日経平均は30年半ぶりの3万円大台を一時回復
直近1カ月(2月15日~3月15日)の日経平均株価は0.8%の上昇となりました。2月15日には1990年8月以来となる3万円の大台を回復し、翌16日には一時3万714円の高値をつけています。その後は2万8,308円まで一時調整しましたが、3月15日にかけてあらためて上値追いの展開になり、再度の3万円台乗せをうかがう状況となっています。
米国の景気刺激策成立に対する期待、新型コロナウイルスワクチンの普及期待などが、引き続き相場を押し上げる材料となりました。3万円台乗せ後は、達成感も加わった過熱警戒感の高まり、米国長期金利の上昇を受けて、売りが優勢となる局面がありました。
国債入札の不調で米長期金利が1.6%台にまで上昇したことから、26日には日経平均が1,200円を超える下げ幅となりました。この下げ幅は2016年6月24日以来の大きさになっています。
3月に入っても、金利上昇を映したグロース株売りの流れが続き、4日には一時800円超、5日にも一時600円超の下落と、荒い値動きが続きました。ただ、その後は長期金利の上昇も一服し、日経平均も落ち着きを取り戻してきています。
この期間の物色としては、長期金利の上昇を背景に銀行株が強い動きとなりました。また、グロース売り・バリュー買いの流れが続いたことで、海運や鉄鋼の主力銘柄がバリュー株の代表として買い進まれました。
一方、情報通信やサービスセクターの中小型株で弱い動きが目立ち、キーエンス(6861)、日本電産(6594)、レーザーテック(6920)など成長期待の高いハイテク優良株も売り込まれました。
個別では、大容量全固体電池の開発報道で日立造船(7004)が急伸、楽天(4755)は日本郵政との資本提携が好感され、リコー(7752)や三井物産(8031)は大規模な自己株式取得実施の発表で買われました。また、ビットコインの時価総額1兆ドル突破を受けて、マネックス(8698)など仮想通貨関連銘柄も人気化しました。
金利上昇への警戒感が続く、相対的には引き続きバリュー優位の展開に
3万円大台乗せで一服感が強まった日経平均ですが、目先は引き続き上値の重い展開も想定されます。米国10年債利回りは足元で再度1.6%台に乗せてきています。3月16~17日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、緩和的な金融政策の長期化が見込まれる一方、足元の長期金利の上昇が容認される状況となれば、当面は金利動向に対する警戒感が続いていくことになりそうです。
また、18~19日の日銀金融政策決定会合は、金融緩和の点検結果が公表されるため注目度が高い状況にあります。とりわけ、ETF(上場投資信託)購入策は抑制方向となる可能性が高く、織り込みが進みつつあるとはいえ、日経平均株価にはマイナス材料とされてくるとみられます。
国内では、1都3県における緊急事態宣言の解除が見込まれるなど、ポジティブな材料もありますが、グロース株や日経平均寄与度の高い銘柄の先行き不透明感が強い中、指数の上昇は限られることとなりそうです。
毎年4月の初旬には国内機関投資家の益出し売りが話題になります。日経平均が3万円台を回復している状況下、今年はこうした益出し売りのボリュームが例年以上に増加する可能性もあり、3月年度末にかけては、こうした需給要因も警戒されることになりそうです。
いずれにせよ、足元の高い株価水準には、世界的な大規模金融緩和効果が大きく影響しています。米長期金利の上昇、日銀のETF購入策変更などは、現在の高株価が成り立つ前提の変更をこの先示唆するものとして、警戒しておく必要があると考えます。
足元では村田製作所(6981)に投資判断格下げの動きが観測されました。買い推奨オンリーだった銘柄であり、こうした見方の変化はアナリストの高評価銘柄には続く可能性もあるでしょう。
主力のグロース株にはこのタイプの銘柄が多く、今後はアナリストの投資判断格下げの動きなども、グロース株のリスク要因となりそうです。
一方、2022年3月期業績は総じて回復に転じる銘柄が多く、それに伴う増配の動きなども増えるものとみられます。3月末の配当権利落ち後も、高利回りのバリュー株などが相対的に優位になると判断します。