節目突破日と所要期間から何が分かる?

 先週13日に発表された米国の6月CPI(消費者物価指数)は前月(8.6%)も予想(8.8%)も上回る9.1%でした。

 この40年半ぶりの上昇率を受けて、次回FOMC(米連邦公開市場委員会)(7月26~27日)で1%の利上げ期待が急速に強まり、為替はドル高となってユーロはパリティ割れを達成しました。

 ドル/円はCPI発表前の137円台前半から、翌日14日には139円前半まで上昇しました。しかし、15日に発表された中国4-6月期GDP(国内総生産)が前期比▲2.6%となったことや(前年比+0.4%)、ミシガン大学消費者信頼感指数の5~10年インフレ期待が2.8%と昨年7月以来の低水準となったことから1%利上げ期待が後退し、ドル/円は138円前半まで下落しました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)高官からも1%利上げの火消し発言が相次いだことから、その後も138円を挟んだ動きとなっています。結局、ドル/円はCPI発表前から2円超上昇し、1円戻った形となっています。

 今年前半は115円台から始まり、5円刻みの節目を次々と突破していきました。今後の参考になるヒントがあるかもしれないと思い、5円刻みの節目突破日と所要期間をまとめてみました。

  • 3月22日120円突破 115円→120円 3カ月と22日(年始~3月22日)
  • 3月28日125円突破 120円→125円 6日(3月22日~3月28日)
  • 4月28日130円突破 125円→130円 1カ月(3月28日~4月28日)
  • 6月13日135円突破 130円→135円 1カ月と15日(4月28日~6月13日)

 そしてドル高の背景であるFRBの利上げは、3月16日に0.25%、5月4日に0.5%、6月15日に0.75%となりますが、利上げ後に5円刻みの節目を突破したのは3月利上げの時、120円を突破した時だけでした。その後はFRB議長や高官の発言などによって大幅利上げ観測が高まり、利上げ決定前にその材料を織り込んで円安に動いたということがわかります。

 つまり、120円を突破した後は125円も130円も135円の節目も、利上げ期待が先行しFOMC前に突破しています。今回もFOMC前に1%利上げや、0.75%利上げをかなり織り込んだことから、今年前半の動きを参考にすると、7月26~27日のFOMCでの利上げ後に140円を目指す可能性は低くなったかもしれません。

過去の利上げの影響

 大手金融機関や著名投資家などから来年2023年に米国の景気は後退するとの見方が相次いで報道されていますが、18日、アップルも来年の景気後退に対応するため人材採用とコストを抑える計画との報道が伝わると、株価は2%超下落しました。

 これらの予測は景気後退の時期はほとんどが「来年」という見方ですが、6月以降の経済指標をみていると、時期は前倒しになるかもしれないというシナリオにも留意しておいた方がよいかもしれません。

 合わせて、過去のFRBの利上げ後のマネー収縮によって新興国からの資金流出・経済危機(*)や、バブル崩壊(**)が起きていますが、今回の急速な利上げ(7月までに4カ月で2.25%利上げ見込み、年末までに10カ月で3%超の利上げ見込み)による影響は、過去の事例を参考にするとまだ調整途中であり、夏場以降、本格的な調整が始まるのではないかと警戒を解くわけにはいきません。

 また、もし、夏場以降調整が急展開となった場合、9月以降のFRBの利上げ速度が調整されるのかどうかも注目です。

*  1994年末メキシコ通貨危機、FRBは1994年2月~1995年2月の1年間で3%利上げ
** 2000年秋ITバブル崩壊 FRBは1999年6月~2000年5月の1年間で1.75%利上げ
2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショック FRBは2004年6月~2006年6月の2年間で4.25%利上げ(小刻みの利上げで住宅バブルの沈静化が遅れた)

ECBはタカ派姿勢を貫くのか?!

 前回このコラムで触れた、ロシアからドイツに至るガスパイプライン「ノルドストリーム」が定期検査のため供給が10日間停止しています。

 欧州諸国では供給再開が予定される21日以降も天然ガスの供給量が減少または停止するのではないかとの警戒が広がっていましたが、21日に再開する見通しと19日に報じられています。

 しかしながら、ウラジーミル・プーチン露大統領が定期点検の延長を示唆との報道もあることや、前日にはロシアの国営天然ガス会社ガスプロムがドイツのエネルギー大手ユニパーなど供給契約を結ぶ複数の欧州企業に、「不可抗力」により供給を保証できないと通告したと報じられているため、天然ガス供給が遮断される可能性は払拭(ふっしょく)されておらず、予断を許さない状況が続いています。

 IEA(国際エネルギー機関)は、18日、ロシア産天然ガスの供給不安が高まる欧州に対し、ガスの消費をただちに抑えるように警告しました。

 今週21日にはECB(欧州中央銀行)理事会があります。ユーロ圏の6月CPIは前年比+8.6%と過去最高の上昇率となったことから、今回0.5%の利上げによってマイナス金利からの脱却との見方が浮上していますが、過去最高の物価高と先行きのエネルギー供給懸念という環境の中で、ECBは8月以降も利上げ継続のタカ派姿勢を貫くことができるのでしょうか。

 パリティを割れたユーロは0.99半ばまで下落しましたが、その後は0.5%の利上げ期待によって300ポイント程上昇しています。ECBが少しでもタカ派姿勢を緩めた場合、再びパリティ割れを目指すのかどうか注目です。その時、ユーロ安・ドル高に引っ張られて、ドル/円は再び139円台を目指すのかどうかも注目です。FOMC前に一波乱ありそうです。