※本記事は2020年3月13日に初回公開しました。情報を更新してお届けします。

 市場環境が不安定になり、保有する投資信託の基準価額が軒並み下落し続けると、「もう投資なんて止めた方が良いのか…?」と心に迷いが生じるものです。しかし、こういうときこそ冷静な対応が必要です。

 特に、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)など、投信積立をおこなっている方は、今とても「お得」に投資信託を購入できているということを確認できる実に良い機会です。

下落時ほど「お得」に積み立てられるチャンス

 投信積立をおこなうメリットの一つは、基準価額の下落時ほどより多くの口数を購入でき、平均買付価格を下げられるという点です。この「口数」の考え方は、スーパーで売っているパックのお肉をイメージすると分かりやすいでしょう。

 パック肉は、「100グラムあたり○○円」として売られています。お肉のグラム数あたりの値段が日によって変わるように、投資信託も、口数あたりの値段=基準価額が日々変動します。グラム数あたりの値段が下がると、同じ予算でより多いグラム数のお肉を買うことができるのと同じで、投資信託も、基準価額が下がると、より多くの口数を買うことができるのです。

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「試練」は一定周期で確実に訪れる

 近年は、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種指数をはじめ、米国株の指数に連動するインデックスファンドが人気ですが、実は日本の投資信託市場における米国株式インデックスファンドの歴史はさほど古くありません。

 S&P500指数連動型で最も古いのは、2013年9月設定の「iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド」(ブラックロック)なので、日本においてS&P500指数のインデックスファンドを10年単位で積み立て、資産を築き上げたという人は事実上まだ誕生していません。米国株の積立歴は5年未満という方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

 米国株式市場の将来的な成長期待については筆者も異論を挟むものではありませんが、市場全体に投資している以上、数年単位で「試練」は訪れるものだという心構えが大切です。

 どの程度を「試練」と感じるかについては人によって違いますが、1カ月間の基準価額の下落幅として10%を一つの目安にするとよいでしょう。決して頻繁に起きるわけではないものの、いざ遭遇すると心理的に不安を覚える人が増える水準です。

 参考までに、米国株が約7割を占める先進国株式のインデックスファンドを例に取り、2022年7月末からさかのぼること10年間を振り返ると、月間で10%以上基準価額が下落した月は3回ありました。

  1. 2016年6月…英国のEU離脱決定による余波(▲10%)
  2. 2018年12月…米中貿易摩擦に端を発した景気減速懸念(▲11%)
  3. 2020年3月…新型コロナウイルスの世界的な流行(▲15%)

 今なら冷静に振り返ることができますが、これらの出来事が起きたときは、市場参加者の動揺が株価に如実に表れました。ちなみに、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(2018年7月設定)の過去最大の基準価額の下落幅も2020年3月で、▲10%でした。

 実際に積立効果をグラフ化してみると、おおむね右肩上がりで推移しているものの、三つの出来事が起きた時は、グラフがへこみ、評価益が減っていることが分かります。これまで積み上げた評価益が一気に目減りしたときこそ、「お得」に積み立てられていると発想を転換させるよいタイミングです。

 相場の急変時に不安心理が働くというのは自然な流れです。しかし、相場下落時に冷静さを失って積立をやめてしまったり、これまで積み立ててきた分を解約したりすることが賢明な判断でないことは、上記のグラフが物語っています。

 下落時ほどチャンスと感じられるような発想の転換、さらに、「試練」は一定周期で訪れるものだとどっしりと構えることこそが投信積立成功の秘けつといえます。