はじめに
今回のアンケートの集計期間は11月30日(月)~12月2日(水)です。前週末27日(金)には14年ぶりとなる急激な円高が進行して1ドル84円台にまで突入、日経平均株価もあわや9,000円割れかと思われましたが、一方でドバイの信用不安問題からドル・キャリー取引(ドル売り)の巻き返しが入り円高が一服、そして政府日銀からも何らかの金融緩和策などの円高対策が発表されるだろうというような期待感も混ざるなかで行われた結果です。市場は結局この週に日経平均株価が10,000円台を回復して終わるという急展開・急回復を見せましたが、個人投資家の見通しは弱気論からまだ回復していないようです。
さらに言えば、ドバイ問題、米国商業用不動産問題など、ちょっとネガティブ・トーンの話題が多くなってきた気がしています。
楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆
1.日経平均の見通し
個人投資家の見方「再び弱気論台頭、3カ月先の弱気見通し水準は2月23日以来の水準と相当冷え込んできた」
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Q1:11月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △28.10
(10月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △12.15) -
Q2:11月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △13.65
(10月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +0.92)
今回の基準日となった2009年11月30日の日経平均株価の終値は9,345.55円です。前回10月26日実施時点との比較で言えば、ちょうど日経平均株価は1,000円下の水準ということになります。さんざん私もメルマガの方では弱気論を称えていますので、足元の株価の下落自体には驚きはなかったのですが、3カ月先の見通しが今年2月23日を基準日に行ったアンケート結果とほぼ同水準であるということに、正直驚きを隠せません。
なぜなら、当時の状況は世の中全般がかなり悲観の極みになっていた頃であり、その後、3月10日に日経平均株価は最安値7,054.98円をつけに行く局面だからです。このアンケート実施後、事実は、2日後に日経平均株価は10,000円を回復するのですが、個人投資家の多くの方が来年2月に向かって、あたかも2番底を株価がつけに行くような感覚で先々をご覧になっているということです。何がそこまで見通しを暗くしているのか、それが日本株の人気凋落傾向(「4.今後注文する投資商品」参照)にも影響しています。
ドバイの信用問題はいったん鎮静化しました。日銀が10兆円の追加的資金供給策を発表して金融緩和姿勢を鮮明にし、円高対抗策を講じる準備があることを市場へ伝えたのが好感されてドルも反発、為替は1ドル90円台の水準を回復しました。しかし、市場に根強くある現政権の経済政策に対する不透明感が見通しを暗くしています。
そして、もうひとつの理由は、次項の為替相場の見通しにもあるのかもしれません。
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
11月30日 | DI=△20.18 | DI=△3.90 | DI=+6.42 |
10月26日 | DI=+10.73 | DI=+20.80 | DI=+33.44 |
調査時点の円/ドルは86.14円、円/ユーロは129.72円です。対ドルが5.69円、対ユーロが8.35円の円高ということになりますが、このDIの結果を見る限りにおいて、個人投資家の皆さんは引続き、さらなる円高を考えているということになります。
じつは前回のアンケート結果ではドルに対しても、ユーロや豪ドルに対しても過去にない水準で円安に票が集まっていましたので、その意味においては「外れた」ということになるのかも知れません。またさらに言えば、だからこそ円高が進行する過程で、ポジションの「投げ」が「投げ」を生んだというような流れで円高に弾みがついたという穿った見方も出来ます。
今回はこの円高見通しが株価の先々の見通しに対して影を投げ掛けているとみています。確かに株価は84円台を見た円高から90円台に戻る為替市場を見ながら、一気に買い戻しが進んだともいえますが、再び88円台などをみるにつけ、徐々にまた弱含んできているのも事実だからです。今は為替が株価の先行指標となっており、当面は為替の動きから目が離せないように思われます。
3.今後注目する投資先
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 16.74% | 18.30% | ↓ △1.56% |
EU諸国 | 9.52% | 8.15% | ↑ 1.37% |
ブラジル | 47.82% | 52.33% | ↓ △4.51% |
ロシア | 9.86% | 10.98% | ↓ △1.12% |
インド | 45.18% | 44.93% | ↑ 0.26% |
中国 | 55.50% | 55.24% | ↑ 0.26% |
中東・北アフリカ | 5.96% | 5.91% | ↑ 0.06% |
東南アジア | 19.95% | 19.88% | ↑ 0.07% |
中南米 | 10.21% | 9.65% | ↑ 0.56% |
東欧 | 3.90% | 4.58% | ↓ △0.68% |
さすがにブラジル人気も一服でしょうか。といっても、まだ引続き47.82%もの高水準であり、また中国の人気は根強いものがあります。新車販売台数だけ見ても、3カ月連続で世界一となり、年間で1300万台を超えようかという勢いです。その意味ではインドの自動車市場も発展しているわけですが、やはり3カ月ぶりにプラスに転じ45.18%という高水準です。ロシアの人気低迷が目立ちますが、大きな流れは活気ある新興市場に引続き向かっているようです
4.今後注目する投資商品
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 66.17% | 67.72% | ↓ △1.55% |
外国株式 | 32.91% | 32.36% | ↑ 0.55% |
投資信託 | 26.95% | 29.28% | ↓ △2.33% |
ETF | 18.69% | 22.38% | ↓ △3.69% |
FX(外国為替証拠金取引) | 23.97% | 21.96% | ↑ 2.00% |
国内債券 | 6.42% | 7.82% | ↓ △1.40% |
海外債券 | 11.81% | 14.23% | ↓ △2.41% |
金 | 21.79% | 20.05% | ↑ 1.74% |
原油 | 6.42% | 9.15% | ↓ △2.73% |
商品 | 5.28% | 5.57% | ↓ △0.30% |
REIT | 9.29% | 9.07% | ↑ 0.22% |
CFD | 5.05% | 5.57% | ↓ △0.53% |
今回は前回と真逆で、ほとんどすべての投資対象について人気が離散したというような印象を持ちます。健闘しているのはFX(外国為替証拠金取引)と金。どちらの市場もこのところ大きく動いているという共通項がありますが、ボラティリティがあるところに収益チャンスがあるということの証明かも知れません。
今月注目度が下がった投資信託、ETF、そして海外債券については前回ブラジル人気などを反映して急騰した部分のほぼ半値押し。なので、そんなに問題はないかと思いますが、原油は2カ月連続の下落です。金価格の高騰は見込むものの、原油価格についてはコンサーバティブな見方が広がっているということと思われます。
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。
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