第3に、株式のバリュエーションです。ブラックマンデー30周年を前にしてよく目にした論調の1つは、「当時のPER(株価収益率)は16倍、現在は20倍」というものです。しかし、当時の米10年物国債の利回りは8%~10%台の推移でした。PER 16倍というと益利回りは6.25%(1÷16)。リスクを取らなくても8%以上の利息が得られる時代に、株式は明らかな割安だったわけではありません(それでもその後の10年間、株式に投資していたほうがずっと高いリターンを生んでいますが)。

 一方で現在、米10年物国債の利回りは2.3%という時代です。配当利回りだけで2%近いだけでなく、益利回りは5%と米国債利回りの2倍も出る状況です。さらに来年に向けての増益と、予想される法人税減税を勘案すれば、株価収益率は16倍台に低下、益利回りは6%近くに上昇します。もっとも、このような株式が割安な状況は今に始まった話ではなく、金融危機後ずっとです。

 これは、投資家の多くが金融危機を境に株式への投資というものに対して、必要以上のリスクを感じるようになったのが主因だと思います。ここにきて株式相場が上昇してきたので徐々に警戒を解くようになってきたが、とりわけ債券との比較ではまだまだ割安な状況が続いている、ということでしょう。

 株式というのは「ビジネスに関するあらゆるリスクを担う」ことがそもそもの役割です。当然ながら、今後もあらゆるリスクを反映して大きく上下する運命にあるでしょう。しかし、現代の投資を考えるにあたってリスクの中にブラックマンデー時のような状況まで想定するのはかなり無理があると思います。何よりブラックマンデーであっても、金融危機であっても、結局長期的にはリスクを担った投資家にご褒美がもたらされている事実を忘れてはなりません。