割安株の成長力を測る指標PEGレシオを愛用!

 一言でいうと、成熟産業と見なされたサービスセクターなどの不人気株がM&A(企業の買収・合併)や都市圏への進出で業績が拡大しているにもかかわらず、まだ誰も注目していないときに買い、成長が続く限り長期投資を続けるのが、アイルさんの手法だ。

「株価は割安さが修正されるとPER(株価収益率)が上昇していきますが、それと一緒にEPS(1株あたり利益)も伸びていくことで、一時的ではなく長期的な上昇が期待できます。いくら割安でも成長が見込めなければ株価の上昇には限界があるので、成長見込みと割安さのバランスを測ることが重要。その際、僕が重視している指標がPEGレシオなんです」(アイルさん)

 PEGレシオはPERを1株あたりの利益の成長率(年)で割ったもの。PERが30倍と割高でも、利益が年間30%伸びていれば、「30(倍)÷30(%)」でPEGレシオは「1」に。PER5倍と一見割安に見えても、EPSの成長率が毎年1%しかない会社のPEGレシオは「5」となり、成長力を加味すると割安でないと判断できる。

「私が買う銘柄はPEGレシオ1倍以下が基本。つまりPERが20倍なら毎年20%以上、30倍なら30%以上の利益成長を続けている会社になります」(アイルさん)

 PEGレシオは、高い利益成長が続く小型株のバリュエーションを測る上で、かなり役立つ指標なので覚えておくべきだろう。

 そんなアイルさんだが、長期投資が基本なため、売り時にはいつも迷っている、と言う。

「かなり割安な水準で買って、利益成長が続く限り、長期保有する覚悟で投資しているので、株価が一時的に下がってしまったから売るということはほとんどありません。買い値の5~10倍ぐらいまで上昇したり、人気に火がついて中長期的な成長力以上に株価が上昇してしまったら、一部売却したいな、とは感じます」(アイルさん)

 まだ不人気株で、株価が非常に安いところで買っているからこそ、冷静、かつ余裕を持って長期投資ができるといえる。その最たる例が葬儀会社ティアへの投資での大成功だ。

「この会社も地元・名古屋の企業。葬儀業界は安定成長が見込めますが、筋金入りといっていいぐらい不人気業種だったので株価も極端に割安でした。成長を続けるうちに徐々に注目されるようになり、いつの間にか成長株と見なされてPERの水準見直しが進みました」(アイルさん)

 成長度と割安さのバランスを見て投資してきたアイルさんだが、失敗もあると言う。

 同じ成熟不人気産業でも、投資会社Jトラストへの投資は不良債権問題でやられ、ある金融グループへの投資は金融環境の激変による業績・株価の低迷で、思ったように株が上がらなかったなど、「金融関連株はどうも相性が悪いようです」と振り返る。

 とはいえ、地元密着型の投資で大成功を収めてきたアイルさん。まずは、自分の生活圏の中にあるサービス業の中から、この会社、とっても地味で小粒で目立たないけど、最近、存在感を増してきたな、と感じる「生活センス」を磨く。それがアイルさん式割安株発掘のコツといえるだろう。この手法は、これから株式投資を始める人にも大いに参考になるはずだ。

「目先の株価やさまざまな情報に一喜一憂するより、企業内容を理解することに力を入れてみてください。まずは身近な会社に興味を持って、自分なりに調べてみるといいと思います。ただし、株式投資に『正解』はありません。自分自身の性格に合った投資法を身につけて、株式投資の世界を楽しんでほしいと思います」とアイルさんは投資初心者にエールを送る。

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アイルさんプロフィール
ツイッター「中長期投資家アイル」などで投資情報を発信。会社員時代に成長前のユニクロ株(ファーストリテイリング)などで資産を築いたことをきっかけに、不人気業種の小型株を割安な頃に底値買いする長期投資に目覚める。2003年からは専業投資家として活躍。他の有名投資ブロガーとオフ会などで親交を深めたり、エーゲ海クルーズをはじめ海外・国内旅行が大の趣味。新型コロナウイルス以降は『ドラゴンクエストウォーク』でストレス解消中。

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