日経平均高値から20%下落が分岐点に
株式市場では「弱気相場入り」を確認する指針として、株価指数が直近高値から20%超下落するケースがいわれます。
この「20%安」という数字の根拠を説明することは困難ですが、大幅に株価指数が調整した場合、かなりの株価支援材料や強いインパクトを伴う需給改善要因でもない限りすぐに下落を取り戻すことが難しいのは確かです。
個別銘柄の中には半値近くになるものもあり、投資家心理が冷え込むことも容易に想定できます。あながちいい加減な基準ではないと感じられます。「20%安」を超えていくかどうかは、短命(月単位)に終わる相場調整と、長期(年単位)にわたる調整相場の分岐点となる可能性があります。
コロナ禍による急落後、主要国政府による財政出動や金融当局による金融緩和が功を奏し、世界的に反発相場となる中、日経平均株価は二度の局面で3万円に到達しています(2021年春、2021年秋)。
しかし、上値追いとはならなかったことから、この段階ではざっくりと「3万円」が高値と考えていいでしょう。その場合の「20%安」は2万4,000円ということになり、3月9日に付けた終値2万4,717円53銭でもそのラインにタッチしたわけではありません。
もうひとつ、年初から米利上げが懸念され波乱局面になる前の水準(2万9,000円近辺)を直近高値と考えた場合はさらに切り下がることになります(2万3,000円近辺)。ここからは日経平均を軸にした場合、日本株は弱気相場入りしたわけではないということになります。
ただ、弱気相場回避が即、急反発を意味するわけではなく、一定期間の安値もみ合い、ジリ高というケースも考えられることから、安易な楽観姿勢は禁物でしょう。
好シナリオを見込んで早めに銘柄選択を
足元最大の懸念、米利上げに伴う株価の動きについては、引き続き注視することになります。米時間6月15日に政策金利0.75%の大幅引き上げを行ったFRB(米連邦準備制度理事会)は「7月会合でも0.5%か0.75%の利上げを行う可能性が高い」(ジェローム・パウエル議長)と述べています。
記録的なインフレ(物価上昇)の抑制に向け、異例の大幅利上げを継続する構えを崩していません。悪いシナリオでは米主要企業の業績下方修正、さらに一部ヘッジ・ファンドの破綻なども想定されます。
コロナ後の経済活動再開、ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁で進行しているインフレをうまく抑制できなかった場合は、主に米株市場が波乱となり、日本株もそのあおりを受ける可能性があります。
半面、月を追うごとにインフレが落ち着いていくようだと株式市場は好反応を示すことになるでしょう。ここで重要視されることは、遅行性のある経済指標を追うだけでなく、株価指数の下値の強弱度に敏感になることではないでしょうか。
株価が先に物事を織り込んでいくという考え方からはそうなります。ここから盛夏の時期にかけて緊張感がさらに高まる時間帯となりそうです。投資家は明確な株価反転の動きが見られる前に銘柄を選択しておくのが賢明でしょう。
ここでは、好材料を内包する銘柄、事業環境が好転している銘柄、コロナ禍からの立ち上がりが期待される銘柄など、主に「株価が安値に沈んでいない銘柄」を中心に、10万円で投資可能なものを取り上げていきます。
株価が全般出直る際には、個別銘柄についても安値からのリバウンド高が気にされることが多いですが、それよりも比較的株価が堅調(投資家の注目度が高いと見られる)な銘柄の一段高を見込むイメージです。