TOPIX、改革の狙い

 現在、TOPIXは東証1部に上場する銘柄全てを対象として数値を算出しています。ただし、近年は東証1部に上場するハードルが下がったこともあり、本来なら時価総額や流通株式数が小さいため東証1部に上場するにはそぐわない銘柄が多数上場してしまいました。

 実は、TOPIXに連動した運用をしているのは、ETF(上場投資信託)や指数連動型のインデックスファンド(投資信託)に投資する個人投資家だけではありません。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や企業年金といった大口の機関投資家も、TOPIXに連動した運用を行っています。

 しかし、上記のとおり、TOPIX連動型の投資をすると、東証1部に上場するには適さない銘柄に対しても必然的に投資することになってしまい、不健全であるという声が高まっていました。

 そこでTOPIXの構成銘柄のうち、流通株式時価総額が100億円未満の銘柄は、経過措置を経たうえ、TOPIXの構成銘柄から外すこととしたのです。

 具体的には、2022年10月から、流通株式時価総額100億円未満の銘柄は、組み入れ比率を段階的に10%ずつ削減し、2025年1月には組み入れ比率をゼロにするというスケジュールです。

 なお、流通株式時価総額100億円未満の銘柄の、TOPIX全体に対する時価総額の割合は1%ほどですので、TOPIXの指数としての連続性に対する影響は僅少です。

 したがって、個人投資家がTOPIX連動型の投資信託やETFに投資する分には、特に問題ないと考えられます。

考えられる大きな影響は「時価総額の小さい銘柄への売り需要」

 ただし、個別銘柄に目を向けると、大きな影響が生じる場合もあります。

 現在東証1部に上場し、かつ流通株式時価総額100億円未満の銘柄については相当の売り需要が生じる可能性が高いです。その銘柄数はおよそ600社ほどあると言われています。

 通常、株式投資では業績が伸びていたり、割安だったりという理由で「将来株価が上昇する可能性が高いと見込まれる」銘柄に投資することが一つのセオリーです。

 しかし、東証1部に上場しているというだけでTOPIXの組み入れ銘柄となるため、TOPIX連動型の運用資金の流入があれば、業績などには一切関係なく、その銘柄を買い、保有するという需要が生じていたのです。

 ところがTOPIXの改革により、今後は流通株式時価総額100億円未満の銘柄はTOPIXの構成銘柄から徐々に外れることになり、「TOPIX連動型の資金からの新たな資金流入がストップする」「TOPIX連動型で現在運用している資金からの売り需要が生じる」という二つのマイナス要素が生じてしまいます。

 現に、すでに流通株式時価総額100億円未満の銘柄の株価は、そうでない銘柄よりも株価がかなりアンダーパフォームしており、この動きは今後もしばらく続くのではないでしょうか。

 企業業績とは関係のないところで株価が下押しする要因が生じてしまうのは、個人投資家としてはなかなか厳しい面もありますが、決まったことは仕方がありません。

 現在東証1部に上場する銘柄のうち、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については株価が上がりにくく下がりやすい状態が当面継続する、ということをしっかりと頭に入れておく必要があると思います。

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