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忘れていませんか?法人税減税を
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

忘れていませんか?法人税減税を

2012/11/27
私は今、この質問を投げかけてみたい、全く異なる2つの対象があります。一つはアメリカの株式市場参加者、そしてもう一つは12月16日総選挙の立候補政党に対してです。
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「忘れていませんか? 法人税減税を」
私は今、この質問を投げかけてみたい、全く異なる2つの対象があります。一つはアメリカの株式市場参加者、そしてもう一つは12月16日総選挙の立候補政党に対してです。

まずアメリカの株式市場について。アメリカの株式相場は11月6日の大統領・議会選挙結果判明以降、半ばまでほぼ一本調子の下げとなりました。そしてこの大統領選挙後の下落の一因は、来年からのキャピタルゲイン・配当税率上昇を見越した売りによるものと思われます。確かに来年からキャピタルゲインの最高税率は現行の15%から23.8%に上昇する見込みです。そして税率の低いうちに株式を売っておこうと考える投資家は納税のため、キャピタルゲインの15%分は現金化して備えなければなりません。一旦一巡した感はありますが、まだ年末にかけては散発的にこのような売りが出てくる可能性があります。しかしこれは、今年の年末に限った特殊要因である事を忘れてはなりません。

というのは、来年は法人税が35%から28%に低下する見込みであり、企業の税引き前利益が一定であれば、キャピタルゲイン税率が8.8%上昇しても、法人税率が7%下がると、理論的には投資家の税引き後利益は殆ど変わらなくなるからです。さらにキャピタルゲイン税率が上昇するのはアメリカ在住の富裕者層のみであり、日本を含む海外の投資家や市場に多く存在する非課税のファンド等は、法人税率低下のメリットをそのまま享受する事ができます。結果的に株式市場全体にとっては恐らく、法人税率低下のメリットの方が大きい状態になるでしょう。大幅に上昇する見込みの配当税率についても、企業の財務担当者は、配当税率がキャピタルゲイン税率を大幅に上回る状態が続くと見れば、配当から自社株買いへの切り替え検討するでしょう。この結果、時間の経過と共に、配当税率上昇の影響もそれほど大きくなくなるなずです。なので、他の理由であればまだしも、キャピタルゲイン等税率の上昇を理由に株式を売っているのであれば、それら市場参加者に一言質問してみたいのです。「忘れていませんか?法人税減税を」と。

オバマ大統領が何故、法人税を引き下げようとしているのか? それはアメリカ企業の競争力を取り戻し、アメリカの雇用を回復させ、延いてはアメリカ経済を強くし、財政を再建したり、福祉を充実させたり、外交上交渉を有利にしたりするためでしょう。同様の考えから世界各国が法人税を引き下げる中、日本と並んで最高水準に据え置かれている法人税の水準を是正するためでしょう。

これが正に、私が12月16日総選挙の立候補政党に対してこの質問をしてみたい理由なのです。どの政党も景気を良くして失業率を低下させたいと思っているでしょうし、財政は再建しないといけないと考えているでしょう。福祉は充実させたいでしょうし、外交は有利に進めたいでしょう。第一、国民がそれらを願っているはずです。しかしその具体的方策として、どうして法人税の減税が公約の筆頭に挙げられないのでしょうか?

景気を良くする一つの方法は金融緩和です。日本がどれだけ金融緩和に積極的かは為替レートを見れば明らかです。そして為替レートが円高に振れているという事は、日本は「相対的に」世界で最も金融緩和に消極的だったという事です。金融緩和に最も消極的だったから景気も良くならなかったし、株式相場も世界で最もパフォーマンスが悪かったのです。「精一杯やっている」というのはちょうど、親に勉強しなさいと言われた子供が、成績の順位が上がらないのに「一生懸命勉強している」と口答えしているのに似ています。他の子供は、海外の国々は、もっともっと頑張っているのです。

企業が資金を調達しているのは銀行からばかりではありません。多くの企業にとって、株式は有力な資金調達の手段です。銀行から借りるお金のコストは金融緩和によって下がりますが、株式で調達するコストはどうしたら下げられるのか? (私はこれを「資本の金融緩和」と呼んでいます。資本の金融緩和(2011年2月4日))一つの方法は法人税率を引き下げる事です。数%の法人税率の引き下げは、金利を0.5%や1%引き下げるのとは比べ物にならない、企業に大きなメリットをもたらす事になるでしょう。さらに日本の法人税率が低いとなれば、海外の企業も日本にビジネスを進出させるようになり、これまでに無かった、または失われていた新たな雇用や税収につながっていくでしょう。

逆に法人税がこのまま据え置かれるとどうなるか? 来年アメリカが法人税引き下げを決めた瞬間、日本は最も法人税の高い先進国となり、日本企業はさらに国際競争力を失っていくでしょう。金融緩和同様、世界と横並びで実行してやっとイーブンという状態ですから、何もやらないだけで自然とマイナスになってしまいます。いくら立派な公約を挙げようと、企業が競争力を失うので、雇用は増やせないし、給料は上げられないし、景気は良くならない。税収が上がらないので、素晴らしい公約も実行できなくなるでしょう。

そこでやっぱり各政党に聞いてみたいのです。「忘れていませんか? 法人税減税を」と。

(2012年11月26日記)

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