新型コロナウイルスの感染が欧米にも拡大、米景気にも黄信号

 先週の日経平均株価は1週間で393円下落し、2万749円となりました。新型コロナウイルスによる感染が、アジアだけでなく、イタリアや米国カリフォルニア州にも広がり、その影響で、欧州景気にも米国景気にも急ブレーキがかかることが懸念されました。

 2月半ばまでは、感染拡大が中国を中心とした東アジアに留まり、米景気は好調を維持するとの期待がありました。米景気が好調ならば、世界景気は堅調を維持するとの期待もあり、NYダウは2月半ばに一時最高値を更新していました。

 ところが、2月後半より、欧米でも感染が拡大していることが分かり、そのマイナス影響によって、米国のサービス産業の景況が悪化していることが分かりました。2月最終週からNYダウが急落、日経平均も一段安となりました。

日経平均週足:2018年1月4日~2020年3月6日

注:マ-ケットスピードⅡより楽天証券経済研究所作成

 簡単に、2018年以降の日経平均の動きを振り返ります。2018年10~12月、世界景気悪化を嫌気して、世界的に株が下がり、日経平均も急落しました。この時は、米中貿易戦争の影響で、世界景気が悪化することが懸念されていました。実際、中国景気の悪化が顕著となり、ツレて、中国と経済的つながりの深い日本・ドイツ・東南アジアなどの景気が悪化しつつありました。

 2018年時点で、米景気にも米中貿易戦争のマイナス影響が及ぶ懸念はありました。それで、NYダウも一時的に大きく下がりました。ところが、後に、米中貿易戦争のマイナス影響は中国に重いが、米国には軽微であることが判明しました。米景気は減速したものの、堅調を保っていました。

 2019年に入り、米景気が堅調を保つ中、米金利が低下し始めたことが好感され、世界的に株が反発しました。日経平均も反発を始めました。

 2019年10~12月、米中貿易戦争が一時的に緩和し、世界景気が回復に向かう期待から、世界的に株が上昇ピッチを速め、日経平均も大きく上昇。実際、1月15日に米中は、通商交渉で「第一段階合意」に達し、互いにかけあっていた制裁関税の関税率を部分的に引き下げることになりました。いよいよ対立緩和の効果が出て、世界景気が回復に向かうとの期待が出た矢先、世界は新型コロナショックに見舞われました。

 新型コロナウイルスの感染が中国・アジアに留まらず、欧米にも拡大していることを受け、世界中で一斉に「交通遮断、イベント中止、消費停滞」が起こりつつあります。世界同時で、消費が凍結する事態は、あたかも、2008年の「リーマン・ショック時」に似ています。

 あたかも、米中通商交渉が決裂し、世界が完全に分断され、経済活動が阻害されているのに近い状態と言えます。米中「第一段階合意」が結ばれたにもかかわらず、米中決裂と同様の世界的な分断が起こっているのは皮肉です。