それに対し、最近はどうなのか? 令和元年時点の100歳以上高齢者人口は、男性が8463人、女性が6万2775人で合計7万1238人です。爆発的に増えていますね。総人口は1億2616万7000人ですから、100歳以上高齢者人口が総人口に占める比率は0.05%です。それでも0.05%ですから、驚くほど高い比率というわけではないようにも思えます。しかし、これから日本の出生数はさらに減少のスピードを速めていきますし、逆に100歳以上人口はこれからも増え続けます。

 そうなると、長生きしていることがおめでたいことにはならないのです。

 最大の問題は、人ひとりが22歳から65歳までの四十数年間に稼ぐことの出来る総量が、能力、運の差によって個人差はあるとしても、ある程度決まっているということです。

 一方、かつて死亡年齢といわれていた80歳を超えて、100歳まで長生きしてしまうことによる支出の増加分だけ、40数年間の労働期間中に多く稼ぐ必要があるのです。働けなくなった時に頼りになる社会保障制度や定年後の糧となる公的年金制度は、人間が100歳まで生きることを前提としていません。うっかり長生きしてしまうと、人間として十分な生活が出来ないのです。

 最近は、「高齢者になってからも働くことが大事」などと言っている人もいますが、私はこれに敢えて異論を唱えたいと思います。なぜなら、ほとんどの人間は歳をとると若い時に比べて生産性が下がってしまうからです。もちろん経験が活きる分野もあろうかと思いますが、新しいイノベーションが求められる分野においては、過去の経験はややもすると邪魔になることもあるのです。資本主義は、ときに乱暴とも思えるような飽くなきイノベーションの担い手を求めているのです。

 この問題を解決するための方法は2つあります。

 ひとつは22歳から50歳までの収入を増やすこと。そのためには自己投資を行って、自分の才能を増やします。一番確実にリターンを増やせる方法は自己投資なのです。私が英語を勉強したり、イギリスに留学したりしたのがまさにこれです。

 しかし、それでも足りなくなる恐れがあります。65歳まで働ければ良いのですが、途中で会社が倒産してしまったり、自分が病気になって働けなくなったりするリスクだってあるわけです。そうなると、自分の才能を伸ばして収入を増やすこと以外に、何か手立てを考えなければなりません。

 だから投資なのです。幸いなことに、年齢が30代の半ばくらいになると、徐々に自分自身の金融資産が積み上がってきます。急場の時に必要なお金をすぐに引き出せる預金で持っている必要はあるものの、必要以上のお金を預金で置いておいても、この超低金利下ではそこからは何の利益も生み出されません。

 そこで、この現預金を用いて株式投資を行うのです。自分が働くのではなく、他人に働いてもらうのです。まさに資本家の発想です。自分が企業のオーナーになれば良いのです。そうすれば、自分自身が働けない年齢になったとしても、他の人が働いて収入をもたらしてくれます。

 正直なところ大半の人たちは、自分自身で働くよりも、永守さんに働いてもらった方が良いわけです。もし米国企業に投資するならば、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスに働いてもらった方が、良い結果がもたらされる可能性が高いと思います。自分より優秀で、稼いでくれそうな自分以外の仕組みにお金の一部を投じること。投資をするというのは、つまりそういうことなのです。自分が働いて稼ぎ出す総金額を大きく増やすことが難しいという前提の上で、予想以上に延びてしまった寿命をまっとうするには、自分以外を働かせるしかないことを理解していただけたでしょうか。

<『ビジネスエリートになるための教養としての投資』より抜粋>

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