新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大に歯止めがかからず、世界の株式市場は2月下旬に入って大幅安に見舞われた。投資家がリスク回避に傾いて株式を売り急ぐ一方、米国の金融緩和を織り込む形で日米欧の金利低下が進んだ。株式と為替、金利の各市場は何を織り込んでいるのか。

株安の正体は米景気不安?

 新型ウイルス問題について金融市場では当初、悲観と楽観が混在していた。中国人民銀行が2月3日、1兆2,000億元(約18兆6,000億円)の緊急資金供給を実施すると、肺炎の流行による景気悪化への懸念が急速に後退。6日までに日経平均と米ダウ工業株30種平均はともに約4%高と急伸した。

 流れが変わったのは2月24日。米国市場ではダウが1,031ドル安と過去3回目の1,000ドル超の暴落となり、翌25日には日経平均が一時1,051円安まで下げ、世界同時株安に。27日には、やはりNYダウが1,190ドル安となると、28日の日経平均は一時2万1,000円を割れる展開となっている。

 株安の直接の引き金はイタリアや韓国、イランでの感染拡大が判明したこと。しかし、投資家が最も恐れたのは過熱状態が指摘された米国株の急落かもしれない。

 ダウが急落した2月24日、米ネバダ州で大統領選の民主党候補者指名争いがあり、大企業や富裕層による富の独占を糾弾するサンダース上院議員が圧勝。トランプ大統領が推進してきた大企業寄りの経済政策の継続性が揺らいだ。景気の先行指標とされる総合PMI(購買担当者景気指数)が2月は49.6と好不況の境目となる50を2013年以来約7年ぶりに下回ったことも、米国景気の腰折れ懸念を増幅した。

 一方、新型ウイルス問題の発端となった中国の上海総合指数はダウが急落した24日に0.3%安、翌25日に0.6%安と、いずれも小幅安。中国株は新型肺炎流行の消化を一通り完了し、日米の株価が米国景気の先行き不安を織り込む段階へと進んだことがわかる。
 であれば、日本や米国の株価の先行きを決めるのは市場参加者による米国景気の見通しということになりそうだ。

 2月23日にサウジアラビアのリヤドで開かれたG20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)では、IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事が今年の経済成長率見通しを下方修正。中国の成長率を5.6%(1月は6.0%)、世界全体を3.2%(同3.3%)と小幅に引き下げ、黒田東彦日銀総裁も日本の成長率について「低下が止まらない、回復の時期がどんどん先送りになるとは今の時点では考えていない」との見通しを示している。

 ただ、これは世界的な感染拡大が顕著になった2月の景気統計を反映していないため、市場参加者に平静を呼びかける効果は乏しかった。