2.コロナの影響を受けた産業とマーケットの関係
新型コロナウイルスの直撃を受けた産業は大変なダメージを受けたが…
新型コロナウイルスの影響は特定の産業に色濃く出ています。図2は米国での昨年の失業者(2019年12月の民間就業者数と、2020年12月の民間就業者数の差)の発生状況を見たものですが、非常に顕著に表れています。昨年1年間で、米国の民間雇用は789万人失われました(なお、最も厳しかったのは昨年4月ごろで、当時は2,200万人近い雇用が失われ、その後回復してこの水準となっています)。その内訳を見てみると、宿泊、飲食業界で約300万人(全体の38%)、芸術、娯楽、レクリエーションで約73万人(同、9%)、教育サービスで約43万人(同、5%)と、これらの産業で失業者全体の半分以上を占めています。
こうした窮状を救うため、FRB(米連邦準備制度理事会)は大規模な金融緩和を実施し、政府は大規模な財政出動を行なってきました。しかし、こうした産業は株式市場では存在感が小さく、時価総額が占める割合は全体の5%もないのです。社会的には大打撃ですが、株式市場にとってはあまり大きな打撃ではないのです。でも、さまざまな支援は株式市場にも広く行き渡り、マーケットにとっては過剰な支援となっている可能性は否定できません。「マーケットは現実社会からかい離している」という声をよく聞きますが、背景にはこうした実社会とマーケットの中身における「アンバランスな関係」があると考えています。