7:米実質金利はさらに低下する

 しばらくインフレ率は中央銀行の目標を下回り続けるでしょう。とはいえ、力強い経済の成長と商品価格の上昇の組み合わせにより、インフレ期待が徐々に押し上げられると考えています。2021年の名目国債利回りは非常に緩やかな上昇にとどまるものの(米10年物国債利回りは1%を大幅に上回らないと予想します)、実質利回りはさらに低下することを示唆しています。

 これは、TIPS(米国債インフレ連動債)にとり、プラス材料となります。 TIPS は、先進国国債の中でも高いリターンを提供すると予想します。

8:ハイ・イールド債券の大幅上昇余地は限定的

 過去、ハイ・イールド債券の実質利回りと株式の配当利回りの差(イールド・ギャップ)が10%ポイントを超えたときに、ハイ・イールド債券は米国債に対してアウトパフォーマンスしてきました。その後、イールドギャップが 3~5%ポイントに近づくと、ハイ・イールド債券の好調な動きは薄れていきます。しかし、現在のイールドギャップは 1.5%ポイントであり、ハイ・イールド債が大幅に上昇する余地は非常に限られていると考えられます。

9:ドル安の年に

 通貨に関していえば、2021年はドル安の年になりそうです。その理由はいくつかあります。

 一つ目ですが、世界経済の同時回復を前にして、ドルの魅力は薄れていくだろうということです。

 二つ目ですが、米国の財政赤字の急増と、FRBによる緩和的な金融政策の継続が続くと予想されるため、それはドルにとってさらなる下押し圧力となる可能性が高いことです。さらに、ドルは金利や他の先進国との成長率格差などのファンダメンタルズが示唆する水準より割高な水準にあると考えています。

10:金の上昇モメンタムが続く

 金は上昇傾向を維持すると考えます。景気回復をさらに加速させるニュースなど、個別材料により調整する局面もあろうかとは思いますが、世界の中央銀行による量的緩和の継続、ドルの弱体化、実質金利のマイナス圏へのさらなる低下などが金の需要を下支えすると考えるからです。

 こうした環境に支えられ、今後5年間の長期予想では、金価格はドルベースで平均年率7%の上昇と予想しています。

塚本 卓治(つかもと・たくじ)プロフィール

ピクテ投信投資顧問株式会社投資戦略部長。

日系証券会社にて債券およびデリバティブ業務に従事した後、外資系運用会社および日系ファンド・リサーチ会社にて投資信託のマーケティングを担う。通算20年以上にわたり運用業界で世界の投資環境を解説。ピクテではプロダクト・マーケティング部長などを経て、現職。経験豊富なストラテジストがそろう投資戦略部を統括する傍ら、自らも全国の金融機関や投資家を対象に講演を行う。マサチューセッツ工科大学(経営学修士)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。