「iDeCo(個人型確定拠出年金)」をしっかり活用して、時間を味方に長期・積立・分散投資
私が大学を出て就職したのはもう30年以上前の1987年のこと。当然右も左もわからぬ若造は、自分の頭で考えて判断する土壌がないまま、会社の先輩や取引先の人たちが教えてくれることを実に素直に受け入れました。入社間もなく、最初に動かしたお金は「生命保険」に入ることからでした。
当時は、昼休み時間に保険会社のセールスレディーが社内までやって来ました。
「社会人は保険に入るのが当たり前」
と教えられ、言われるがまま死亡保障3,000万円の終身保険を契約しました。
次なるは銀行の定期預金です。半年ごとの自動継続定期に、持っていたお金と、ボーナスの都度、その大半を預け入れたのです。
「定期でずっと利息を再運用しながら続けていれば、偉くなる頃にはかなりの金額になっているものだよ」
と銀行員のお兄さんに諭されて、給与天引きの財形貯蓄にも入りました。そしてこれらは自分の親から教えられた、一人前の社会人たる資産形成のTo Doリストそのものだったのです。おまけに言えばそのリストには、30歳までに「家を買うこと」もありました。
この話は今から30年前のことですが、今でもこうした「常識」はそんなに変わっていないのではないでしょうか。私は資産運用の仕事に携わっていたため、やがて1990年代半ば以降訪れた我が国のデフレ超低金利時代到来と共に、これらの「常識」に疑問を抱いて保険も定期預金も財形もすべて解約しました。
長期投資こそが必須の行動と気付いたことが、やがて私が代表を務めるセゾン投信創業の前提となるわけですが、デフレから20年を経て今も尚、残念ながら我が国の代表を務める生活者のお金に対する常識は、預貯金・保険・マイホームの三種の神器が相変わらず主役のようです。
しかしようやく、生活者の意識に変化の萌芽が見え出しています。2014年に始まったNISA(少額投資非課税制度)に続き、2017年には個人型確定拠出年金が「iDeCo」という愛称で本格的に登場して、有利な非課税制度を活用した長期資産形成の実践へと、政府も生活者を本気で導き始めたのです。
デフレに陥って久しい日本は、もうずっとゼロ金利。預貯金はもはや何も生み出してはくれません。お金に自ら新たな富を生み出させ、将来に向けてゆっくり育てていくための新たな行動規範こそが「投資」であり、その具体的実践方法は「長期」「積立」「分散」です。
さあ現役世代の皆さん、まだまだ人生にはたくさんの時間があります。「iDeCo」をしっかり活用して、時間を味方に長期・積立・分散投資を始めましょう。それは誰でも実現可能な、将来への経済的自立に向けた、新しいメインストリームたる行動規範です。
「天は自ら助くる者を助く」、いつの時代にもこれが真理でありましょう!
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