金融商品評価の一般論
さて、本題に辿り着いた。
運用対象となる金融商品は、全て、「資本市場から取ってきた素材をパッケージングして、手数料を乗せて売っているもの」だ、と理解しておくとよい。
投資信託はこのイメージそのままの商品だし、個別の株式は、資本市場で取引されている価格プラス委託売買手数料で最終顧客は投資することができる。
個別の株式は、個人投資家の側から見て、取引価格の透明性が高いので「ごまかされにくい」ことが大きな長所であり、手数料も安い。ただし、分散投資を行わないとリスクが大きい事が難点だ。たとえば「国内株式」の場合、数銘柄から十数銘柄くらいの分散投資を行って、TOPIX(東証株価指数)に近いレベルまでリスクを下げることは可能だが、株式投資に詳しくないと(株式投資が趣味であるか、或いは仕事であるというくらいでないと)難しいかも知れない。
金融商品が、仕組み債であっても、或いは各種の保険であっても、運用手段として評価する場合の基本的な原理は同じだ。ただし、実質的な手数料の分からないものは買わない方がいい。これは、投資家が常に守るべき大原則だ。
実質的な手数料が分からないということは、自分が投資しようとする条件が、フェアに取引されている資本市場での条件からどれだけの距離があるのかが分からないということだし、それは、同時に期待リターンが分かっていないということだから、大事なことが分かっていないということだ。「買ってはいけない!」と断言して構わない。
さて、今、「フェアに取引されている資本市場の条件からどれだけの距離があるのか」と言ったが、これこそが、金融商品を評価する最重要のポイントだ。
たとえば、株式の運用について、残念ながら投資家は(金融機関のセールスマンも、運用コンサルタントも、FPも、だが)、どの商品、ひいては運用者が上手いのかを投資する前に見分けることが出来ない。これは、運用業界にとっては不都合な話だが、真実だ。
すると、商品選択の段階で投資家に出来る最大の運用改善は、「資本市場のフェアな条件からの距離」即ち「実質的な手数料」をどれだけ縮めることが出来るかだ。
この事情は、以下の図を見て頂くとご納得頂けよう。
図の、リスクフリー金利を示す点FとTOPIXの期待リターンとリスクを示す点Mとを結ぶ直線は株式と無リスク資産の組み合わせで到達可能なリスクとリターンの組み合わせを示しており、「フェアな資本市場で達成可能な条件」ということになる。
現在、「国内株式」のカテゴリーの分散投資された商品では、ある程度投資金額がまとまっていれば、TOPIX連動型のETF(上場型投資信託)の実質的手数料(信託報酬と保有期間当たりの売買コストの合計で評価する)の実質手数料が最も安価だろう。
但し、積立投資など少額で資金を投じる場合には、ノーロードのインデックス・ファンドで信託報酬の安いものがベストになる可能性がある。
先に紹介した簡便法では、「外国株式」を、「先進国株式」と「新興国株式」に分けてみたが、それぞれのカテゴリー内での商品評価も同じ原理で出来る。