。
厳しい言い方になりますが、小手先の対策ではなく、人としての教育、人間力を高める根本的な取り組みをしない限り、私は変わらないと思います。
共感できる企業を応援し、一方で、「人として」に反している企業には厳しく叱咤(しった)激励する。このような視点から投資をする人が増えると、世の中はより良くなっていくのではと思います。
日本企業も捨てたものではありません。共感できるキラリと光る企業を見つけ、その企業を株主として応援し、企業の成長とともに自らの資産も増えていく。そんな世界を是非つくってみてはいかがでしょうか?