• 不動産投資と株式投資を比較する②~株式投資と不動産投資の違いと共通点はこちら

株式投資をされている個人投資家の皆さんの中には、不動産投資も行っている方もいらっしゃると思います。株式投資と不動産投資、同じ投資ながら大きく違うところもあれば、似通ったところもあります。

そこで今回と次回のコラムでは、不動産投資と株式投資を比較することで、株式投資のメリットや強み、そして注意すべき点を浮かび上がらせてみたいと思います。

不動産投資はインカムゲイン、株式投資はキャピタルゲイン

不動産投資と株式投資、どちらも「利益」を得るという目的は同じながら、両者では期待する「利益」の性質が大きく異なります。

不動産投資は、それを賃貸に出して得られる収入が投資資金に対して何%かというように「利回り」で考えるのが一般的です。対して株式投資の場合は、投資した株がどれだけ値上がりしたかというように「価格差」で考えるのが一般的です。つまり不動産投資は「インカムゲイン目的」、株式投資は「キャピタルゲイン目的」というような区別ができます。

もちろん、時にはバブル期のように不動産投資でもキャピタルゲイン狙いをすることもあるでしょうし、配当金期待のインカムゲイン目的で株式投資をする方も少なくないでしょう。しかし、求める利益の本質から言えば、インカムゲインを求めるなら不動産投資、キャピタルゲインを求めるなら株式投資、という棲み分けがなされます。

「分散投資」という面からとらえると?

投資にはリスクがつきものです。不動産投資であれば、近くに新築で賃料が安いビルができたためにテナントをごっそり持っていかれたり、地震などの天災によって建物に被害が生じれば大きな痛手を被ります。もちろん、空室率が高く想定していた収入が入ってこないということもあるでしょう。

株式投資であれば、投資先の企業の倒産や突然の不祥事・粉飾決算の発表、大赤字の決算、さらには海外発の金融危機などによって株価が大きく下落してしまうことがあります。

株式投資では、こうしたリスクのうち個別企業に原因が存在するものについては、投資する銘柄数を増やすことでリスクを小さくすることができます。株式投資では、1単位当たりに必要な投資金額が比較的小さいので、例えば投資資金100万円であっても10銘柄程度への分散は十分可能です。一般に、10銘柄程度に分散すれば個別銘柄に起因するリスクをかなり低減させることができます。

一方不動産投資の場合も、投資資金が大きければアパートやマンション、ビルを何棟も所有してリスク分散を図ることが可能です。しかし数千万円程度の投資資金では、借り入れをしてレバレッジを高めなければいくつもの物件に分散して投資することは難しいでしょう。分散投資ができなければ、よほど物件を見極める能力がない限りは物件ごとのリスクを低下させることはできません。

複数の銘柄に資金を分散して投資することでリスクを大きく減らすことができる、そしてそれが少額な資金でも十分実行できるという点が、株式投資の大きなメリットの1つであると筆者は考えています。

株式投資はイザという時圧倒的に逃げやすい

筆者が不動産投資よりも株式投資の方が優れていると思うもう1つの理由、それが「流動性が高い」ということです。

不動産投資では、仮に高値で買ってしまうと、それに気づいて売却しようとしたときにはすでに買いの手がすっかり引っ込んでしまい、売るに売れなくなってしまう可能性が大いにあります。例えば投資した不動産の空室率が想定より高く借入金の返済に支障をきたすような場合、物件を売却して借入金を返済しようにも、二束三文で叩き売らないと買い手がつかず、借金の返済ができないという可能性は十分に考えられます。地方なら、買い手が全くみつからずどうにもならない、という事態も起こり得るでしょう。

一方、株式投資の場合は、よほど短期間の急騰後に天井をつけて急落するようなときでない限り、常に買い手が存在します。言い換えれば、「高い流動性が確保されている」ということです。ですから、高値掴みをしてしまったと思った時でも、しかるべきタイミングでしっかりと損切りをしておけば、大きな損失は回避することができます。

「危ない」「失敗した」と思った時にいつでも売却してキャッシュに換えることができる、この点は株式投資の非常に大きなメリットだと筆者は思っています。

不動産投資は「事業」と考えて真剣におこなうべき

株式投資ではそれほど意識する必要はないと思いますが、不動産投資の場合は「投資する」というよりも、「事業を行う」という意識を持った方がよいでしょう。事前にプランを練り上げ、リスクを洗い出し、そのリスクを取るに見合うリターンが得られると判断したら初めて投資を実行するのです。株式投資はいつでも逃げ出すことができますが、そうはいかない不動産投資の場合は、事前によく検討をしたうえで実行するようにしましょう。

実際にやってみると分かりますが、家賃を長期間滞納している入居者に対する対応、他の入居者に対するクレームの応対、居室内の設備(トイレ、洗面所など)の修理依頼への対応など、例え不動産管理会社を間に入れていたとしても、結構面倒です。

また、空室率を低くするためにどのような施策が必要かを考え、実行しなければなりませんし、今のように都心部の不動産価格が上昇して買い手が大勢いるような場合は、物件をそのまま保有するのがよいのか、それとも売却すべきなのかを判断する必要もあるでしょう。

不動産投資を、単に資金をつぎこんで物件を購入したりアパートを建築するだけで簡単に賃料収入が転がり込んでくると思ったら大間違いです。不動産投資は、片手間でできるようなものでは決してありません。

手間暇かけて色々なことを考え、実行する自信のない方は、不動産投資よりも株式投資もしくはREITへの投資が無難だと思います。

 

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