不正流出事故に備える体制の見極めが重要
最も気になるのがセキュリティだ。預金や株式、投資信託のような既存の金融商品では取り扱う金融機関や取引所の安全性を疑うことはほとんどないが、暗号資産の取引環境には交換業者によりまだばらつきがある。
昨今、暗号通貨取引を巡っては、多額の資金流出をともなう事故がいくつか発生しており、いずれもが外部からの不正アクセスにより引き起こされている。
「2018年に起こった不正アクセスによる多額な暗号資産の流出事故においては、業界内の私たちから見ても、システムに問題のある会社には見えなかったが、それでも事故は起こりました。どれだけセキュリティを強化し、資産を管理したとしても、投資家の資産が全て保障される、という状況にはなりません」
投資家としては、事故は絶対に避けて欲しいが、暗号資産を狙う攻撃者が存在する以上、確率をゼロにすることは難しい。
そこで楽天ウォレットでは、「楽天経済圏に組み込まれた交換業者」という点を強調している。
「楽天はECの分野を中心に経験を積んでいます。楽天に限らず、一般的にECサイトへの攻撃者は多く存在するので、防御するためのノウハウも膨大に蓄積しており、当社にもフィードバックされています。小さな事故も起こさないという真剣な気持ちで楽天ウォレットはセキュリティの強化に努めています」と橘は強調する。
高いセキュリティ技術と信託口座の分別管理
セキュリティの要となる技術は、英国・ベルファストの「楽天ブロックチェーン・ラボ」で開発している。
「ここで開発した高いセキュリティシステムで暗号資産を保管しています。お客さまから預託されたお金は、当社の自己資金とは分離して楽天信託の信託口座にて管理しています。また暗号資産も、当社保有分とお客さま保有分を分けて管理しており、お客さま保有分は全てコールドウォレット(インターネットと完全に切り離されたウォレット)で管理しています」(橘)
分別管理は金融庁の指導によるものだが、その方法までは指定されていない。楽天ウォレットは、信託銀行を使うことで、投資家の資産をより高いレベルで安全に管理しているわけだ。
取引面での安全確保は、取引をスマートフォンアプリ「楽天ウォレットアプリ」経由に限っている点に加えて、侵入を防ぐため二段階認証を採用している。ログイン時、出金時、出庫時には必ず認証を求められるので安全性が高い。