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財政・金融政策総動員を!がんばれ日本
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

財政・金融政策総動員を!がんばれ日本

2011/3/16
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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東日本大震災において被害に遭われました方、心よりお見舞い申し上げます。
また救助活動に関して、これからも数多くの奇跡が起こる事をお祈りしています。

私は1993年にNYに来て以来、同時多発テロや金融危機という、100年に一度と言われる大きなショックを目の当たりにしてきました。しかし結果的に、アメリカはそのいずれのショックも乗り越えてきています。大まかに言えばアメリカがそれらのショックを乗り越えてくる事ができたのは第一に、思い切った政策のおかげであり、第二に市場の力を味方に付ける事が出来たから、だと思っています。

今回の日本の災害は100年に一度どころのショックではありません。しかも運の悪い事に、財政的にも金融的にも日本に余裕のない時に起こってしまいました。しかしだからと言って日本がこのショックを乗り越えるチャンスがない訳ではありません。ただ、政策的に間違いの許されない状況にある事は確かだと思います。

私がNYに居て常に誇りに思うのは、日本人は世界からとても尊敬されている、という事です。阪神淡路大震災という非常事態の際にも暴動や窃盗は起こらないし、計画停電が実行されればきちんとそれが遵守される。アメリカで東日本大震災に対する募金運動が活発化していますが、その冒頭で、「日本はどの国で災害があっても、いつも最も多額の募金をしてくれた。今度は我々が恩返しする番だ。」との文言が並んでいます。このように言われる国は世界中見回しても他には無いでしょう。しかし、率直に申し上げてここ20年、経済、特に金融に関してはかなり遅れを取っていると言わざるを得ません。むしろ正解と正反対の事をやってしまう事もしばしばです。しかし今回は間違いは許されません。好むと好まざるとにかかわらず、世界経済は市場メカニズムの上に動いています。そこで今回は23年市場に携わってきた者として、「市場を味方に付けられる」政策の提言をまとめておきたいと思います。

第一に、一時的に財政を大胆に緩和すべきです。国の債務が膨らんでいようと、今は躊躇している場合ではありません。このような大きな危機を目の当たりにし、人々の心理は極端に萎縮してしまっています。消費や投資は控えられ、貯蓄や現金が選好されます。ご存知の通り、リセッションは人々が貯蓄を選好する事から起こります。このような時、どのような政策を取るべきか。誰もが消費を控えたいと思う中、それでも消費してくれる人、そして誰もが投資を控えたいと思う中、それでも投資する人を優遇する政策を取らなければなりません。具体的には一時的な消費税減税、投資優遇という点では法人税減税や投資減税、借入利息の税控除等が考えられるでしょう。民間の消費、投資が不十分であれば、代わりに政府がその役割を担わなければなりません。東日本の復興を目的として、2009年にオバマ大統領が実施したような公共事業も考えられるでしょう。市場を味方に付けるには、一時的にでも市場にショックを与えるくらい規模を大きくし、非常事態が去って終了しても余韻が残るくらいのものでなければなりません。

反対に、やってはならないのは増税です。実際先日、一部マスコミから増税の話が持ち上がっているのを聞いて驚いてしまいました。これこそ正に、「正解と反対の事をやってしまう」典型だと思います。増税などしたら、負のスパイラルが生まれ、立ち直れるものも立ち直れなくなってしまいます。今の日本に、このような間違いをおかしている余裕はありません。

第二に財政を緩和しても、円高になってしまったらその効果が相殺されてしまいます。例えば財政政策が効を奏して復興需要が生まれても、人々が輸入車を買ってしまったら効果は半減です。そのために金融も大胆に緩和されるべきです。その意味では、週明けの日銀の迅速な対応は非常に良かったと思います。しかし今回の緊急事態下では、今後も放っておくと勝手に円高が進行してしまうでしょう。そこでもう一歩踏み出し、大胆に国債を買い増す政策が必要だと思います。

アメリカは2009年2月、70兆円に上る景気対策を成立させると共に、150兆円に上る国債及び国債に準ずる債券の購入を決定しました。70兆円国債を増発して、それを中央銀行が買ったのですから、ドルを印刷したのと同じです。これがQE1です。次に2010年秋、今度は50兆円に上る国債購入を決定すると共に、40兆円に上るブッシュ減税の延長を決定しました。同じく、ドルが印刷されたのと同じです。これがQE2です。合計100兆円以上ドルが印刷されて、ドルが安くならない訳がありません。裏を返せば、円高が進んできたのは当然なのです。アメリカは金融危機という100年のショックを乗り越えるために為替を利用してきたのです。

しかし日本はこの緊急事態を前に、もうドル安を容認しておく余裕はないでしょう。今度は日本が為替を利用させてもらう番です。円高が止まるまで、いやもっと積極的に、リーマンショック前のドル・円120円を目指しても良いと思います。日銀が(米国債でなく)日本国債を購入すべきです。日本には財政的にも金融的にも余裕はなくても、幸い為替には余裕があるのです。そして市場を味方に付けるには、大胆に、大きな規模で実行する事が重要です。上記のアメリカの金額を見れば、現在日銀が実行しているような5兆円とか10兆円という単位ではない事は明らかです。

近々日本国債が直面する可能性があるリスクとして、国債の格下げが挙げられます。しかしよく考えてみて下さい。万が一の事があったとしても中央銀行が、保有している国債に関して自国政府に対してデフォルト(債務不履行)を宣言するような事態が有り得るでしょうか?政府には徴税権もありますし、いざとなれば通貨発行権も持っています。テクニカルな面を別にすれば、中央銀行が保有している国債に関しては実質的なデフォルトという事態は考えられません。今回財政を緩和して国債発行額が膨らんでも、その分日銀が購入する限り、それが理由で格下げされる事は考え難いと思います。むしろその場合は格付け会社の判断自体が疑われる事になるでしょう。市場もそのくらいの事は分かっていると思います。

神様が苦難を与えるのはそれを乗り越えられると信じる相手にのみです。今回はあまりにも厳しい苦難ですが、皆で知恵を出し合い、誤った政策に陥らなければ、必ずV字型の回復に恵まれると信じています。同時多発テロ後も、そして金融危機後も、実際にアメリカがそうであったように。

(3月15日記)

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