はじめに
前回実施した楽天DIで「予想以上に個人投資家の強気見通しは膨らんでいる」ことをレポートしましたが、市場は正にその通りに日経平均株価の10,000円台大台回復を示現、この楽天DIのデータの有為性を垣間見た気がしました。昨年10月に始めて今回が10回目、時系列な解析がだいぶ意味を為すようになったのは明らかであり、これからも皆様にご協力をお願いしながら、よりお役に立つようなものにしていきたいと思っております。
楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆
1.日経平均の見通し
個人投資家の見方「短期的にはやや調整を予見し慎重姿勢になるも、中期では上値を見ている。全体としても時系列的には強気な部類」
Q1: 6月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △1.85
(5月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +6.58)
Q2: 6月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +8.42
(5月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +17.96)
今回の基準日となった2009年6月29日の日経平均株価の終値は9,783.47円です。前回、このDIが1カ月、3カ月ともに7カ月振りにプラスに変わり、弱気と答えた方の比率は1カ月、3カ月ともに集計開始後の最低値となった通り、日経平均株価は6月12日に見事終値ベースで10,000円の大台を回復、久し振りに見る5ケタの日経平均株価に感激したものです。それから2週間あまり、指数的な達成感も手伝って再び10,000円台を割り込んだ段階でのアンケートのお願いは結果が気になるところでしたが上記の通りです。
短期1ヶ月先については再びマイナスに転じ、3カ月先についても再び一桁台に戻ってしまいましたが、前者のマイナスについても絶対値的にはわずかに1.85であり、昨年来のマイナス30、40という水準に比べれば遥かに小さいと言えます。DIの数値的な変化を詳細にみると、短期、長期ともに強気が減って中立になる割合よりも、中立から弱気に変わった割合の方が目立っており、今回の結果は推察するに、元々慎重に見ていた人が10,000円台回復を見て、やや弱気に傾いたという感じに思われます。
その一つの根拠として「Q.5 今後注目する投資先」に対する結果で国内株式に対する注目度が昨年11月4日調査の78.78%に肉薄する77.95%と、歴代第2位に上昇しているからです。これは最近の東証マザーズやJASDAQ総合など中小型株の堅調な地合いを反映した結果でもあり、日経平均株価の見通しは、当然のことながら日本株全体への個人投資家の見方を反映はしていないということだと思います。
ここから見えてくることは、今後は当面「個別の材料株物色」が中心になる可能性が高いということですが、これはメルマガ「大島和隆からの手紙」の6月29日号及び7月6日号でも触れた「これからアクティブ運用が面白くなる」という私の見方とも一致するものだと考えます。
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
6月29日 | DI=△15.15 | DI=△6.23 | DI=6.73 |
5月25日 | DI=△15.72 | DI=2.00 | DI=9.30 |
調査時点の円/ドルは95.52円、円/ユーロは133.90円です。前回ドルに対する見方とユーロに対する見方が正反対になりましたが、今回は再び対ドル、対ユーロ共に円高見通しとなりました。DIで見ると対ドルでの円高見通しは3か月連続ということになり、個人投資家の対ドルでの根強い円高見通しを裏付ける結果となったように思われます。ただ前回からの実際の為替市場の動きで見ると、この間は対ドル、対ユーロ共に円安に振れていますので、対ユーロの方が見通しにバイアスが掛かっていないと見ることも出来るのかも知れません。
3.今後注目する投資先
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 23.40% | 20.37% | ↑ 3.03% |
EU諸国 | 7.91% | 9.70% | ↓ △1.79% |
ブラジル | 23.23% | 24.70% | ↓ △1.47% |
ロシア | 11.62% | 12.67% | ↓ △1.05% |
インド | 45.62% | 52.04% | ↓ △6.42% |
中国 | 58.59% | 57.58% | ↑ 1.01% |
中東・北アフリカ | 4.04% | 5.61% | ↓ △1.57% |
東南アジア | 18.01% | 15.00% | ↑ 3.02% |
中南米 | 5.05% | 5.85% | ↓ △0.80% |
東欧 | 1.85% | 3.85% | ↓ △2.00% |
5カ月振りに米国市場の人気が戻ってきました。東欧人気はすでにランキング圏外という感じになっていますが、中東・北アフリカについても同様で、実は欧州EU諸国もアンケート開始後過去最低の水準を更新しました。一方、前回急騰したインド人気ですが、ここにきて一服、その傍らで東南アジアが票を集めています。所謂BRIC’s諸国で今回も強かったのは中国(C)だけという結果になりました。投資家はやや新興国の戻りに慎重になり始めたのかも知れません。
4.今後注目する投資商品
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 77.95% | 75.14% | ↑ 2.81% |
外国株式 | 18.52% | 27.11% | ↓ △8.59% |
投資信託 | 11.95% | 19.97% | ↓ △8.02% |
ETF | 17.51% | 19.73% | ↓ △2.22% |
FX(外国為替証拠金取引) | 27.27% | 21.25% | ↑ 6.02% |
国内債券 | 3.03% | 5.21% | ↓ △2.18% |
海外債券 | 4.88% | 8.74% | ↓ △3.86% |
金 | 19.70% | 20.21% | ↓ △0.51% |
原油 | 11.11% | 9.38% | ↑ 1.73% |
商品 | 8.59% | 6.42% | ↑ 2.17% |
REIT | 9.26% | 9.46% | ↓ △0.20% |
絶対値自体はまだまだ高いとは言えませんが、原油と商品の人気が過去最高になりました。これは日本でも商品取引について、東京工業品取引所のルールが6月に変わり、段階的に24時間取引に向かって動き出した影響を反映しているのかも知れません。
一方、伝統的な金融商品である投資信託、国内債券、外国債券の人気は過去最低を更新しています。一つの見方として「利回りもの」に対して投資家の食指が動き難くなったことを示しているとも言えます。原因としては、世界中が低金利政策を実施し金融緩和を続ける一方で、長期金利については悪い需給からの金利上昇(債券価格は下落)を見込むことも出来るため、債券投資には不向きな局面という認識があるからだと思われます。またうがった見方をすれば、投資家のリスク許容度が上昇し、モデレートなリスク商品よりも、より積極的なリスクを選考し始めたとも言えるのかも知れませんが、他の数値を見ている限り、これは安易に組み出来ないストーリーに思われます。
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。
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