1:新興国株式が先進国株式をアウトパフォームする
2021年の世界経済は、新型コロナウイルスの大流行からの抑制を背景に、力強い回復を予想しています。
2020年3月以降の主要国の積極的な財政・金融刺激策により、2021年の貿易、消費、設備投資は大幅に回復し、企業収益は前年比約25%成長すると予想しています。これに、流動性の伸びの低下に伴う株価収益率の約15%の低下を反映し配当分を加味すると、世界株式は2021年にドルベースで12%のトータル・リターンになると予想しています。
しかし、この株価の予想リターンは、地域ごとの大きな格差が予想されます。新興国株式は中国のV字回復とドル安の恩恵を受けると思われます。新興国企業の収益は大幅に回復し、2020年のEPS(1株当たり利益)成長の予想は先進国で見られるよりも傷が浅い9%の減少の後、2021年は33%程度の成長を見込んでいます。
2:中国株がパフォーマンス上位に
中国経済の底堅さにより、2020年の中国株式は30%近い上昇となりましたが(注1)、引き続きこの傾向は続くでしょう。つまり、中国株は2021年もパフォーマンス上位にランクインするだろうということです。中国政府による継続的な景気刺激策がその支えとなります。
IMF(国際通貨基金)の推計によると、中国は2021年、主要経済国の中で、唯一、拡張的な財政政策を実施する国となる可能性が高く、その「財政的推進力」は対GDP(国内総生産)比で0.7%の増加が予想されています(注2)。
対照的に、他の主要国は、2020年一年を通じて巨額の景気刺激策を実施してきたため、2021年には財政拡大のペースダウンを余儀なくされるとみられます。
注1: MSCI中国インデックスの2020年11月10日までの年初来のパフォーマンス
注2:現体制の下での循環調整済み基礎的財政収支の対GDP比(年率)
3:日本株が魅力的な投資先に
日本は、欧米諸国と比べて国内の新型コロナウイルスへの対応が比較的良好であることに加え、中国の力強い経済回復から恩恵を受けると考えています。
また、日本の株式市場は、資本財や自動車(注3)など景気循環型セクターのウエートが他の多くの市場よりも高いため、世界がロックダウンから脱却し、世界貿易や設備投資が回復する恩恵を受けやすいセクター構成となっています。
世界第3位の規模を誇る日本経済は回復期待が強まっていますが、財政政策と金融緩和政策により、これからの数四半期にはさらに経済は加速するとみています。
さらに、日本の株式市場は、世界の実質利回りのさらなる低下の恩恵を受けるとみられます。日本株式の株価収益率は、インフレ期待が上昇すると、他の多くの株式市場の株価収益倍率よりも相対的に拡大する傾向があります。
注3: MSCI ACWIに対するMSCI日本のセクター・ウエート(%)