ただし、実際の取引においては売り建てが不利な面があるのも事実です。まず挙げられるのは「貸株料(かしかぶりょう)」です。正確には「貸借取引貸株料」といいます。一部では、「売り建ての金利みたいなもの」という説明を見かけますが、これはあまり正しい説明ではありません。

 貸借取引貸株料は、証券金融会社が証券会社を通じて売り方から徴収されるお金のことで、その金額ですが、楽天証券では建て玉金額の1.10%(年率)を日割りで計算したものを日々徴収しています。

 しかし、これは金利ではなく、2002年から導入された信用取引規制の一種です。当時は2000年のITバブル崩壊後の下落基調から立ち直っていない時期ですから、売り建てによるさらなる相場下落圧力を抑制しようという当局の意図があったのかもしれません。仮に売り建てが増えても、いずれは返済買い圧力になりますし、以降の株価は当時よりも大きく上昇してきたことを踏まえると、現在は不要な規制と言えるかもしれません。

 さらに、信用売り建てには思わぬコストが発生する可能性があります。それが「逆日歩(ぎゃくひぶ)」と呼ばれるものです。

 信用取引の売り建てが増えた場合、証券会社は株券を貸し出すことになりますが、銘柄の発行済み株式数には限度があるため、あまりにも売り建てが増えてしまうと株券の調達に苦労することになります。もちろん、証券金融会社でも貸し出す株券が足りなくなるという事態が発生します。そんなとき、証券金融会社は機関投資家などから株券を借りることになるのですが、「もちろんタダで」というわけにはいきません。機関投資家に支払う「借り賃」が発生します。そしてその借り賃を売り建ての投資家から徴収します。これが逆日歩です。

 逆日歩が厄介なところは、「いつ発生するかわからない」ことと、「いくら発生するかわからない」ことにあります。場合によっては想定を遥かに超える逆日歩が発生し、取引の損益に大きな影響を与えるケースもあります。次回はこの逆日歩について細かく見ていきたいと思います。

≫≫1分でわかる信用取引12【信用取引のコスト】逆日歩とは?(その1)逆日歩発生の仕組み

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