悪いことをとにかく聞く
――そこから投資の世界に入るわけですが、初心者だった天野さんは証券会社の担当者にどんな質問をしたんですか。
担当者は「いいこと」の話はいっぱいしてくれます。だから僕からは「悪いこと」に関する質問ばかりしていました。懸念材料はなんですか? 元本割れの可能性はあるのですか? 世界のどんな出来事が相場に悪影響を与えるのですか? というように、「悪いこと」を十分に聞いた上で、やると決めました。
――株式投資から入ったのはなぜですか。
僕のイメージは「投資=株式投資」だったのです。投資信託やREIT(不動産投資信託)もあるということを後で知りました。
――銘柄選びは、何を基準にしたのですか。
自分が好きな会社、よく知っている会社ですね。家電業界とかゲーム業界とか。ただ担当者と話をする中で、建設機械のコマツのような世界に誇れる企業がたくさんあることも知りました。実際に買ったのはシャープなど。当時シャープは、IGZO(イグゾ)という画期的な液晶ディスプレイを開発して、これはすごいことになると確信していました。実際にはすごいことにならず、会社は厳しい状態に追い込まれるのですが……。
――天野さんは家電芸人としても活躍されてますが、銘柄を選ぶときに、そこは意識されているんですか?
家電は好きだし、子どもの頃の家電製品売り場は日本のメーカーで占められていた。そのずらりと並んだ光景に、日本のメーカーの誇りも感じていたんです。
それが今は新興国メーカーの製品が多くなりましたね。ブルーレイや有機ディスプレイは日本の技術なのに、製品では外国に負けている。でも日本のメーカーを応援したいから、スマートフォンも日本のメーカーを選んでいます。でも、日本や世界の市場で売れているのは外国メーカーの製品ですよね。携帯電話の時代、「P(パナソニック)」だの「N(NEC)」だのって騒いでいた時代は何だったんだ(笑)。
――銘柄選びの基準は製品ですか?
もう一つあります。それは社長の人柄です。記者会見や新製品発表会での発言が魅力的な社長の会社は買いました。トヨタが米国で、リコール問題でやり玉に挙げられたとき、豊田章男社長は自ら公聴会に出席して、自分の言葉で説明しましたよね。ああいうトップがいる会社は信用できると思います。都合の悪いことが起こったとき、トップが雲隠れして顔を出さなかったり、嘘くさい弁解をする経営者のいる会社は避けたいですね。
――好きな会社を買うというお話でしたが、株価チャートを分析したり、業績をチェックして買うことはあるんですか?
それはないですね。株価チャートを見たり、四季報を見たりすることはありますが、分析まではしません。数字よりも肌感(肌感覚)です。街を歩いていて、最近はこれが売れているのかとか、飲食店のショップカードを見て、ここはあのグループの店なのとか、そんなふうに驚くのが楽しい。
だから投資の専門誌は読まないですね。テレビの「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)や「ワールドビジネスサテライト」(同)を見るくらいかな。この番組には社長が登場するので、投資を始める前から見ていました。
読者へのメッセージ
次回、株取引中の売買についてお聞きします。
中編「負けを認める株式投資」へ続く>>
後編「株をはじめて「自分とは関係ない」がなくなった」へ続く>>