個人投資家にとって大きな楽しみの1つといえば株主優待。最近は、株主優待を金銭的価値で評価した「優待利回り」が注目され、魅力的な株主優待を行っている銘柄の株価は大きく上昇しています。

 その結果、一部の銘柄においては、業績に比べて明らかに株価が買われすぎていると思われる状況となっていて、いわば「株主優待バブル」の様相を呈しています。

 そこで今回は、魅力的な株主優待を実施していて、かつ株価が大きく上昇した銘柄であるコロワイド(7616)を例に挙げ、注意したい点などを解説していきたいと思います。

 

最低でも配当利回りと優待利回りの合計で5%は確保したい

 多くの個人投資家は株主優待銘柄を投資対象とするかどうか検討する際、配当利回りと優待利回りを合計した利回り(以下「合計利回り」といいます)が魅力的なものかどうかで判断しているようです。

 そこで、コロワイド株の合計利回りを、最近の株価から計算してみることにしましょう。配当金は1株当たり5円です。株主優待は500株以上保有する株主に対し、一律に株主優待ポイント10,000ポイントを3カ月に1回ずつ付与します。年間トータルで40,000円分の飲食ができる計算です。この40,000円を優待利回りの計算に用います。

 1月下旬に株価は2,000円に達しましたが、2,000円でコロワイド株を500株購入する場合、合計利回りは(5円×500株+40,000円)÷(2,000円×500株)=4.25%です。

 これを配当利回りと同じような感覚でとらえると、そんなに悪くないという印象を受けます。しかし、合計利回りは最低でも5%、できればそれ以上確保したいというのが筆者の見解です。特にもともと合計利回りが10%以上あったものの、株価上昇に伴い合計利回りが大きく低下しているケースは要注意です。

 コロワイド株も株価はここ数年で大きく上昇しましたが、直近では2,000円を少し超えたところで上昇がストップ。そこから1週間で20%近くも急落してしまいました。この株価の動きからも、コロワイド株の合計利回りが4.25%というのはかなり割高な水準だったと判断できます。ちなみに、株価が大きく上昇する前のコロワイド株の合計利回りは優に10%を大きく超えていました。

 なお、2月6日の終値(1,645円)で計算した合計利回りは5.17%で、5%は回復しました。しかし、直近の急落により日足ベースで下降トレンドに転じてしまっていますので、今後の株価の動きはまだ予断を許さない状況です。

 

合計利回りは保有株数によって大きく変動する

 もう1つ注意したいのは、「合計利回りは保有する(投資する)株数によって変動する」という点です。これは、配当利回りは保有株数に関係なく一定ですが、優待利回りは保有株数に応じて変動するためです。

 コロワイドの優待内容を改めて確認しておくと、500株以上保有する株主に対し、一律に年間40,000円分の飲食ができるポイントが付与されるというものです。ここで押さえておきたいのは、「500株以上であれば、何株保有していてもポイントは40,000円分で同じ」という点です。

 上記で計算したコロワイド株の合計利回りは、500株を保有した場合のものです。

 例えば300株では株主優待を受けることができないため優待利回りはゼロ、合計利回りは配当利回りとイコールとなります。1株当たりの配当は5円なので、株価2,000円ではわずか0.25%に過ぎません。

 また、3,000株の場合、株主優待の金銭的価値は500株の場合と同額なので、株価2,000円では(5円×3,000株+40,000円)÷(2,000円×3,000株)=0.92%となります。

 コロワイド株の場合は、500株を保有した場合の合計利回りが最も高くなり、500株より多くても少なくても合計利回りは低下します。そして、保有株数が多くなればなるほど合計利回りは下がっていきます。

 優待内容を事前に良くチェックして、合計利回りがより有利となるように、投資する株数をうまく調整するとよいでしょう。

 

株主優待がうれしいのは個人投資家だけ?

 もらってうれしい株主優待、ところが株主優待を歓迎しているのは個人投資家だけだということはご存知でしょうか?

 そもそも、株主優待制度を実施している企業には、多くの個人投資家に安定株主(株を売らず長期間保有を続けてくれる株主)になってもらおうという意図があります。株主優待制度とは、個人投資家へ向けた制度なのです。

 コロワイドの場合、上で少し説明しましたが、個人投資家が500株保有しようが、外国人投資家や機関投資家が100万株保有しようが、もらえるのは「40,000円分のポイント」ということです。

 コロワイド株に限らず、個人投資家以外の投資家にとって株主優待は不要です。そのため、外国人投資家や機関投資家が投資対象とする銘柄を選択する際、株主優待については全くと言ってよいほど考慮していないはずです。ですから、例え個人投資家にとって魅力的な株主優待を実施している銘柄でも、業績と比べて株価が割高だったり、そもそも業績自体がぱっとしなければ、外国人投資家や機関投資家にとっては投資対象から外れることになります。

 現に、コロワイド株は外国人投資家や機関投資家の保有割合が非常に少なく、最新の会社四季報によれば、外国人投資家は1.8%、投資信託は1.3%しか保有していません。東証1部上場で時価総額も1,000億円を超えている銘柄ならば、外国人投資家の保有割合が20%とか、投資信託の保有割合が10%あってもよいにもかかわらずです。

 ちなみに、今期大赤字予想にもかかわらず株主優待の効果により株価が下支えされている日本マクドナルドホールディングス(2702)も同様です。マクドナルド米国本社を除く外国人投資家や投資信託の保有割合は非常に低水準です。

 配当利回りと優待利回りの合計で、投資対象として魅力的かどうかを判断しているのは個人投資家だけであるという事実はぜひ理解しておいてください。株価の上昇によるキャピタルゲインを狙うなら、株主優待の内容よりも業績を重視して銘柄選択をするべきです。

 

たとえ株価が割高でも空売りで儲けられるほど甘くはない

 コロワイド株をPERから評価すると、同業他社と比べて株価は割高な水準に達していると判定されるはずです。でも、業績に比べて株価が明らかに割高だからといって、空売りをすれば株価が下がって簡単に利益を得られるほど株式投資は単純ではありません。

 好業績を背景とした外国人投資家や機関投資家の買いがそれほど見込まれない中でコロワイドの株価がここまで上昇したのは、株主優待目的の買いに加え、空売りの踏み上げや、踏み上げを狙った買い仕掛けという側面が大きかったのだろうと思われます。

 実際、信用取引残高の推移をみると、信用売り残が信用買い残を上回るいわゆる「売り長」の状態になっています。直近(1月30日時点)の信用倍率も0.38倍と、1倍を大きく下回っています。

 いくら株価が割高に思えても、上昇トレンドが続いていたり、売り長である銘柄への空売りは控えるのが賢明です。

 

下降トレンド転換を待たずに株価チャートの見た目の変化で売却する方法

 最後に、コロワイド株の売りタイミングについて考えてみたいと思います。筆者の提唱する株価トレンド分析では、株価が25日移動平均線を割り込み、下降トレンドに転換したと思われるタイミングで保有株の売却をすることになります。

 このタイミングで売却をすることのメリットの1つは、買い直しのタイミングを計りやすいという点です。売却後、再度上昇トレンドに復帰した時点で買い直せばよいからです。

 ただ、すでに株価が割高であるような場合、売却後再度上昇トレンドに転換しても買い直しを予定しないこともあります。そんな時は、下降トレンドに転換するのを待たずに、株価の動きに明らかな変化が生じたタイミングで売却してしまうのも一法です。

 添付の株価チャートをご覧ください。(ア)の陰線で、それまで右肩上がりに上昇していた株価チャートに明確な変化が表れていることが、見た目にも明らかです。(ア)の陰線によってポッキリ折れてしまったかのようです。

 もし、(ア)の陰線でこれまでとは異なる株価の動きが生じたことに気がつけば、翌日の寄り付きの(イ)の箇所で売却することができます。下降トレンドへの転換を確認後に売却すると、(ウ)の箇所で売却することとなります。(ウ)に比べて(イ)はかなり高い株価で売却することができたことが分かります。

コロワイド(7616) 週足チャート