ビットコイン(BTC)に代表される暗号資産は、投資初心者にとって “えたいの知れない”投資商品だった。通貨と呼ばれるのに、円なら日本、米ドルなら米国というような発行主体がない。コインという名称なのに実体がなく、すべてインターネット上の電子データで取引や管理がなされる。しかも時々、暗号資産の流出事故や交換所の破たんが明るみに出る……というように。
暗号資産は資産形成の手段になるのか? 交換所(取引所)を選ぶ基準は何か? そしてなによりも安全に取引ができるのか? そんな疑問を楽天ウォレットの最高情報セキュリティ責任者(CISO)・橘喜胤(たちばな よしたね)に聞いた。
世界で流通している暗号資産は1,500種類以上あるという。日本仮想通貨交換業協会が加盟18社を対象とした統計によると、現物取引高(2019年7月、以下同じ)は8,383億5,900万円、証拠金取引高は2兆8,721億800万円に達している。
現物取引高はビットコイン(BTC)が群を抜いて多く、リップル(XRP)、モナコイン(MONA)、イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)が続く。
暗号通貨の値動きは市場がまだ小さいこともあり、株やFX(外国為替証拠金取引)に比べても荒い。そのため相場の予想は簡単ではない。楽天ウォレットの橘CISOは「今後も一本調子で上がっていくことは予想しづらく、いろいろな要素により上がったり下がったりを繰り返すのではないか」と話す。
いろいろな要素とは一般的に大きく三つあるという。
(1)国による規制。過去には中国が暗号資産の取引を禁止するなど、市場に大きな影響を与える出来事があった。
(2)金融情勢。米中の摩擦などにより世界経済が不安定になると暗号資産の規模が縮小する可能性がある。一方で株式市場などから逃げ出した資金が暗号資産に流れることも想定できる。また新興国などで通貨危機が起こると、暗号資産が買われる可能性がある。
(3)不正流出。投資家が不安になれば市場は冷え込む。流出の規模が大きければ急ブレーキがかかってしまう。
このように複合的な要因で価格が上下するため、他の金融商品と同じように状況を見ながら各自で判断して取引をすることが大切だ。