穀物の主要輸出国で、供給障害を引き起こす要因が複数、発生中

 株価指数の上昇時に発生するムードの改善以外の、昨年12月以降に目立ち始めた穀物特有の上昇要因は、以下のとおりと考えられます。

(1)米国:2020年産トウモロコシと大豆の生産高および期末在庫見通しを下方修正
(2)ブラジル、アルゼンチン:穀物の生育期にあって、天候不順(乾燥)が続いた
(3)アルゼンチン:穀物関連企業の従事者によるストライキが発生
(4)アルゼンチン:トウモロコシ輸出を一時停止(3月1日まで)
(5)ロシア:小麦の輸出税の設定を明言(2月中旬以降から6月まで)
(6)中国:米国産トウモロコシの輸入が統計史上最高
(7)グローバル:ラニーニャ現象、新型コロナなどの地球規模の混乱で食糧供給懸念浮上

 以下は、トウモロコシ、大豆ミール(粕)、大豆油、小麦の輸出量の上位国とシェアです。大豆ミール(粕)と大豆油は、大豆を圧搾して得られる大豆製品です。大豆ミール(粕)はタンパク質が豊富であるため、主に加工食品や魚粉や他の穀物などと配合して家畜のエサに、大豆油は植物由来の油として、サラダ油やマヨネーズ、マーガリンなどに用いられます。

図:トウモロコシ、大豆ミール(粕)、大豆油、小麦の輸出シェア上位国(2019年度)

出所:USDA(米国農務省)のデータより筆者作成

 昨年12月以降に目立ち始めた上昇要因で、供給障害を引き起こす要因を抱える国として名前が挙がった、米国、アルゼンチン、ロシアが、各品目の輸出シェア上位に名を連ねています。足元の穀物価格の上昇の一因は、主要輸出国における供給不安が挙げられるわけです。

 トウモロコシの輸出シェア2位、大豆ミール(粕)および大豆油の輸出シェア1位のアルゼンチンは、インフレが深刻化している中、新型コロナの感染が拡大し、情勢悪化に歯止めがかかっていません。穀物関連企業の従事者によるストライキも、このような難しい情勢が原因とみられます。

 同国のトウモロコシ輸出の一時停止措置については、経済を回復させるための措置の一環で、国内で飼育する家畜を生育するためのコストを削減することを目的としていると、報じられています。

 また、ロシアは2月中旬以降から6月まで、小麦の輸出税を設定するとしています。国内の食品価格の上昇を抑えるため、と報じられています。アルゼンチンも、ロシアも、国内情勢の安定化を目的として、自国から穀物をできるだけ放出しない策を講じていると言えそうです。

 各国、さまざまな事情があるわけですが、“穀物流通における自国優先”が目立った場合は、穀物価格の上昇の一因になり得ます。ロシアの小麦の輸出関税の設定は2月中旬以降から6月まで、アルゼンチンのトウモロコシ輸出の一時停止は3月1日までと報じられています。穀物流通における自国優先はまだ続くとみられます。