強まる円安けん制発言
前回お話しした日本政府からの円安けん制発言も徐々にトーンが強まってきています。3月25日、鈴木財務相は衆院財務金融委員会で、為替の急速な変動は望ましくないと指摘し、外為市場の動向について「緊張感をもって注視していきたい」とトーンを上げた発言を行いました。そして、125円を付けたことから、財務省からのトーンは一段と強くなってきました。
3月29日、神田財務官はアンディ・ボーコル米財務次官代行と最近の為替市場の動向などを議論し、「日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した」と記者団に対して述べました。
また、「過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響与えうる」とし、足元の円安も含め、緊張感を持って市場動向を注視する考えを強調し、現在の円安進行を米国も認識していることをマーケットに知らしめました。
29日、岸田首相は物価高への緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示しました。首相は「物価高が国民生活に重大な影響を及ぼすことは避けなければならない」と強調しましたが、7月の参院選を意識しているのは間違いありません。
この緊急対策に、物価上昇を後押しする円安対応策が含まれることはないかもしれませんが、円安けん制の意識が高まることが予想されます。125円を超えて、さらに円安が進むと参院選へのマイナス材料になるからです。
4月に入って、食料や日用品の物価が現実に上がってきます。一方で、4月から年金が0.4%減額することが1月に決定しています。年金受給者3,596万人にとっては、収入が減り、物価上昇によって支出が増えることになります。
また、年金減額適用は4月からですが、実際に振り込まれるのは6月15日です。参院選の日程は「6月22日公示、7月10日投開票」で調整されていることから、政府・与党は神経質にならざるを得ない状況となっています。
この年金減額を補うために、年金受給者に5,000円の給付案が浮上していましたが、野党からの批判によって白紙となりました。年金受給者の不満を鎮めるためにも、物価高への緊急対策策定に際し、物価上昇を後押しする円安が関係閣僚の頭の中でちらつくことは想像できます。
125円の水準は、今回の急上昇で一瞬しか付きませんでしたが、政府関係者にひやりとさせたことも想像できます。125円はかなり意識される水準になりそうです。